モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第4章 悪役令嬢は目を付けられたくない

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赤ドレスが目を吊り上げた。仲間の女子もザワついている。

「な、何のことって!、全部貴方がやった事でしょ!?しらばっくれるのもいい加減になさいよ。」

私は当惑したように眉を下げて、片手を頬に当てて首を傾げた。

「しらばっくれるだなんて・・・、困りましたわ。わたくしには全く思い当たる事が無いのですもの。」

困惑したように、首を小さく振ってみる。

赤ドレスは額に青筋を立てて、こちらを睨みつけた。おお怖っ!そんな顔したら、誰も近寄らないぞ。

「いい加減にしなさいよっ!こっちは証拠だってあるんだからね!。」

(ほう、面白い!)

「証拠ですか。では、それを見せて頂けますか?」

私は精一杯可愛らしく、両手を合わせてお願いポーズをしてみせた。
そんな私に、女生徒達はイラついたようで、攻撃的な言葉(平たく言えば悪口よ)を一方的にぶつけてくる。
「何なのこの子!」とか「いい加減認めなさいよ。」とか「チビのくせに」「親の権力をかさにきて」「可愛い子ぶって」・・・エトセトラである。

(ふ~ん、こいつら、あまり頭良くない。)

だって、この状況ってどうだろう?。周りから見たら、か弱き小さな女生徒を、集団でイジメてるように見えないだろうか?

「証拠なんて、ディーン様やクリフ様に聞けば、直ぐに集められるわ!。あの方達は、自分からは言えなかったのよ!。だから、私達が声をあげたのだから。」

「まぁ、そうなのですか。では、今は証拠は無いのですね。」

「なんですってっ!」

「無いのですよね?」

神経を逆なでする様に念を押して、にっこり笑って小首を傾げた。思惑通り、赤ドレスはさらに大声を張り上げた。

「だからっ、本人に聞けば、証拠なんて直ぐに出て来るって言ってるでしょっ!あの方だってそう仰ったものっ!」

(あの方?)

私はピクリと眉を上げた。

(やっぱり、思った通りだ。後ろに黒幕が居るって事だよね。だってさ、この子達の行動って、あまりにも安直過ぎるのくせに、変に自信もってるんだもん。・・・さて、どうしたもんかな・・・?。)

私は薄く笑って、ゆっくり赤ドレスの女生徒に視線を合わせた。

(取り合えずは・・・。)

「な、何よ!?」

私の態度が変わったのが分かったのだろうか?。少し狼狽えたように後ろに下がる。

私はそれに合わせてまた一歩前に出た。

(私の大事な友人を、馬鹿にしてくれたお返しだけは、しないとね。)

「何よっ。私達にも公爵家の権力振りかざそうって言うの?。」

「失礼ですが、お名前は?」

「えっ?」

「貴方のお名前を伺っているのです。当然のマナーですよね?。初対面の人に話しかける場合、まずは自己紹介をするものですわ。貴方は、わたくしの事をご存知の様ですが、わたくし貴方を存じ上げませんの。」

あくまで落ち着いた態度の私に、赤ドレスは引きつった顔で、

「エルドラ・ポイニャック。ポイニャック侯爵の娘ですわ!。言っておきますが、私は2年生よ。あなたより年長ですからね。」

噛みつくように答えて来た。

(なるほど、そこそこ身分のお高いご令嬢なわけね。)

「ありがとうございます。エルドラ様。これでお話がしやすくなりますわ。」

私はゆっくりと落ち着いた声で、話し始めた。

「ではまず、ディーン様の事から・・・。あの方がわたくしと婚約関係にあるのは事実ですが、お互い良い友人だと思っていますの。ですから・・・。」

私は邪気の無い笑みを浮かべて、少し頬を赤くしてみせる。

「ですから・・・、ディーン様に他に思い人ができましたら、友人として祝福したいと思っていますのよ。それは、ディーン様も同じお気持ちですの。だから無理やり婚約させているなんて、とんでもないです。事実無根でございますわ。」

「なっ?!」

「それに、リリーは取り巻きなどでは無く、わたくしの大事な親友です。ディーン様がリリーをお気に入りなのかどうかは存じませんが、もしそうなら、ディーン様はそう言ってくださいます。だって、あの方はとても真面目で誠実な方ですもの・・・。他に思い人がいながら、わたくしと婚約関係を続ける筈がございませんわ。だから・・・」

私は笑みを浮かべながらも、目に力を込めた。

「だから、まるでディーン様がリリー目当てに、わたくしと友人関係にあるような言い方は、止めてくださいますか?」

「えっ?、えっ?」

ちょっとばかり、相手の言った事を捻じ曲げて返してやった。さて次は、

「それからクリフ様でしたね。クリフ様を、わたくしがお金で縛っている様な仰い方でしたけど・・・。」

「そ、そうよ!。そうなんでしょ?!」

私は目を伏せて、溜息をついた。

「おかしいですわ。クリフ様のご実家のウォーレン家は、コールリッジ家に負けずと劣らない資産家でしてよ。ご存じないのですか?」

「えっ?」

(本当に知らなかったのか・・・、世間知らずだね。皇国の有力貴族の事ぐらい、把握しときなよ。)

「そんなクリフ様を、お金で縛るなんて、あり得ませんわ。それに、まるでクリフ様がお金目当てでわたくしと友人で居る様な仰り方・・・、クリフ様に対して、とても失礼だと思いますが・・・。」

「・・・・っ。」

とうとう、女生徒達は黙ってしまった。でも、ここで手を緩めたりしないからね!
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