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第4章 悪役令嬢は目を付けられたくない
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ホールでは生徒達がたくさん踊っているが、ざっと見回しても、私とディーンの様な身長差コンビは居ない・・・。
(1曲踊ったら、とっとと退散しよう・・・。)
新しい曲が流れ始めた。ディーンは私の歩幅に合わせる様に、きっちりとリードしてくれている。でも、きっとやりにくいだろう。
「すみません、私の身長が低いせいで、ディーン様は踊りにくいですよね?」
「別に、問題ないよ。・・・ステップが上手いね。」
「私がですか!?。良かったです!。兄に付き合って貰って、結構練習したんです。」
そう言うと、ディーンはくすりと笑った。
(うっ!)
この距離で、しかも見上げる恰好で、美形に上から微笑まれる・・・。これは、中々の攻撃力だ。
(ま、まぶし・・・!油断してた・・・。)
ステップを踏み間違えそうになるのを、慌てて立て直す。
(あんまり、顔見ないようにしないと・・・あっ、でもダンスの時に、それも変かな?)
クルクルとターンしながら、私はぐるぐる考えていた。
(黙っているのも気まずいな。・・・なんか良い話題ないかな?)
そう言えばと、私は一つ思い出した。
「あの、ディーン様!?」
「ん?」
「クリフ様は、大丈夫なのでしょうか?。先ほど、ディーン様と、何処かへ行かれましたが・・・。」
「ああ、そうだね。・・・クリフが心配?。」
「はい。多分、『お金目的で私と友人になった』、なんて言われて、腹が立ったのでしょう。いつもと様子が違いましたもの。」
「うん・・・でも自分の事で、怒ったのではないと思うよ。」
「え?。そうなのですか?」
「ああ・・・。でも、大丈夫だよ。さっき、頭を冷やしてくると言って、中庭の方へ出て行った。もう落ち着いてる頃だと思う。」
「そうですか。良かったです。」
少しホッとした。
私達はまたクルリとターンする。こんな背の低い私と踊ってたら、猫背になってしまわないだろうか?
そんな事を考えていたら、曲が終わった。
(やっと終わった。)
やれやれと言う気持ちで、壁際に戻ろうとしたのだが、私の手を掴んだディーンが動かない。
「ディーン様?」
「もう一曲踊ろう。」
(えっ?)
直ぐに次の曲が始まり、そのまま私をリードし始めた。
(ちょ、ちょっと!)
辺りを見ると、曲が終わったらすかさずディーンを誘おうとしていた令嬢達が、私を睨みつけている。
「あ、あの、ディーン様!?」
「私達は婚約者同士だ。続けて踊っても、おかしくはないだろ?。」
(それは、そうかもしれないけどぉ・・・。)
仕方なく、私はまたステップを踏み始める。でも、どこからか聞こえてくる声が、耳に入ってくるのだ。
「あの方、ディーン様を離さないつもりよ。」、「なんだか随分、でこぼこなカップルですこと。」、「大人が子供にダンスを教えてるみたい。」、「先ほどの話も、あながち嘘じゃ無いのかもよ?」
(成程ねぇ・・・。エルドラ達だけじゃないってことか。ディーンの婚約者だと言う事だけで、私は結構な反感かってるわけだ。)
私は私の手を取るディーンを見上げた。まるで絵画から抜け出てきたような、整った容姿だ。
(そりゃ、こんだけスペック高い人だもんねぇ。その相手がこんなチビのつるぺたじゃ、当然、釣り合わないって思うか。)
・・・なんだか自分で思った事なのに、ちょっと傷ついた・・・。
(でもさっ、この人に釣り合う人なんて、そうそう居ないと思うわけよ。そんなのリリーぐらいだって!。)
そもそも、ゲームの攻略者達は、ヒロインにこそふさわしいのだよ。だって、そう言う設定なんだもん。
(そう言えば、ディーンとリリーが踊る場面がゲームの中であったっけ。)
それは第一部の中で、アリアナを断罪後に見られるのだが、一番盛り上がるシーンだ。
(うわぁ!これ生で見れたら、凄いんじゃない!?)
想像すると、ぞくぞくしてきた。私は思わずディーンに尋ねた。
「あの!ディーン様。先ほどリリーを見ましたよね!?」
「え?。ああ。」
「どう思いました?。」
ディーンが怪訝そうな顔をする。
「どうって・・・。」
「綺麗だと思いませんでした!?。」
「え?・・・まぁ、思ったけど。」
「ですよね!?。」
私はここぞとばかりに提案してみる。
「あの、この後で、リリーと踊りませんか?」
「・・・どうして?」
「どうしてって、お二人が踊ると、凄く素敵だと思うのです。」
「・・・。」
「お似合いだと思うのです。きっと絵の様に素晴らしいと思いますわ。」
きっと、興奮でキラキラした目を向けていたであろう私に、ディーンは思いっきり眉根を寄せた。
(んっ?)
「ディーン様、どうしました?」
「君って、たまに残酷な事言うよね。」
「え?!。私、何か良くなかったですか?」
そう聞いた私に、ディーンは先ほどの様に「はぁ~。」とため息をついた。
「別に・・・分かっていた事だから良いけど・・・。」
どういうことだろう・・・?。ディーンって時々こんな風に溜息つくんだよね。何か心配事でもあるのかな・・・?
