モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第3章 悪役令嬢は関わりたくない

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男子達の話題は今日の遠乗りの話になっているようだ。


「今朝、遠乗りに行ったとき、気持ちの良い場所を見つけたんだ。」

クラークが男子達に「そうだよなっ?」と確認する。

「そんなに遠くないから、女性でも馬で行けると思うんだ。明日は皆で、そこにピクニックに行かないか?。ディーンも今回は、遠乗りに行けなかったしね。」

「でも、私は馬に乗れないですよ。」

ミリアがそう言った。

(うん、私も乗れない。)

「私は乗れるわ。」

「わ、わたくしも、もちろん乗れます!」

ジョーと、グローシアは乗れるらしい。

「乗れない人は、僕たちが一緒に乗るから大丈夫。二人乗りで行こう。凄く景色が良いんだ。」

皆はそれを聞いて目を輝かせたが、グローシアは絶望的な顔になった。馬に乗れると言った事を後悔しているようだ。


(お兄様とは、私が一緒に乗った方が良さそうね・・・。)

だが、そんな私の思惑は、次の日完全に覆されてしまった。




朝、朝食を済ませた私達に、

「折角だから、馬に乗るパートナーをくじ引きで決めよう!」

にこやかな顔でだが、押しを強めに、パーシヴァルがそう提案してきた。そして私達は反対する間も無く、箱の中に入れた畳んだ紙を引かされていたのだ。

「同じ数字がパートナーだよ。」

皆、めいめい紙を開いていく。

その結果、

クラークとミリア

ディーンとリリー

クリフとレティシア

パーシヴァルと私

と言う、組み合わせが決まった。


(げっ!なんでパーシヴァルと!?)

と思ったが、仕方がない。

ちなみにジョーとグローシアはそれぞれ一人で馬に乗り、ノエルも二人乗りに自信が無いとの事で、一人で馬を使う事になった。


グローシアは、ミリアをジットリした目で睨み、ミリアは心底迷惑そうな顔をしていた。

クリフの横に並びたくないと言っていたレティシアは、「馬に乗ったら、誰もこちらを見ないで下さい。」と、据わった目で私達に念を押した。

そしてディーンとリリーは、


(ふぉ~!)


リリーを前に乗せ、馬にひらりとまたがったディーン。景色も相まって、まるで一幅の絵を見るようだった。

(さすが、美男美女!・・・これは、お似合いだわぁ・・・。)

レティもさぞかし、絵に描きたいだろうと、うっとりと見ている私の肩を、後ろからポンっと誰かが叩いた。
振り向くとパーシヴァルがにっこりと笑い、

「行こうか。」

と私を促した。


(目、笑って無い・・・この人・・・。)

何かが、笑顔の向こうに垣間見えるた気がした。
私は訝しく思いながらも、パーシヴァルの手を借りて、馬に乗った。

こうして、遠乗りピクニックが始まったのだ。


今日は絶好のピクニック日和で、青い空に、鳶がゆうゆうと弧を描いている。
クラーク達の馬を先頭に、途中イルクァーレの滝を横目に見つつ、私達はゆっくりと高原を登っていった。

知らない間に、パーシヴァルと私の馬は、最後尾を歩いていた。そして、私の後ろに乗って手綱を操っているパーシヴァルは、親しげな様子で私に話しかけてきた。


「さすが、名門コールリッジ家だね。別荘にも何頭も馬を用意してるとは。」

「・・・ありがとうございます。父が馬好きなもので・・・。」

「食事も、毎食手が込んでて豪華だ。宮廷の料理よりも贅沢かもね?」

「・・・恐れ入ります・・・。」

口調は楽しげなのだが、何故か嫌みっぽく聞こえるのは、気のせいか?


「いやぁ、君には昔、随分手を焼かされたよねぇ。ディーンに近寄るもの皆に、嚙みつく勢いで、罵詈雑言を浴びせるもんだから。」

(うっ・・・。こいつ。)

嫌みどころか、堂々と文句を言い始めた。


パーシヴァルとディーンは小さい頃からの友人だ。ディーンの出席したパーティやお茶会には、パーシヴァルも居たのだろう。昔のとんでもない我儘傲慢娘だったアリアナを、きっと良く知っているのだ。


(アリアナてば、男女構わずだったみたいだもんね。パーシヴァルには恨まれているか。)

ここは素直に謝っとこうと、私はしおらしく、

「その節は、ご迷惑をおかけいたしました。恥ずかしい態度をお見せした事、心苦しく思いますわ。子供の時の過ちと、お許しいただければありがたいのですが・・・。」

と、目一杯おしとやかな風情で、私はペコッと頭を下げた。


「・・・ふうん、随分と化けたんだね。」

(むっ!?)

「純粋なディーンやリリーじゃ、すぐ騙されそうだ。」

(・・・、なんだこいつ!?)

「僕は君に石を投げられそうになった事もあるからねぇ、そう簡単には誤魔化されないよ。」

(・・・そ、それはアリアナが申し訳ない事を・・・。)


第二皇子に石まで投げようとしたんかい!?と心の中でアリアナに突っ込み、これはパーシヴァルは手ごわいぞと感じていた。

(別に、この人に好かれようとは思わないけど、ずっと恨まれてるのはしんどい。それに・・・、)

私は後ろに座っているパーシヴァルを、ちらっと見上げた。

(いまいち、目的というか真意が分からないのよね。・・・う~ん、ちょっと揺さぶってみるか!)
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