モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第2章 悪役令嬢は巻き込まれたくない

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その後、寮に戻る事が出来た私は、過保護すぎる兄にベッドに無理やり寝かされ、医者を呼ばれた。


「お腹がすきました。」


そう言うと、ベッドの上にテーブルをしつらえて、消化が良くかつ見栄えも味も良い料理が大量に並べられた。

次の日からは先生方や警察省の人から、聴取の嵐。私はクリフの事は伏せて、なるべく正直に説明した。おかげであと4日で夏休みだというのに、私は3日間学校を休まされたのだ。

聴取も終わりその日の放課後、ミリア達やリリーを寮の部屋に招待した。

ディーンとそして何故かグローシアも兄が呼んで、一緒にリビングルームの大きなテーブルを囲んでいる。テーブルの上にはグローシアが持ってきてくれた外国の美味しそうなケーキや焼き菓子が並んでいた。


「皆様、今回はありがとうございます。皆様のおかげで、危うい所を助けられました。心からお礼を申し上げます。」


私は深々と頭を下げた。


「ほんとに皆のおかげだ。アリアナにもしもの事があったらと思うと、僕は・・・僕は・・・。」


クラークは涙ぐんで、その先が言えないようだった。あの事件以来、彼は毎日この調子なのだ。妹溺愛過ぎてちょっと怖い・・・。

でも、私の捜索に生徒である皆が加われたのは、兄のおかげだった。先生や憲兵には反対されたらしいのだが、兄が公爵家の権力で押し切ったのだ。

そして分かれずにグループで行動する事を約束に、私を探すのを許されたらしい。これは皆の魔力が大人並みに強く、魔術に長けている事も考慮されたようだ。おかげで魔力の少ないノエルは参加できなかったらしいが・・・。


「それにしても、私が居た場所が良く分かりましたね。もっと時間がかかると思っていました。」


「グローシアですわ。」


ミリアが少し悔し気に言った。


「グローシアのおかげです。」


なんとあの日の四阿の所で、例によってグローシアは私を隠れてストーカー並みに見守っていたらしいのだ。

グローシアの方に目をやると、彼女は興奮したように頬を染め、小鼻を膨らませて騎士の様に礼をした。

私がイーサンに眠らされた時、グローシアはとっさに駆けつけようとしたらしい。だが、イーサンは私を担ぎあげると直ぐに姿隠し魔術を使って姿を消した。


「その場でお助けできなかったのは、痛恨の極みです。申し訳ありません。」


グローシアがまた土下座をしようとしたので、私は慌てて止めさせた。

私を追う事が出来なくなったグローシアは、急いで兄やミリアにその事を知らせてくれた。だから、捜索を早く始める事ができたのだ。その上、彼女はイーサンと一緒に居たデイビットを再び見つけ、ずっと見張っていた。


「アリアナ様をさらった者と、また接触するかもしれないと思ったのです。」


グローシアの推測は当たった。夜の8時も過ぎて、デイビットは今度は夜の学校の空き教室に向かった。そしてイーサンはそこで待っていた。


「グローシア嬢だけじゃ夜の追跡は危険だからね。僕も付いて行ったんだ。」


クラークが言った。


(そっか、兄さまは姿隠しの魔術が使えるしね。)


「イーサンとデイビットが分かれてから、イーサンを追跡しょうとしたのだけど、彼は裏庭辺りで姿を消してしまった。でもデイビットとの話の中で、アリアナを城下町のゲド地区に連れて行ったと言う話が出ていたんだ。だから急いで先生方や憲兵長に知らせた後、僕らも集まって捜索に加わったのさ。」


「そういう事だったのですか・・・。」


私は改めて、グローシアに礼を言った。彼女は「主を守るのは騎士の務めです。」と言って、再び騎士の礼をした。

なんか色々間違ってる気がするけど・・・。

ミリアが急に「んんっ」と咳払いをし、


「それで、みなさんでゲド地区を捜索中に、リリーが建物の外に落ちていたアリアナ様の髪飾りを見つけたのです。」


(あ、あの髪飾り・・・。)


「きっとこの建物に捕らわれているに違いないと思いまして、少々荒っぽい方法でしたが、壁を壊させて頂きました。」


「えっ!?あの壁の大穴!ミリーが空けたのですか?」


「はい、土魔術で少々。」


私はあんぐりと口を開けた。


「驚いたわ、ミリーの魔力って凄いのね・・・。」


「その気になれば、あれぐらいの建物でしたら、一瞬で瓦礫に変えて見せますわ。」


ミリアは頬を少し赤らめ、冗談とも本気ともつかぬ口調でそう言った。


(これは、確かに大人以上だわ。)


ジョージアやレティシアの魔術も、イーサンには通用しなかったとはいえ強かった。なるほど、クラークが権力で押し切ったとは言え、皆が捜索に加われたわけだ・・・。


「それにしても、闇の魔術が出てくるとは思いませんでしたわ・・・。」


レティシアが眉を潜めながら、恐ろし気に両手で頬を覆った。


「ああ、学園の先生方や憲兵長も、魔術省や警察省に連絡するって言ってたよ。50年以上ぶりだってさ、闇の魔術の持ち主を発見したのは。恐らく、皇帝陛下にも報告が上ると思う。」


兄の顔も真剣だ。


「あの時はディーン君とリリー嬢が居たから助かった。僕達だけじゃ太刀打ち出来なかったよ。ありがとう。」


皆がうんうんと頷く中、ディーンは首を振って、


「いや、私は防ぐので精一杯だった。素晴らしかったのはリリー嬢だ。」


「いえ私は・・・!私はただ、必死だっただけで・・・。」


「私も、リリーは素晴らしかったと思いますわ。ディーンとクラーク兄さまの間で、光魔術を放って居たリリー。なんだか神々しかったですよ。」


私がそう言うと、リリーは両手を顔の前で振りながら、真っ赤になった。


「実は、光の魔力を持っていると言われましたが、自分では自覚が無かったものですから・・・。あの時初めて使えたのです。アリアナ様をお助けしたくて・・・。皆様のお役に立てたのなら、本当に幸せです。」


(か、可愛い~っ!)


照れながら、うつむくヒロインは、もう可愛さの極値ですよ!

みんな、そんなリリーを微笑ましく見ている。


(あ~、こりゃもう、ディーンも絶対イチコロだわね。)


私は若干、乾いた笑みを浮かべた。

ちなみに、ジョージアの稲妻で、焦げながら感電した狐目と髭面は、憲兵に運ばれて牢屋に入れられた。公爵令嬢を誘拐したのだ、多分、外に出られるのはおじいさんになってからだろう。


(私の事ツルペタって言った罰だね。ざまぁみろ!)


乙女の心をえぐった罪は重いのだ。
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