モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第2章 悪役令嬢は巻き込まれたくない

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クラークは基本、アリアナの意見には反対しない。リリーは感激して、頬を染めて目を潤ませている。

ああ、可愛いっ!

私がヒロインのビジュアルに酔っていると突然、


「アリアナ様っ!わたしくしも予定はございません!。」

「グ、グローシア??。」

「わたくしも、夏休みの予定はございませんわ!。」

「え?、あの、・・・領には戻らないの?。」

「はい、戻りませんっ。」


鼻息荒く、こちらをぎらぎらとした目で見つめている。こ、これは・・・


「あ・・・、で、ではグローシアも私達の馬車で一緒に行きますか?。」

「はい、喜んでっ!。アリアナ様をお守りするのが、わたくしの役割でありますから。」


目をいっそう輝かせて騎士の礼をする。


(う~ん、娘がこんな感じになってしまって、ボルネス侯爵は良いのだろうか?)


なんだかちょっと心配になる。それにしても最初会った時は、典型的な鼻持ちならない貴族のお嬢様だったのに、グローシアはすっかり変わった。今はリリーの事もイジメてないし、むしろ仲良くしている。


(何せ、騎士だもんね、。あはは・・・)


ミリアがグローシアの様子を見て、むうっと口を尖らせた。


「私達も一度実家に戻ってから、すぐにアリアナ様の元へ参りますわ!。ええ、すぐに!。」

「は、はい、待ってますね、ミリア。」


ミリアはなにかとグローシアに対抗心を持っているようだ。


「僕も行っても良いのかなぁ・・・?」


ノエルが恐る恐る聞いてくる。彼は魔力が弱くて私の捜索に加われなかったから、最近ちょっと遠慮気味なのだ。


「もちろん!ぜひノエル様もいらしてください。クリフ様も一緒に!。」

「ありがとう!アリアナ嬢。でも・・・クリフはどうだろう?あいつ、元気になってるかな?。」


ノエルは何も言わずに実家に帰ってしまった彼が心配なのだ。私も昨日クリフに会って無かったら、同じように不安を感じていただろう。でも・・・、


「大丈夫!。クリフ様はそんなヤワな方ではありませんわ。きっと元気になってます。」


そう言って微笑むとノエルはちょっと顔を赤くして、


「そ、そっか・・・。アリアナ嬢がそう言うなら・・・、うん、きっとそうだよね。」


なんだかどぎまぎしながら、慌ててお茶を飲んだ。その様子を見て、ミリアが意味ありげに笑っていたけど、どうしたんだろう?


(でも、そう、クリフはもう大丈夫なんだ。)


彼は決して平坦では無い自分の運命を乗り越えて、新しい人生を歩み始めた。私は昨日のクリフとの会話を思い出していた。








昨日、皆が帰った後、寮を訪ねてきたのはクリフだった。


「クリフ様・・・。」


突然現れたクリフに、私は驚いてしまい、名前を呼んだまま呆然としてしまった。そんな私に彼は、ちょっとはにかむ様に笑ってから、


「入っても良いかな?」


そう聞いた。


「ど、どうぞ。こちらへ。」

「遅い時間にごめん。」


リビングでお茶を出して貰った後、頼んでメイドには席を外して貰った。兄は最後まで私と居ると粘ったが、自室に引っ込んでもらった。もしかしたら、ドアの前で聞き耳を立てているかもしれないが・・・。

クリフはリビングに入っても椅子にも座らずに、立ったままだ。そして落ち着いたころ、私にむかってゆっくり頭を下げた。


「君が、デイビットのせいで誘拐された事を聞いた。」


そして苦しそうな声で言った。


「巻き込んでしまって、すまない。」

「ク、クリフ様、頭を上げてください。クリフ様のせいではないです。それにあの、私は全然無事でしたから。」

「俺が、あんな奴の言葉を真に受けて、馬鹿な事を考えていたからだ。俺のせいだよ。本当にごめん。」


クリフがまた頭を下げたので、私は困ってしまった。


「とりあえず座りましょう。メイドが美味しいお茶を入れてくれましたから。」


しばらくは黙ったまま、お茶をすすりながら、ちらちらとクリフの様子を伺っていたのだが、これはいったいどういう事だろう?


(なんだか、前よりもクリフの周りの空気が柔らかい気がする・・・。)


前に彼から感じた、何かを諦めているような空虚さが無くなってる気がするのだ。


(それに、以前より益々美形度が増したというか、見ているだけで眼福というか、お茶飲んでるだけでも絵になる・・・いや、いや、そんな事考えてる場合じゃ・・・。)


私はよからぬ妄想を振り切って、思い切ってクリフに切り出した。


「そういえば、クリフ様はどうして急に実家に帰ってしまったのですか?。皆心配していますよ。」

「ああ・・・、実はその事を話に来たんだ。君に。」

「はい?。」

「この間、俺に言ってくれただろう?俺の事を思ってくれてる人の心を考えろって。」

「あ、はい、そうでしたね。」

(なんか、偉そうな事言っちゃった気がするわ。でもそれがどうしたんだろう?。)

「君にそう言われて、考えた。俺の事を一番思ってくれる人は誰なんだろうってね。だから家に帰ったんだ。」

「は、はあ・・・。」

「で、父と母に聞いてみた。俺が本当に前皇帝の隠し子なのかって。」

「・・・。」

(そっか、育ての親である、ウォーレン侯爵に確かめに行ったんだ・・・。ストーリーとは随分違ってるけど、それだけクリフが冷静になれたって事なんだろうか・・・。でも、両親とどんな話になったんだろう?。私の言った事が原因で余計こじれたりしてないだろうか?。)
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