モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい（完結）

第５章 悪役令嬢は絡まれたくない

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「生徒会はどんな感じですか？。随分、お忙しそうですが。」

私は気まずさを誤魔化す為に、明るい声を出した。

ディーンも、そんな私に少し表情を和らげる。

「ああ、新しく入った私達は、まだ作業に慣れていないし、仕事はいくらでもあるから。でも、学園の為になる事だし、やりがいはあるよ。皇太子殿下もとても親しくしてくれるしね。」

（げっ・・・。）

皇太子と聞いて、私は一瞬げんなりした。あのダンスパーティでの出来事を思い出したからだ。


『悪役令嬢役はどうしたの？』


あの時、皇太子トラヴィスが言った言葉は、春休み中、私を悩ませた。

あれはいったい、どういう意味だったのか・・・。


（最初は、私が元のアリアナと違う事がバレたのかと思った。でも、それって、あのゲームやって無いと分からない事だし・・・。）

まさか、トラヴィスも私と同じように、違う人が入っているとか・・・？。でも、世間の評判では、彼はゲーム通りの完全無欠の皇太子だ。

（もしかしたら、以前のアリアナの評判を聞いて、単に、あんな言い方をしただけかもしれないよね・・・。）

真意を確かめたいが、皇太子と話す機会なんて無い。無理にそんな事したら、今度はエメラインに何されるか分からない。動きが取れず、結局もやっとしたままである。

（ディーンに聞いてもらう訳にもいかないしなぁ・・・。）

「皇太子殿下は、噂では、よく出来た方だとか？」

「ああ、とても有能な方だ。私達が今まで考えつかなかった、新しいやり方をどんどん提案してくださる。それに人を動かす能力にも長けた方だよ。」

ディーンはトラヴィスをすっかり信頼しているようだ。

「だけど、生徒会は今、仕事量の割に人が足りない。クリフが抜けたのは痛手だったな・・・。」

「クリフ様らしいですよねぇ。」

私がそう言うと、ディーンはまた、ジッと私をなんとも言えない目で見てきた。

「・・・今度は何ですか？」

「クリフと君がまた噂になってる・・・。」

「またですか？。皆さん、暇ですね。」

最近、昼休みや放課後をクリフと二人で過ごしていたからだろう。でも、この手の噂は、今までもなんどか経験しているから、もう慣れっこだ。ディーンだって、気にしないと思ってたのだけど・・・。

「君とクリフが顔を近づける様に、親密に話しをしていたって聞いた。」

ディーンの口調に咎めるようなニュアンスを少し感じて、私はかッと耳に血が集まった。

「なっ！？。ちょっと、その言い方はおかしいです！。人に聞かれたくない話だったから、小声で話していたからですよ！。」

「人に聞かれたくない？。・・・そんな秘密の話を二人でしていたのか！？」

「だから、言い方がおかしいですって！。」

どうして、こんな口論しなくちゃいけないのよ！？。そう思ってたら、メイドのステラに声をかけられた。

「あ、あの・・・アリアナ様？」

「なんですかっ！？」

（今、取り込み中なんだけど！？。）

「・・・皆様がお出でです。」

「えっ！？」

振り返ると、入口にリリーやミリア達が困ったように立っている。

時計を見ると10時半だった。


（き、気まずい・・・）


「ど、どうぞ皆さん、入ってください。」

ちらりとディーンの方を見ると、彼も顔が少し赤くなり、口元を手で押さえている。

（こ、ここは、もう、そ知らぬふりで流そう・・・）

「今、お茶を用意しますね。どうぞ、座ってください。ステラ。お茶をお願いします。」

私は何事も無かった素振りで、皆ににこやかに椅子を勧めた。ありがたい事に、皆は何も聞かずにいてくれる。空気の読める友人達なのだ。

「ア、アリアナ様！。これ、父が送ってきた、新作のお菓子です！。」

グローシアが私に捧げる様に、お菓子の箱を渡してくれた。

「あ、ありがとう、グローシア。早速、頂きましょう。」

時間ぴったりに来たのは、ミリア、ジョー、レティの三人と、リリーとグローシアだ。クリフとノエル、パーシヴァル殿下はまだ来ていない。

皆が席に着いてから、私は早速、今日集まって貰った理由を説明した。

「日曜日の朝から、来て頂いてありがとうございます。実は、気になる事が色々あって、皆に相談したいと思ったのです。でも、その話は全員集まってからにしますね。それと、新学年になって、皆さん忙しくて、あまりお話が出来なかったでしょう？。ミリア達のお世話係の話や、リリーの聖女修行について、聞いてみたいと思って。どうですか？、リリーの修行は。楽しく出来てるのかしら？。」

私がそう聞くと、リリーは少し頬を染めて、

「修行と言っても、まだ、聖女についての授業を受けてるだけなんですよ。」

「ねぇ、リリーの受けてる補講って、あのマーリンって子も一緒なのよね？。大丈夫なの？。」

ミリアが心配そうに聞いた。