モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第2章 悪役令嬢は巻き込まれたくない

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「アリアナ、何をしてるんだい?」

(そ、空耳・・・であって欲しい。)

私は声が聞こえた方へ、恐る恐る視線を向けた。

そこには顔はにこやかだが、明らかに冷たい空気をまとったディーンが立っていた。

「ディ、ディーン・・・様?」

(えっ?なんか怒ってる?)

そして、私はまだクリフの腕を両手で掴んでいた事に気付いて、慌てて手を離した。

(あっ、余計やましそうに見えたかも!?)

ど、どうしよう?と私が青い顔でアタフタしていると、クリフが目の端を拭いながら、ディーンに顔を向けた。笑いすぎて涙が出ていたのだ。

「やぁ、ディーン殿。初めまして、かな?」

「君は?」

「俺は、クリフ・ウォーレン。」

気のせいだろうか?心なしかディーンの周りの温度がさらに下がった気がした。

「随分、アリアナと仲が良いようだね。」

「アリアナ嬢とはクラスが一緒だからね。良い友人だと思っているよ。」

「ピクニックの時も、一緒に居たようだ。」

「彼女の友人と、俺の友人が双子なんだ。だから、一緒にいる事も多くなるさ。」

私は二人のやりとりに入りこめず、ただ焦りながら聞いているしかない。それにしてもディーンはどうして、こんなに不機嫌そうなんだろう?正直どう対処していいか分からず、困ってしまった。

そんな様子の私を見て、クリフは何を思ったのか、ふっと溜息をついて、

「誤解しないでくれ。先ほど彼女が足をくじいたので、俺は腕を貸していただけだ。」

(えっ?)

クリフがディーンに分からない様に、私にめくばせする。あっそうか、困っている私を見て、話を作ってくれたのだ。

「そ、そうなのです。先ほど裏庭の方でつまづいてしまって・・・。」

「その割には楽しそうに笑い合ってたようだけど。」

(ん?なんかやたら絡んでくるわね・・・。)

「クラスでの面白い話を思い出していただけさ。そんなに気にする事でもないだろう?」

クリフはあくまで冷静だ。

「アリアナ。」

ディーンが私の方へ手を伸ばした。

(な、何?!)
「足をくじいたのなら、私が寮まで送って行こう、手を。」

「えっ?」

そっか、まがりなりにも婚約者だもんね。でもディーンはアリアナの事、好きじゃないんだし・・・。

「いえ、大丈夫です、一人で帰れますわ。」

そう言うと、ディーンの顔に貼りついていた笑みが消えた。なんで?

「私の手にはつかまりたくない?」

「えっ?いえいえ、そういう訳では。」

(どういう、いちゃもんつけてくるの?!あなたの方が、アリアナと一緒に居るの嫌なんでしょう!?)

「アリアナ嬢、ディーン殿は君の事を色々と心配しているようだ。送ってもらうと良い。」

クリフが気まずい雰囲気を追いやるように微笑んで、

「じゃ、また教室で。」

そう言って、軽く手を上げて中庭のカフェの方へ歩いて行ってしまった。

(え~~~~~!?)

ディーンと二人きりって言うのも普通に気まずい。どうすれば?と思っていると、ディーンが黙って私の方に手を差し出した。

「・・・お借りします。」

私はディーンの手に捕まって、寮の方へ向かった。

(足が痛いフリしなきゃいけないのよね。さっきは、そう言うのが正解だったんだろうけど・・・。)

今の状況を考えるとクリフの事を恨みたくなる。しばらくはお互い沈黙のまま歩いていたのだが、寮の建物が見えてきたところでディーンが突然歩みを止めた。

(ん?)

「ディーン様?」

ディーンは何かためらっているようだったが、私の方に身体を向けた。でも目線は決まずそうに横に逸らせたままだ。

「・・・あまり、軽率な行動はしないようにした方が良い・・・。」

「はい?」

(えっ?足くじいたのが、嘘だってばれた?)

「ど、ど、どういう事でしょう?」

「君が・・・、クリフ殿を追いかけまわしているって噂が流れている。」

私は、一気に頭に血液が集まってくるのが分かった。ぜったい、今真っ赤になってる!

「お、追いかけまわしてるなんて・・・、!そんなの、ただの誤解ですわっ。」

そうよ!私はただ、クリフを一人にしないように皆で協力して頑張ってただけなのに!

「あれはですねぇ、クリフ様が悩んでらっしゃるようでしたので、皆で彼を一人にしないようにですねぇ・・・。」

私が必死に説明しようとすると、

「ああ、リリー嬢にそういう話は聞いたよ。でも、さっきの君とクリフ殿の様子を見ると、噂もまるきりデタラメでは無い様に思えてくる・・・。」

ディーンのこのセリフを聞いて、私は再び、別の意味で頭に血が上って来るのを感じだ。
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