モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第3章 悪役令嬢は関わりたくない

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地獄の晩餐の後、父は私達を、グスタフとの食後のお茶には誘わなかった。恐らく、食事中の私を見て、限界だと思ったのだろう。

名残惜しそうに私を見る、グスタフの視線を背中に感じながら、私は皆と2階への階段を登った。そして周りに気付かれない様に、後ろの方で、そっとディーンの服を引っ張った。

ディーンが訝しげに私に顔を向ける。私は小さな声で誰にも聞こえない様に、素早く言った。


「すみません、折り入ってお話があるのです。後でお時間を頂けませんか?」


私の只ならぬ様子を察してくれたのか、ディーンは黙って頷いた。


「15分後に、奥の白檀の部屋で・・・」


そう告げて、私は彼を追い抜いて、そのまま階段を登って行った。





皆が揃っての二日目の夜、私は使用人に頼んで、広い寝室にベッドを6台入れて貰った。女子みんなで寝れるようにである。一人ずつ寝室はあったのだが、こっちの方が絶対楽しい。
壁に3台ずつ並べて、皆で向かいあってお喋りをしていた。

レティシアは、ベッドの上で会話を聞きながらも、スケッチブックに絵を描き続けている。

「今日のピクニックは最高でした。4人のレアなショットが描けましたわ。」

今は仕上げをしていますと、興奮しながら鉛筆を動かしていた。

「あなた、昨日は徹夜したんでしょ?今日は早く寝なさいよ。」

ミリアは寝る前にと、髪を三つ編みにして、今はグローシアの髪も三つ編みにしてあげている。


「そう言えば、今日は驚きましたわ。あのグスタフ・リガーレ公爵がいらっしゃるなんて。」

(ふぐっ!)


何気なく言ったミリアの言葉に、私は息が詰まりそうになる。


「今をときめく方ですものね。社交界では引く手数多だとか・・・。」


レティシアも鉛筆の手を止めて、会話に加わった。


どうやら彼は、アンファエルン学園を首席で卒業したエリートで、現在魔法省の特級魔術師でもあるらしい。20歳そこそこでリガーレ公爵となったグスタフの領では、彼が起こした新しい産業が盛んで、他国との貿易も活発らしい。そして、今ではその財力はコールリッジ家にも勝るとも劣らないとの事だった。


(何よ、その無駄なチートぶり・・・。)


ゲームでは、最後にちょろっと出るだけの、名前も無いロリコン親父なのに。

(まさか、私が知らないだけで、グスタフも隠し攻略対象だったりしないわよね!?)

私はヒロインとグスタフが結ばれる想像をして、絶望感に襲われた。

(いやだ・・・。自分も嫌だけど、ヒロインがグスタフとなんて絶対に嫌だ。)



「なんでも、今34歳らしいですが、ご結婚なさってないでしょう?。沢山の申し込みがあるのに、全てお断りしているそうですよ。」

「誰か、心に秘めた方でもいらっしゃるのかしら?。例えば、もうご結婚されてしまったご令嬢とか!」

ミリアがそう言うと、皆「ロマンスねぇ。」「小説みたいだわ!。」と沸いていたが、私だけは引きつった顔で、「・・はは」と乾いた笑いを出すしかなかった。


(なるほど、アリアナがグスタフ家に嫁ぐことは、コールリッジ家にとっては、滅茶苦茶、有益な事なんだ。)


父はアリアナには甘いし、たいがいの言う事は聞いてくれる。しかしビジネスや、国の政策に対しては甘い人間ではない。
大した産業も無く、鉱山資源も無いディーンのギャロウェイ家とでは、姻戚関係になっても特にメリットは無いと考えるのが普通だろう・・・。

よくよく考えてみると、乙女ゲームの中でも、アリアナの父であるコールリッジ公爵は、ディーンがリリーに心を寄せてい居る事を知っていた筈である。

だがゲーム内での父は、アリアナを溺愛してるにも関わらず、それを見て見ぬ振りする。断罪されたアリアナが、あんなにも傷ついていたのに。


(う~ん、そんなにもアリアナをグスタフに嫁がせたかったのか。それとも、父もアリアナの我儘な性格をを正したいと思っていたのかな・・・?。)



いや、違うな・・・。



ディーンと無理やり結婚しても、アリアナが幸せになれない事が分かっていたからだ。


アリアナがあのままの性格なら、ディーンは絶対アリアナを好きにはならない。
そんな二人が結婚しても、お互い不幸なだけだ。


(その点、グスタフは、アリアナを愛している事だけは確か・・・。うわっ)



二の腕に鳥肌が立った。
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