107 / 284
第5章 悪役令嬢は絡まれたくない
8
しおりを挟む
「そ、それは、どうも・・・」
クリフにそんな風に言って貰えたのが、めちゃくちゃ嬉しい。でも反面、気恥ずかしくて、私はちょっと俯く。きっと顔が赤くなってるんだろうな、頬が熱い。
(き、気まずいな・・・。なんか、話題は無いかな・・・。)
あっそうだ、と思い出した。
「そ、そういうば、クリフ様とディーン様って、仲直りされたんですね?。」
「ん?。ああ、そうだね。」
「・・・いったい何があったのかは、教えて貰えないんですよね?」
「う~ん、そうだね・・・。」
クリフが苦笑交じりにそう言った。
私が聞いたのは、先月の終業式ダンスパーティでの事である。
ダンスパーティで殴り合いの喧嘩をしたらしい二人は、次に会った時はすっかり普通に戻っていた。というか、前よりも親しくなったようにも見える。二人に聞いても、何があったのかは、はぐらかされるばかりなので、詳しくは聞いていない。
「色々誤解があったんだ。気になる?」
「そりゃ、気にならない事はないですよ。心配しましたから。でも無理には聞かないですよ。ただ・・・、」
私は周りに聞こえない様に声を潜めた。
「噂になってたのですが、リリーを取り合って殴り合ったと言うのは・・・。」
「それは違うから!」
私の言葉に、クリフは食い気味に否定した。この態度を見るからに、やはり噂は間違っているのだろうか・・・?。
(う~ん、ゲームでも似たようなイベントがあったから、アリかな?とも思ったんだけど・・・そうか、違うのか・・・。)
ゲームファンとしては、しびれる展開なのだが、当事者はしんどいだろうしなぁ。
「ほんとに違うからね!。・・・単に俺が誤解して・・・ディーンも悪かったんだけど・・・。」
珍しく、クリフが必死で弁解するように言うから、私は両手を振った。
「了解です。分かりました。」
きっと、何かあったのだろうが、人には話したくない事なのだろう。
クリフは息を吐いて髪をかき上げ、気を取り直す様に、椅子を座り直した。
「そんな事よりさ。君も今朝、大変だっただろ?。どうするつもりなんだ?」
朝のマーリンとの、ごたごたの事だ。
「その事なんですが・・・。」
午後の授業の時も、休み時間も、マーリンはずっと思いつめた顔をして、誰とも喋っていなかった。周囲も腫れものを扱うような感じで、彼女はクラスですっかり浮いてしまったのだ。
(まぁ、それは私も同じだけどね。)
でも、私には皆が居る。
「出来ればクリフ様達は、マーリンさんと、普通に接してくれませんか?。」
私がそう言うと、クリフはあからさまに眉間にしわを寄せた。
「どうして?。彼女、随分と君に酷い事を言ってたと思うけど。」
「ええ、そうなのですが・・・ちょっと引っかかるんですよ。」
私は人差し指を立てて、眉間に当てた。
「彼女が私を嫌ってるのは、間違い無いと思うのですが・・・だからって、あんな風に根拠も無く、暴走するタイプでは無いと思うんですよね。そこがちょっと、納得いかないと言うか・・・。」
「どういう事?」
クリフも興味を持ったようだ。
「先月のダンスパーティでの、エルドラさん達の事覚えてます?。」
「ああ・・・。」
クリフがあの時の事を思い出したのか、心底、不愉快そうな顔をした。
「ダンスパーティで騒ぎを起こすにしては、短絡的過ぎるというか、根拠が薄い気がしませんでした?」
「単に彼女達が、浅薄で低能だっただけじゃないのか?。」
(ボロカスだな・・・。)
クリフはたまに、辛辣だ。
「ま、まぁ、そうかもしれませんが、それにしてはやたら自信ありげでした。裏付けも全くとってない状態で、どうしてあそこまで大きな行動に出れたのかが不思議で・・・。」
そう言うと、クリフも何か思い当たるようで、考え込むように口元に手をあてた。
「・・・なるほどね。小物にしては行動が大胆だとは思ったけど・・・。俺達のつまらない噂を信じたとして、断罪を行うのに、証人を集める事もしてなかったな・・・。」
さすがクリフ。理解が早いね。
「そうなのです。今回のマーリンさんの時も、同じような違和感を感じたのです。彼女は上級クラスに入れるくらい優秀な方です。しかも聖女候補。学年の最初の授業で、思い込みだけで、こんな騒ぎを起こすような、無謀な方とは思えないのです。」
「うん、確かに・・・。」
「それと、もう一つ気になる事があります。エルドラ達には、彼女達に入れ知恵をした黒幕がいます。」
「え?」
「私を断罪した内容について、『あの方に聞いた』と言っていたので、彼女達より年長か、身分が高い方なのでしょう。」
彼女達は、その黒幕を信じていた・・・いや、今もそうだろう。だから、今日の昼休憩の時にも、私に嫌がらせをしてきたのだ。
「学園内では身分の上下を問わずと言われてますが、私は一応、公爵家の肩書を持っています。だから普通なら、陰口は言っても、直接攻撃するのは避ける筈なんですよ。それをあえてしてきたというのは・・・。」
「ふうん・・・そこそこの身分の者が、後ろにいるって事か。」
「一応、目星は付いています。」
私がそう言うと、クリフは顔を上げた。
クリフにそんな風に言って貰えたのが、めちゃくちゃ嬉しい。でも反面、気恥ずかしくて、私はちょっと俯く。きっと顔が赤くなってるんだろうな、頬が熱い。
(き、気まずいな・・・。なんか、話題は無いかな・・・。)
あっそうだ、と思い出した。
「そ、そういうば、クリフ様とディーン様って、仲直りされたんですね?。」
「ん?。ああ、そうだね。」
「・・・いったい何があったのかは、教えて貰えないんですよね?」
