モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第4章 悪役令嬢は目を付けられたくない

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(ごめん、ディーン。疑って、ごめん!。そして・・・本当にありがとう。)

なんだか、堪らない気持ちになり、私の目から涙がポロっとこぼれた。

「アリアナ!?。大丈夫か?どこか痛いのか!?」

ディーンが慌てだし、心配そうに頭を撫でる。

私はハンカチを取り出し、急いで涙を拭った。

「ディーン様、すみません。何でも無いのです。わたくし、大丈夫です。」

「だが・・・。」

ディーンはまだ、固い顔をしている。

「もう、大丈夫です。こんな大きなダンスパーティ、初めてなので緊張してしまったのです。心配をかけてしまって、ごめんなさい。」

今度は、心から笑みを浮かべる事が出来た。ディーンもやっと表情が柔らかくなる。

「無理をしていないか?。遅くなってすまない。もう少し早く来ればよかった・・・。」

「いえいえ、ディーン様はちゃんと、時間通りにいらっしゃいましたよ。」

優しいなぁ、ディーンは。こんな人に心配して貰えるなんて、私は幸せだ。


この1年で、彼と信頼関係を築けたのが、本当に嬉しい。


「良かった・・・。顔色が良くなってきている。だが、まだ座っていた方が良い。何か飲み物でも貰って来る。」

ディーンはそう言って、飲食スペースの方へ歩いて行った。私はその彼の背中をぼんやりと眺めた。


(ディーンには、もう嫌われたくないな・・・。)


これからも、ずっと友達でいたいよ。ディーン、良い人だもん。

彼は大量の女子からのダンスの誘いを、必死にかわしながら、飲み物の置いてある場所へと移動していく。・・・これは戻って来るのに時間がかかりそうだ。

(凄いな・・・。上級生からも誘われてるじゃん。今、声かけてきたのって5年生じゃ無いのか?。まだ、私と踊って無いと言うのにさ。)

曲がりなりにも、婚約者なのである。

(ああいうのが居るから、婚約解消したくないってわけか・・・。モテ過ぎんのも色々大変だね。)

私は虫よけ程度には、役に立ってるのかもしれない。


そんな事を考えていたら、


「アリアナ・コールリッジ公爵令嬢!!」


と、いきなり後ろから大声で声をかけられた。
びっくりして振り向くと、そこには数人の女生徒が腕を組んで立っている。

(何?!何だ?この人たち。)


1年生だけでは無い、上級生も交じっている。女生徒達は皆、私の事を睨みつけ、なんだか不穏な雰囲気だ。そして、先頭に立っている赤いドレスの女子が、

「アリアナ・コールリッジ。私達はあなたを、ディーン様、クリフ様、パーシヴァル様を、権力の力で無理やり自分の周りにはべらせ、縛り付けた事において、ここに告発致しますわ!」

そう高らかに言って、持っていた扇を私の方に突き付けたのだ。


(は?・・・。はぁ~~~~~っ?!)


私はあまりの事に、ポカンとしてしまった。

(・・・なんだそれ?こいつ、何を言ってるの?。)

女生徒達は不敵に笑いながら、私の座っている椅子を取り囲むようにした。赤ドレスの女子が、大きな声を出したので、周りの人達もこちらに注目している。

「驚いて声も出ないようですわね。ご自分の悪行が知られていないとでも思っていたのかしら?。アリアナさん、あなたは、父である公爵様の権力を使って、ディーン様と無理やり婚約しましたよね?。これは、もう周知の事ですわよ。」

(あ~、そうね。これはアリアナがやっちゃったやつですね、はいはい。)

「しかも、ディーン様が気に入られたリリー・ハートを、無理やり自分の取り巻きにする事で、学園でもディーン様を自分の側から離さないようにしましたね!?。何と言う浅ましい事でしょう!。」

(す、凄いストーリーだな、おい・・・。)

「そして貴方はクリフ様を、お金の力で自分の近くに置く事にしたのよ!。莫大な財産を持つ、コールリッジ家にとっては簡単な事だったでしょうよ!。」

(えっ?。クリフの家だって、相当金持ちだよ!?なんか勘違いしてない?)

「挙句の果てに、パーシヴァル様の弱みを握って、あろう事か皇族の方まで、貴方の我儘に振り回されることに・・・。これは許されざることですわよ!」

(・・・ん?弱み?。弱みってまさか、ディーンの事?!。こいつ、あの事知ってるの!?)

赤ドレスの女子は勝ち誇ったように私を見下ろしている。他の女生徒達もニヤニヤしながら蔑すむような目を向けていた。

(いや・・・、こいつらは知らないな。知ってる訳がない。パーシヴァルは安易に、自分の中をさらけ出すような奴じゃないもん。見た目は軽くて明るいけど、中身はくっそ重たい奴なんだから。)

「ここに居る皆様が、貴方のこれまでの悪行の証人よ!。さぁ、どうなさるおつもり!?。あなたに少しでも貴族の誇りと羞恥心があるのなら、悔い改めて、さっさとこの学園を去る事ね!」


「なるほど・・・。」


私は目を伏せたまま、ゆっくりと立ち上がった。一瞬、彼女たちが一歩下がったのが分かった。

「なるほどね・・・、こう来たわけか。ふふ・・どうあっても断罪イベントをやりたいって訳だ、この世界は。」

ぼそりと呟いた私に、女生徒が怪訝そうな表情を浮かべる。

「何を言ってるの?貴方。わたくしの言った事が理解出来なかったのかしら?」

(いやいや、しっかりと理解していますよ、私は。それにね、もう一つ分かった事もありますよ。)

私は冷静な態度で顔を上げて、赤ドレスの女子を見つめた。

(数で来れば、私に勝てると思ったのかねぇ、浅はかな。)

私はにっこり笑って、一言こう言った。


「何の事でしょう?」
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