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第2章 悪役令嬢は巻き込まれたくない
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そう思うと、なんだか不安になってきて、クリフの顔を上目遣いで伺うと、彼は予想に反して笑顔だった。
「やっぱり知ってたんだ。」
「えっ?」
「俺が前皇帝の子だって言った時、君は全然驚かなかっただろう?」
「えっ、あっ!」
(うかつ・・・。)
「あの時、話を聞いていた?。それとも、その前から知ってたのかな・・・、ふふ、コールリッジ公爵家の力を考えれば不思議でもないか・・・。」
クリフはそう言って、紅茶を一口飲んだ。
「俺の事を一番に思ってくれてる人たちは、俺の両親だ。でも・・・、俺は自分の両親が本当の親ではない事を、昔から知っていた。」
「えっ?」
「デイビットみたいにね、いらない事を言ってくる奴は他にもいたからね・・・。それに、両親は俺の親にしては、年齢が上過ぎるんだ。嵐の夜に、両親がどこかから連れてきた子供だっていう奴もいた。捨てられた平民の子を拾ってきたんじゃないかって・・・・。でも、俺はそれを両親に確かめる事は出来なかった。聞いたら、関係が壊れるような気がして怖かった。あの人たちは俺に、本当に良くしてくれていたから・・・。」
クリフの声が辛そうにかすれる。彼も両親を大事に思っているのだ。
「俺が、あの人たちの本当の子供では無くて、拾われた平民の子なのならば、俺は侯爵家を継ぐべきではないと思っていた。」
(そうか・・・だからクリフはいつもなんとなく冷めていたんだ。何かを諦めた様子で、侯爵家を継ぐ気はないとか言ってたんだな。)
「だから、デイビッドに俺が前皇帝と、亡くなった姉の・・・姉だと聞かされていた人との子供だったって聞いて、心底驚いた。あいつは、姉は身ごもっていた時に前皇帝に捨てられて、悲しみの中で亡くなったと、そう言ったんだ。」
クリフは両手をぎゅっと握りしめた。
「俺は、うかつにもその話を信じてしまった。色々と馬鹿な事を考えて、前皇帝だけでなく、皇族全部を憎むところだった。俺を育ててくれた、両親まで裏切る所だったかもしれない。でも、君の言葉を聞いて・・・俺は、俺の事を一番に思ってくれている両親が、俺に嘘をついているのは何故だろうって思うようになった。本当に母が前皇帝に捨てられたからだろうか?。それとも他に理由があったのだろうか?って。だから領に戻って、その思いをぶつけてみる事にしたんだ。」
(なるほど、・・・そうだったんだ・・・。)
クリフの両親・・・実際には祖父母にあたるのだが・・・、ウォーレン侯爵夫妻は驚きながらも、クリフに全てを語ってくれたそうだ。
前皇帝・・・アイヴァン・レイヴンズクロフトがウォーレン侯爵の一人娘、ラナリー・ウォーレンに出会ったのは皇帝の私有地にある屋敷でのパーティーの時だった。
アイヴァンは正妃を早くに亡くしていたので、新正妃を望む声は多かったが、なかなか彼の心に沿う女性はいなかった。そんな中、二人は出会った。そして恋に落ちた。
親子程年が離れていたが、少しずつ愛を育み、やがて前皇帝はラナリーを正妃に望むようになった。
「でも、母は若くして病に襲われた・・・、医者に長くは生きられないと言われたんだ・・・。」
それでもアイヴァンは短い間でも構わないと、ラナリーを正妃にしようとしたが、ラナリーがそれを拒んだ。自分では皇国を治める皇帝を支える事はできない、むしろ邪魔になってしまうと考えたそうだ。
泣く泣く別れを受け入れた二人だったが、その時既に、ラナリーのお腹にはクリフが居たのだ。
「俺を産む事は、母の命をさらに縮める事になる。それでも母は周りの反対を押し切って俺を産んでくれたんだ。」
クリフを出産し、ほどなくしてラナリーは亡くなった。そしてそのすぐ後に、アイヴァンは皇帝位を息子に譲り、私有地の屋敷に住居を映した。
今でも彼はそこで静かに暮らしている。ラナリーの死は、それだけアイヴァン
を打ちのめす出来事だったのだ。
そして、ラナリーもアイヴァンもクリフが皇位継承問題に巻き込まれる事を望まなかった。
「だから祖父母は、俺を息子として、ウォーレン侯爵家の跡取りとして育ててくれたんだ。俺は、実の息子で無いという事だけ周りから聞いてしまっていたから・・・ふふ、ほんとに馬鹿な事を考えていたな。あんな能無しのデイビットに侯爵家を継がせようと思ってたんだから。」
クリフは自嘲する様に笑う。
「俺は、両親・・・本当は祖父母だが、二人が大好きだから、二人の子供じゃないって聞いて、それが悲しくて拗ねていたんだ。ガキだよな。だから、彼らと血の繋がりがあった事が本当にうれしい。これからも本当の親だと思って接するつもりだ。二人もそれを望んでいるから。」
