モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第3章 悪役令嬢は関わりたくない

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食らったダメージのせいで、美味しいお弁当の味は良く分からず、私は機械的にサンドイッチを口に運びながら、もやもやしていた。


(クリフってば、あんなの垂れ流してたら、女子の間で被害が続出するぞ・・・。)

下手すりゃ男子も食らいかねない、何せ精霊も顔負けの美貌なんだから。


(もはや、兵器だわ・・・恐ろしい・・・。)


私は身震いした。


「アリアナ様、お寒いですか?」


リリーが隣から、私を覗きこむ。


「い、いえ、大丈夫です。二人が上着を持ってきてくださったから・・・、ありがとうございます。」

リリーが天使のような笑みを私に向けた。

(ああ、・・・癒される・・・。)


ちらっとクリフの方を見ると、今はちゃんと子供の顔で、チキンを頬張りながらノエルと話している。そして何かツボに入ったのだろう、チキンを握ったまま笑い死んでいた。


私は溜息をついて、視線を戻すと、何故かパーシヴァルと目が合った。

(ん?)

パーシヴァルは直ぐに目を逸らすと、何事も無かったかのようにディーンに話しかけている。

(なんじゃい?)

いぶかしく思ったが、あまり気にしない事にした。



そしてその時、別荘では再び恐怖が待ち受けている事を、私は知らなかった。





(落ち着け・・・、落ち着くんだ、私・・・。)

スープを口に運ぶスプーンが、小刻みに震えてしまう。

素晴らしく美味しいポタージュの筈なのだが、味わう余裕など、私には無かった。

楽しい滝でのピクニックから、夕方前に別荘に戻った私達は、父と母、そしてあるゲストに迎えられた。


そうそのゲストとは・・・

「またお招き頂いて、嬉しい限りですよ、コールリッジ公爵。新しい産業にについても、アドバイスを頂きたかったので・・・。」

「このような田舎の別荘なので、たいしたもてなしも出来ないが・・・、まぁゆっくり召し上がって頂きたい。リガーレ公爵。」

父と優雅に会話を続ける人物・・・。


私の天敵!グスタフ・リガーレ公爵(ロリコン親父)である!



(なんでお前が、またここに!?)



叫びそうになるのをぐっと堪えた。

グスタフは今、晩餐の主賓席で、すました顔で食事をしている。父と話をしながらも、如才なく兄のクラークや、私の友人に声をかける事も忘れない。


(なんか、もう、そういう所も気持ち悪い・・・。)


こうなると、単に私の偏見の様にも思えてくるのだが、たまに私を見る時の、目に籠った「熱さ」のような物が、私に危険を認識させるのだ。


(気を抜いたら、殺られる・・・。)


とにかく、この晩餐会を乗り切ろうと、私は緊張しながらメインの子羊のポアレにナイフを入れた。


「そういえば、アリアナ嬢は、前のような髪型はしないのですか?」

(ひっ・・・)


突然グスタフに問いかけられ、私は付け合わせの焼きリンゴをテーブルに落としてしまった。


「す、すみません・・・。」

(きゅ、急に話しかけないで!。何よ、前の髪型って・・・!?)

と慌てたが、私はそう言えばと思い当たった。ゲームのアリアナの髪型は、かなりテンプレなツインテールで、いかにもロリが好みそうな髪型だったのだ。


(そっか、私になってからは、髪は普通に降ろしてるか、お嬢様結びだから・・・。)

だって、あの強烈ハイなツインテールは、私には正直キツイ・・・。


「あ、あの・・・、あの髪型は少し子供っぽいと思いまして・・・、学園にも入ったことですから変えてみたのです。・・・ほほほ・・・。」

「そうですか・・・。でも、とてもお似合いでしたよ。もう一度、見てみたいものです。」


甘い声で、ささやくようにそう言う。


ぐはっ・・・。


はい、血を吐きそうなぐらいのダメージを頂きました。



私の様子がおかしい事に、両隣にいるリリーとミリアは気づいてるみたいで、時折気遣うような視線を送って来る。


(父には言った。はっきり言った、だから納得してくれたはず。)

(私は奴とは結婚しない・・・私は奴とは結婚しない・・・私は奴とは結婚しない・・・)


心の中で呪文のように唱えながら、私は額に汗を浮かべつつ、顔には笑みを貼りつけていた。せっかくの晩餐の料理は、ほとんど皿に残っている。

そんな私を、父は困ったような顔で見ている。先日、私が言った事を、ようやく理解したようだ。


だけど、視線で分かる!。肝心のグスタフが、全く諦めてないのだ!

(な、流し目を送らないでって!。)

なんだか胃まで痛くなってきた。


(ううう、こうなったら・・・。)


背に腹はである。私は、ある計画を心に決めた。
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