モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
上 下
36 / 284
第2章 悪役令嬢は巻き込まれたくない

11

しおりを挟む
このまま中に居たら、いずれ見つかってしまう。かといって、四阿の何処から出ても隠れる所は無いし・・・。

(こうなったら、二人が入ってきた瞬間に横から出て外壁に隠れるしか・・・。)

私はしゃがみ込んで、左側の出口のベンチの陰ギリギリに身を隠した。二人が入ってくる瞬間に外にでて隠れれば、見つからないようにできるかも。

「こんな裏庭の奥に来るのは、俺たちか、この間のガキぐらいさ。」

話し声と足音はどんどん近づいてくる。私は息をひそめた。そして、彼らが四阿に入って来たであろう瞬間に、私はしゃがんだままサッと外に出て、四阿の壁に貼りついた。これで覗きこまれない限り、見つかりはしないとだろう。

しかし、彼らがどこかに行かない限り、私は動けそうも無かった。

(うう、お願いだからこっち見たりしないでよ。)

じっと動かず、必死で息をひそめた。彼らは四阿のベンチに座ったようだ。

「おい、ほんとにやってくれるんだろうな?」

「なんのことです?」

「とぼけんなよ!お前らが皇太子の暗殺を・・・」

「しっ!声が大きいと言ったでしょう!?こういう話は校内でする事では無いですよ。それに、俺は単なる繋ぎだって言ったでしょう?紹介はしますけどね。俺は手は出さないですよ。」

皇太子の暗殺・・・その言葉を聞いて私の心臓は鼓動を速めた。

(やっぱり、そういう流れになってるんだ。それにしても、もう一人の話し相手は誰だろう?。闇の組織の一人?そんな奴がもう校内に入り込んでるって言うの?)

やっぱり、私達じゃ手に負えない、父に相談した方が良いのかも?と思った時だった。

「全く・・・あなたの声が大きすぎて、どうやらネズミが寄って来たようですよ。」

「何?」

(なにっ!?)

「盗み聞きが下手ですね。気配がバレバレだ。」

そう言って、立ち上がってこちらに向かってくる足音が聞こえた。

(や、ヤバい、ヤバい、ヤバい!)

私はとっさに立ち上がって逃げようと足を踏み出した。だが、

「えっ!?」

驚く速さで、私の前に回り込んできた人影に立ち止まるしかなかった。

(うそっ!早っ。)

ウザ声もやってきて、

「あっ!こ、こいつ、い、いや、聞いてたのか?今の話を!」

ウザい声で叫ぶ。

「誰?君は。」

私の目の前に立っているもう一人が、笑みを浮かべ、優しいともいえる声でそう聞いてくる。彼は私達と同じくらいの年の少年だった。漆黒の髪と濃い緑の瞳。ウザ声とは対照的に奇麗な顔をしている。目じりが少したれ気味で、笑うと優しげでさえあるのに、目の奥に油断のできない何かが潜んでいた。

私が黙っていると、ウザ声が

「や、やばいよ。こいつコールリッジの娘だぜっ。話を聞かれたとなったら・・・。」

「コールリッジ?へぇ、大貴族様じゃないか。」

少年の顔から笑みが消える。彼の目に一瞬凶暴な感情が見えた気がして、私は勝手に身体が震えてしまった。

(こいつ、ヤバい・・・)

学園の制服を着ているから、ここの生徒なんだろうけど、彼の周りに漂う雰囲気はどこか異質だった。この学園によく居る、ぽやぽやした貴族の坊ちゃんとは違う。剥き身の刃物を見る時のような、ヒリヒリした感覚を受けるのだ。

「あなた・・・誰?本当にここの生徒なの・・・?」

少年の表情は変わらない。

「お、おい、どうすんだよ!何とかしろよ。金払ってんだろ!」

(あ~、うるっさい、ウザ声!)

こっちは緊張で、喉が貼りついているというのに!

「とりあえず、眠ってもらおうかな?」

冷たい、感情の無い声だった。全身に鳥肌が走る。

(殺される!)

震える足を手で押さえて、私は走りだそうとした。でも、

「・・・あっ・・」

身体の向きを変えた瞬間、目の前が暗転した。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

処理中です...