(ああ、本当にいい方達なんだ、ウォーレン侯爵夫妻って。)
「やっぱり知ってたんだ。」
「えっ?」
「俺が前皇帝の子だって言った時、君は全然驚かなかっただろう?」
「えっ、あっ!」
(うかつ・・・。)
「あの時、話を聞いていた?。それとも、その前から知ってたのかな・・・、ふふ、コールリッジ公爵家の力を考えれば不思議でもないか・・・。」
クリフはそう言って、紅茶を一口飲んだ。
「俺の事を一番に思ってくれてる人たちは、俺の両親だ。でも・・・、俺は自分の両親が本当の親ではない事を、昔から知っていた。」
「えっ?」
「デイビットみたいにね、いらない事を言ってくる奴は他にもいたからね・・・。それに、両親は俺の親にしては、年齢が上過ぎるんだ。嵐の夜に、両親がどこかから連れてきた子供だっていう奴もいた。捨てられた平民の子を拾ってきたんじゃないかって・・・・。でも、俺はそれを両親に確かめる事は出来なかった。聞いたら、関係が壊れるような気がして怖かった。あの人たちは俺に、本当に良くしてくれていたから・・・。」
クリフの声が辛そうにかすれる。彼も両親を大事に思っているのだ。
「俺が、あの人たちの本当の子供では無くて、拾われた平民の子なのならば、俺は侯爵家を継ぐべきではないと思っていた。」
(そうか・・・だからクリフはいつもなんとなく冷めていたんだ。何かを諦めた様子で、侯爵家を継ぐ気はないとか言ってたんだな。)
「だから、デイビッドに俺が前皇帝と、亡くなった姉の・・・姉だと聞かされていた人との子供だったって聞いて、心底驚いた。あいつは、姉は身ごもっていた時に前皇帝に捨てられて、悲しみの中で亡くなったと、そう言ったんだ。」
クリフは両手をぎゅっと握りしめた。
「俺は、うかつにもその話を信じてしまった。色々と馬鹿な事を考えて、前皇帝だけでなく、皇族全部を憎むところだった。俺を育ててくれた、両親まで裏切る所だったかもしれない。でも、君の言葉を聞いて・・・俺は、俺の事を一番に思ってくれている両親が、俺に嘘をついているのは何故だろうって思うようになった。本当に母が前皇帝に捨てられたからだろうか?。それとも他に理由があったのだろうか?って。だから領に戻って、その思いをぶつけてみる事にしたんだ。」
(なるほど、・・・そうだったんだ・・・。)
クリフの両親・・・実際には祖父母にあたるのだが・・・、ウォーレン侯爵夫妻は驚きながらも、クリフに全てを語ってくれたそうだ。
前皇帝・・・アイヴァン・レイヴンズクロフトがウォーレン侯爵の一人娘、ラナリー・ウォーレンに出会ったのは皇帝の私有地にある屋敷でのパーティーの時だった。
アイヴァンは正妃を早くに亡くしていたので、新正妃を望む声は多かったが、なかなか彼の心に沿う女性はいなかった。そんな中、二人は出会った。そして恋に落ちた。
親子程年が離れていたが、少しずつ愛を育み、やがて前皇帝はラナリーを正妃に望むようになった。
「でも、母は若くして病に襲われた・・・、医者に長くは生きられないと言われたんだ・・・。」
それでもアイヴァンは短い間でも構わないと、ラナリーを正妃にしようとしたが、ラナリーがそれを拒んだ。自分では皇国を治める皇帝を支える事はできない、むしろ邪魔になってしまうと考えたそうだ。
泣く泣く別れを受け入れた二人だったが、その時既に、ラナリーのお腹にはクリフが居たのだ。
「俺を産む事は、母の命をさらに縮める事になる。それでも母は周りの反対を押し切って俺を産んでくれたんだ。」
クリフを出産し、ほどなくしてラナリーは亡くなった。そしてそのすぐ後に、アイヴァンは皇帝位を息子に譲り、私有地の屋敷に住居を映した。
今でも彼はそこで静かに暮らしている。ラナリーの死は、それだけアイヴァン
を打ちのめす出来事だったのだ。
そして、ラナリーもアイヴァンもクリフが皇位継承問題に巻き込まれる事を望まなかった。
「だから祖父母は、俺を息子として、ウォーレン侯爵家の跡取りとして育ててくれたんだ。俺は、実の息子で無いという事だけ周りから聞いてしまっていたから・・・ふふ、ほんとに馬鹿な事を考えていたな。あんな能無しのデイビットに侯爵家を継がせようと思ってたんだから。」
クリフは自嘲する様に笑う。
「俺は、両親・・・本当は祖父母だが、二人が大好きだから、二人の子供じゃないって聞いて、それが悲しくて拗ねていたんだ。ガキだよな。だから、彼らと血の繋がりがあった事が本当にうれしい。これからも本当の親だと思って接するつもりだ。二人もそれを望んでいるから。」
(ああ、本当にいい方達なんだ、ウォーレン侯爵夫妻って。)
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