「う~ん、そうだね・・・。」
クリフが苦笑交じりにそう言った。
私が聞いたのは、先月の終業式ダンスパーティでの事である。
ダンスパーティで殴り合いの喧嘩をしたらしい二人は、次に会った時はすっかり普通に戻っていた。というか、前よりも親しくなったようにも見える。二人に聞いても、何があったのかは、はぐらかされるばかりなので、詳しくは聞いていない。
「色々誤解があったんだ。気になる?」
「そりゃ、気にならない事はないですよ。心配しましたから。でも無理には聞かないですよ。ただ・・・、」
私は周りに聞こえない様に声を潜めた。
「噂になってたのですが、リリーを取り合って殴り合ったと言うのは・・・。」
「それは違うから!」
私の言葉に、クリフは食い気味に否定した。この態度を見るからに、やはり噂は間違っているのだろうか・・・?。
(う~ん、ゲームでも似たようなイベントがあったから、アリかな?とも思ったんだけど・・・そうか、違うのか・・・。)
ゲームファンとしては、しびれる展開なのだが、当事者はしんどいだろうしなぁ。
「ほんとに違うからね!。・・・単に俺が誤解して・・・ディーンも悪かったんだけど・・・。」
珍しく、クリフが必死で弁解するように言うから、私は両手を振った。
「了解です。分かりました。」
きっと、何かあったのだろうが、人には話したくない事なのだろう。
クリフは息を吐いて髪をかき上げ、気を取り直す様に、椅子を座り直した。
「そんな事よりさ。君も今朝、大変だっただろ?。どうするつもりなんだ?」
朝のマーリンとの、ごたごたの事だ。
「その事なんですが・・・。」
午後の授業の時も、休み時間も、マーリンはずっと思いつめた顔をして、誰とも喋っていなかった。周囲も腫れものを扱うような感じで、彼女はクラスですっかり浮いてしまったのだ。
(まぁ、それは私も同じだけどね。)
でも、私には皆が居る。
「出来ればクリフ様達は、マーリンさんと、普通に接してくれませんか?。」
私がそう言うと、クリフはあからさまに眉間にしわを寄せた。
「どうして?。彼女、随分と君に酷い事を言ってたと思うけど。」
「ええ、そうなのですが・・・ちょっと引っかかるんですよ。」
私は人差し指を立てて、眉間に当てた。
「彼女が私を嫌ってるのは、間違い無いと思うのですが・・・だからって、あんな風に根拠も無く、暴走するタイプでは無いと思うんですよね。そこがちょっと、納得いかないと言うか・・・。」
「どういう事?」
クリフも興味を持ったようだ。
「先月のダンスパーティでの、エルドラさん達の事覚えてます?。」
「ああ・・・。」
クリフがあの時の事を思い出したのか、心底、不愉快そうな顔をした。
「ダンスパーティで騒ぎを起こすにしては、短絡的過ぎるというか、根拠が薄い気がしませんでした?」
「単に彼女達が、浅薄で低能だっただけじゃないのか?。」
(ボロカスだな・・・。)
クリフはたまに、辛辣だ。
「ま、まぁ、そうかもしれませんが、それにしてはやたら自信ありげでした。裏付けも全くとってない状態で、どうしてあそこまで大きな行動に出れたのかが不思議で・・・。」
そう言うと、クリフも何か思い当たるようで、考え込むように口元に手をあてた。
「・・・なるほどね。小物にしては行動が大胆だとは思ったけど・・・。俺達のつまらない噂を信じたとして、断罪を行うのに、証人を集める事もしてなかったな・・・。」
さすがクリフ。理解が早いね。
「そうなのです。今回のマーリンさんの時も、同じような違和感を感じたのです。彼女は上級クラスに入れるくらい優秀な方です。しかも聖女候補。学年の最初の授業で、思い込みだけで、こんな騒ぎを起こすような、無謀な方とは思えないのです。」
「うん、確かに・・・。」
「それと、もう一つ気になる事があります。エルドラ達には、彼女達に入れ知恵をした黒幕がいます。」
「え?」
「私を断罪した内容について、『あの方に聞いた』と言っていたので、彼女達より年長か、身分が高い方なのでしょう。」
彼女達は、その黒幕を信じていた・・・いや、今もそうだろう。だから、今日の昼休憩の時にも、私に嫌がらせをしてきたのだ。
「学園内では身分の上下を問わずと言われてますが、私は一応、公爵家の肩書を持っています。だから普通なら、陰口は言っても、直接攻撃するのは避ける筈なんですよ。それをあえてしてきたというのは・・・。」
「ふうん・・・そこそこの身分の者が、後ろにいるって事か。」
「一応、目星は付いています。」
私がそう言うと、クリフは顔を上げた。
15
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。
櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。
兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。
ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。
私も脳筋ってこと!?
それはイヤ!!
前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。
ゆるく軽いラブコメ目指しています。
最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。
小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる