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第2章 悪役令嬢は巻き込まれたくない
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そしてその日の夕方、私が実家に戻る為の準備をしていた時だった。
明日は両親や屋敷の使用人達へのお土産を買うために、兄と城下町に行く予定である。少しでも持って帰るものをまとめておきたかった。まぁ、ほとんど勉強道具なんだけど。
玄関のチャイムが鳴り、メイドが私を呼びに来た。
(誰だろう?。)
ドアの向こうにはディーンが立っていた。
「こんにちは、ディーン様。何か御用でしょうか?」
私は先日の事件以来、ディーンに会っても恐れたり慌てる気持ちが無くなっていた。
(何故、変わったのだろう・・・。多分、ディーンは、皆と一緒に私を助けに来てくれたから・・・。それでもう充分って感じ?。)
そう、もう充分だって気持ちが一番近いかもしれない。
「アリアナ、良かったら少し散歩しないかい?」
「・・・。」
「少し、話したい事があるんだ。私は明日、領に戻るから・・・。」
「はい・・・。」
つまり今日しか話せない、そして今日話さなければいけない、そういう話があると言う事だ。
兄のクラークは日が傾いてから出かける事に不満そうだったが、私はなんとか彼をなだめた。
(ディーンの話・・・きっとあれだ。)
私は彼がある決心をしたのではないかと思っていた。
縁起の悪い裏庭を横目に見て、私達は中庭の方へ歩いて行った。そろそろ夕暮れも近く、薄暗くなってきていたが、ここはカフェも多く、街灯も多く設置されている。そして、この時刻の中庭は上級生のカップルも多いのだ。
そんな中。ディーンは私を端の方にある小さな山小屋風のカフェに誘った。
頼んだお茶がテーブルに並べられ、それには手を付けずにディーンは言いにくそうに何かを逡巡している。そして目を伏せたまま「ごめん」と謝ってきた。
(ああ、やっぱりだ。)
私は予想が当たっていたと確信した。
「この前、足を怪我したという君を寮に送って行ったとき・・・。」
ディーンは一瞬言葉に詰まったが、顔を少し上げ私の目をまっすぐ見た。
「君とクリフ殿の間を疑うような事を言って済まなかった。たわいない噂を信じるような事をして恥ずかしいと思う。・・・・それから・・・。」
彼はまた私から目を逸らし、もう一度深く頭を下げた。
「私は、確かに一時期リリー嬢を好ましく思った時もあった。君という婚約者が居るのに、それは本当に申し訳なかったと思う・・・。すまなかった。」
なぜか心がズキンと痛んだ。
ああ、アリアナだ。アリアナが傷ついているんだ。
(一時期好ましくねぇ・・・。はっきり、リリーが好きだって言えば良いのに・・・。まっ、そういう訳にもいかないか。曲がりなりにも婚約者の前だもんね。)
ゲームと違ってアリアナは今、悪役令嬢やってない。だからディーンはアリアナの非をあげつらう事は出来ない。だからこそ、ディーンには誠実な態度を取って欲しいと思う。
私はディーンの次の言葉を待った。今回の事件で、ディーンは光の魔術を使ったリリーを素晴らしいと言っていた。あの聖なる光を放つリリーを見た時の感動。
彼女は美しく、そして神々しかった。誰もが心を奪われたに違いないのだ。アリアナだって・・・、敵わないって思い知っただろう。
(さぁ、来い!婚約解消!。アリアナ、泣かないでよ。私が付いてるから、頑張って受けて立つのよ。)
でも、しばらく待ったがディーンは何も言わない。
(ん?)
「あの、ディーン様お話をどうぞ。」
「えっ?」
「お話があるんですよね。さぁ、どうぞ。」
「えっ、いや、話なら今終わったけど・・・。」
私と彼の間でしばらく沈黙が流れた。
「ええっ!お話は終わった!?。肝腎な事、仰ってないでしょう?!。」
「えっ!?。いや、本当にこれだけだけど・・・。」
ディーンは顎に拳をあてて、何か言い忘れたことがあるだろうかと考えてるようだ。
「あれ?あれれっ?。」
私は呆気に取られて、公爵令嬢らしからぬ間抜けな声を出してしまった。
「えっと、なあんだ・・・それだけなんだ・・・。」
なんだか気が抜けてしまった。
明日は両親や屋敷の使用人達へのお土産を買うために、兄と城下町に行く予定である。少しでも持って帰るものをまとめておきたかった。まぁ、ほとんど勉強道具なんだけど。
玄関のチャイムが鳴り、メイドが私を呼びに来た。
(誰だろう?。)
ドアの向こうにはディーンが立っていた。
「こんにちは、ディーン様。何か御用でしょうか?」
私は先日の事件以来、ディーンに会っても恐れたり慌てる気持ちが無くなっていた。
(何故、変わったのだろう・・・。多分、ディーンは、皆と一緒に私を助けに来てくれたから・・・。それでもう充分って感じ?。)
そう、もう充分だって気持ちが一番近いかもしれない。
「アリアナ、良かったら少し散歩しないかい?」
「・・・。」
「少し、話したい事があるんだ。私は明日、領に戻るから・・・。」
「はい・・・。」
つまり今日しか話せない、そして今日話さなければいけない、そういう話があると言う事だ。
兄のクラークは日が傾いてから出かける事に不満そうだったが、私はなんとか彼をなだめた。
(ディーンの話・・・きっとあれだ。)
私は彼がある決心をしたのではないかと思っていた。
縁起の悪い裏庭を横目に見て、私達は中庭の方へ歩いて行った。そろそろ夕暮れも近く、薄暗くなってきていたが、ここはカフェも多く、街灯も多く設置されている。そして、この時刻の中庭は上級生のカップルも多いのだ。
そんな中。ディーンは私を端の方にある小さな山小屋風のカフェに誘った。
頼んだお茶がテーブルに並べられ、それには手を付けずにディーンは言いにくそうに何かを逡巡している。そして目を伏せたまま「ごめん」と謝ってきた。
(ああ、やっぱりだ。)
私は予想が当たっていたと確信した。
「この前、足を怪我したという君を寮に送って行ったとき・・・。」
ディーンは一瞬言葉に詰まったが、顔を少し上げ私の目をまっすぐ見た。
「君とクリフ殿の間を疑うような事を言って済まなかった。たわいない噂を信じるような事をして恥ずかしいと思う。・・・・それから・・・。」
彼はまた私から目を逸らし、もう一度深く頭を下げた。
「私は、確かに一時期リリー嬢を好ましく思った時もあった。君という婚約者が居るのに、それは本当に申し訳なかったと思う・・・。すまなかった。」
なぜか心がズキンと痛んだ。
ああ、アリアナだ。アリアナが傷ついているんだ。
(一時期好ましくねぇ・・・。はっきり、リリーが好きだって言えば良いのに・・・。まっ、そういう訳にもいかないか。曲がりなりにも婚約者の前だもんね。)
ゲームと違ってアリアナは今、悪役令嬢やってない。だからディーンはアリアナの非をあげつらう事は出来ない。だからこそ、ディーンには誠実な態度を取って欲しいと思う。
私はディーンの次の言葉を待った。今回の事件で、ディーンは光の魔術を使ったリリーを素晴らしいと言っていた。あの聖なる光を放つリリーを見た時の感動。
彼女は美しく、そして神々しかった。誰もが心を奪われたに違いないのだ。アリアナだって・・・、敵わないって思い知っただろう。
(さぁ、来い!婚約解消!。アリアナ、泣かないでよ。私が付いてるから、頑張って受けて立つのよ。)
でも、しばらく待ったがディーンは何も言わない。
(ん?)
「あの、ディーン様お話をどうぞ。」
「えっ?」
「お話があるんですよね。さぁ、どうぞ。」
「えっ、いや、話なら今終わったけど・・・。」
私と彼の間でしばらく沈黙が流れた。
「ええっ!お話は終わった!?。肝腎な事、仰ってないでしょう?!。」
「えっ!?。いや、本当にこれだけだけど・・・。」
ディーンは顎に拳をあてて、何か言い忘れたことがあるだろうかと考えてるようだ。
「あれ?あれれっ?。」
私は呆気に取られて、公爵令嬢らしからぬ間抜けな声を出してしまった。
「えっと、なあんだ・・・それだけなんだ・・・。」
なんだか気が抜けてしまった。
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