そう考えて、突然ハッと思いついた。
(も、もしかして、ディーンてば、私の知らない所でリリーに既に振られちゃってたりするのだろうか・・・?。リリーは他に好きな人が居るって言ってたし・・・。もしそうだとしたら、私は今、ディーンの傷をえぐる様な事を言ったことに・・・。)
(1曲踊ったら、とっとと退散しよう・・・。)
新しい曲が流れ始めた。ディーンは私の歩幅に合わせる様に、きっちりとリードしてくれている。でも、きっとやりにくいだろう。
「すみません、私の身長が低いせいで、ディーン様は踊りにくいですよね?」
「別に、問題ないよ。・・・ステップが上手いね。」
「私がですか!?。良かったです!。兄に付き合って貰って、結構練習したんです。」
そう言うと、ディーンはくすりと笑った。
(うっ!)
この距離で、しかも見上げる恰好で、美形に上から微笑まれる・・・。これは、中々の攻撃力だ。
(ま、まぶし・・・!油断してた・・・。)
ステップを踏み間違えそうになるのを、慌てて立て直す。
(あんまり、顔見ないようにしないと・・・あっ、でもダンスの時に、それも変かな?)
クルクルとターンしながら、私はぐるぐる考えていた。
(黙っているのも気まずいな。・・・なんか良い話題ないかな?)
そう言えばと、私は一つ思い出した。
「あの、ディーン様!?」
「ん?」
「クリフ様は、大丈夫なのでしょうか?。先ほど、ディーン様と、何処かへ行かれましたが・・・。」
「ああ、そうだね。・・・クリフが心配?。」
「はい。多分、『お金目的で私と友人になった』、なんて言われて、腹が立ったのでしょう。いつもと様子が違いましたもの。」
「うん・・・でも自分の事で、怒ったのではないと思うよ。」
「え?。そうなのですか?」
「ああ・・・。でも、大丈夫だよ。さっき、頭を冷やしてくると言って、中庭の方へ出て行った。もう落ち着いてる頃だと思う。」
「そうですか。良かったです。」
少しホッとした。
私達はまたクルリとターンする。こんな背の低い私と踊ってたら、猫背になってしまわないだろうか?
そんな事を考えていたら、曲が終わった。
(やっと終わった。)
やれやれと言う気持ちで、壁際に戻ろうとしたのだが、私の手を掴んだディーンが動かない。
「ディーン様?」
「もう一曲踊ろう。」
(えっ?)
直ぐに次の曲が始まり、そのまま私をリードし始めた。
(ちょ、ちょっと!)
辺りを見ると、曲が終わったらすかさずディーンを誘おうとしていた令嬢達が、私を睨みつけている。
「あ、あの、ディーン様!?」
「私達は婚約者同士だ。続けて踊っても、おかしくはないだろ?。」
(それは、そうかもしれないけどぉ・・・。)
仕方なく、私はまたステップを踏み始める。でも、どこからか聞こえてくる声が、耳に入ってくるのだ。
「あの方、ディーン様を離さないつもりよ。」、「なんだか随分、でこぼこなカップルですこと。」、「大人が子供にダンスを教えてるみたい。」、「先ほどの話も、あながち嘘じゃ無いのかもよ?」
(成程ねぇ・・・。エルドラ達だけじゃないってことか。ディーンの婚約者だと言う事だけで、私は結構な反感かってるわけだ。)
私は私の手を取るディーンを見上げた。まるで絵画から抜け出てきたような、整った容姿だ。
(そりゃ、こんだけスペック高い人だもんねぇ。その相手がこんなチビのつるぺたじゃ、当然、釣り合わないって思うか。)
・・・なんだか自分で思った事なのに、ちょっと傷ついた・・・。
(でもさっ、この人に釣り合う人なんて、そうそう居ないと思うわけよ。そんなのリリーぐらいだって!。)
そもそも、ゲームの攻略者達は、ヒロインにこそふさわしいのだよ。だって、そう言う設定なんだもん。
(そう言えば、ディーンとリリーが踊る場面がゲームの中であったっけ。)
それは第一部の中で、アリアナを断罪後に見られるのだが、一番盛り上がるシーンだ。
(うわぁ!これ生で見れたら、凄いんじゃない!?)
想像すると、ぞくぞくしてきた。私は思わずディーンに尋ねた。
「あの!ディーン様。先ほどリリーを見ましたよね!?」
「え?。ああ。」
「どう思いました?。」
ディーンが怪訝そうな顔をする。
「どうって・・・。」
「綺麗だと思いませんでした!?。」
「え?・・・まぁ、思ったけど。」
「ですよね!?。」
私はここぞとばかりに提案してみる。
「あの、この後で、リリーと踊りませんか?」
「・・・どうして?」
「どうしてって、お二人が踊ると、凄く素敵だと思うのです。」
「・・・。」
「お似合いだと思うのです。きっと絵の様に素晴らしいと思いますわ。」
きっと、興奮でキラキラした目を向けていたであろう私に、ディーンは思いっきり眉根を寄せた。
(んっ?)
「ディーン様、どうしました?」
「君って、たまに残酷な事言うよね。」
「え?!。私、何か良くなかったですか?」
そう聞いた私に、ディーンは先ほどの様に「はぁ~。」とため息をついた。
「別に・・・分かっていた事だから良いけど・・・。」
どういうことだろう・・・?。ディーンって時々こんな風に溜息つくんだよね。何か心配事でもあるのかな・・・?
そう考えて、突然ハッと思いついた。
(も、もしかして、ディーンてば、私の知らない所でリリーに既に振られちゃってたりするのだろうか・・・?。リリーは他に好きな人が居るって言ってたし・・・。もしそうだとしたら、私は今、ディーンの傷をえぐる様な事を言ったことに・・・。)
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