モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第2章 悪役令嬢は巻き込まれたくない

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「クリフの奴、どうしたんだろう?」

3日後の放課後、私達はノエルを含めて中庭のカフェで集まった。話題にあがるのはやはりクリフの事だ。

「ここんとこ、授業が終わったら、誰とも喋らずに帰ってしまうんだ。それにいつも一緒に昼食を食べるのに、最近は一人でどこかへ行ってしまう。朝会っても元気がないし、授業中もずっとぼんやりしていて・・・。」

ノエルとクリフは小さい頃からの幼馴染らしい。領地が隣で家も近かったので、家族ぐるみで仲が良いとのことだ

「確かに、最近はいつものクリフ様と違いますわ。いつもそんなに騒ぐ方ではございませんが、ご友人とは楽しそうにされてますのに・・・。」

ミリアも顔を曇らせる。レティシアも、

「私は今日、話しかけても無視されましたわ・・・私の声が小さかったからかもしれませんが・・・。」

「あら、私も無視されたわよ!声の問題じゃなくて、あっちの聞く気の問題よ。」

ジョージアとレティシアも彼とは子供頃からの付き合いだ。文句を言いながらも心配そうだ。正直、事情を知っている私としてはいたたまれない。

(あ~、事が事だけに、皆にクリフの事を話す訳にはいかないしなぁ・・・。)

皇太子暗殺計画の話なんて、おいそれと口には出せない。下手したら、こっちの身が危ない。

「そんなにご様子が違っていたのですか?。何か、お悩みがあるのでしょうか?誰か、何かクリフ様の事で心当たりは・・・?」

(ぐっ・・・)

リリーの言葉に、ますます私はいたたまれなくなる。

リリーはクラスが違うから、彼の様子を直接には見ていないのだ。

「先週まではいつも通りだったよ。土曜日も一緒に遊んだんだ・・・。あっ、でもあいつ、次の日の日曜日は朝早くから部屋に居なかったなぁ。乗馬に誘おうと思って訪ねたんだけど、朝食も食べずに出かけたらしくて、昼間も居なかったよ。」

「じゃあ、きっとその時に何かあったのですわ。」

(ええ、あったのよ、ミリア・・・。)

私は心の中でうなづいていた。

「アリアナ様はどう思われます?」

突然問われて、私は飲みかけていた紅茶が気管に入りそうになった。

「う、ぐ、あ、すみません。・・・わ、わたくしには分かりませんわ。」

皆は溜息と共に「そうですよねぇ」という表情になる。

「何か悩んでるなら、言ってくれれば良いのに。全く友達がいが無い奴だよ。」

「話せない事情があるのかもしれないわよ。それにクリフ様って昔からそういうところあるじゃない。」

「ジョーの言うとおりね。クリフ様って普段から自分の事はあまりお話にならないわ・・・。それに、いつもノエルの方がクリフ様に悩みを相談してばかりじゃない。あなたに相談するのは頼りないって思ってるんじゃないの?」

ミリアの言葉にノエルは落ち込んだ。ズンっと音が聞こえるようだ。レティシアそれを見ておろおろとしている。

(う~ん、この4人の力関係が良く分かるわ。)

私はリリーと顔を見合わせ苦笑し、場を取りなそうと、4人に向かって聞いた。

「クリフ様って昔からあまり喋らない方でしたの?」

(2部の中では喋らないどころじゃ無かったのよねぇ・・・、いつも暗い表情で誰とも関わろうとはしない。まぁ、超絶美形で憂いがあるってんで、ゲームでは人気のキャラではあった。でもって、クリフがたまに見せる優しさが、ギャップ萌えだったのよね~。)

「そうですねぇ・・・無口という程ではありませんわ、ノエルとは良く話してましたし、たまに興味のある事に関しては、良くお話しされますわ。ただ、年の割に達観しているというか・・・、色々冷めているような感じがしましたわ。」

「どういう事?」

ミリアは思い出すように、あごに右手を添え、眉間にしわを寄せた。

「随分前・・・まだ子供の頃ですが、クリフ様から聞いたことがあるのです。『自分は侯爵位を継げなくても仕方ない』って仰ってましたわ。私が、『ウォーレン侯爵家ではお子様はクリフ様お一人じゃないですか』って言ったら、『従弟のデイビッドが継げばいい』って。あの時は冗談かとも思いましたが・・・。」

(従弟のデイビッドって、もしかしてあのウザ声のことか・・・。でも、なんで?。その頃は出生の秘密を知って無かったろうに・・・。)

「ちょっとひねくれてるって感じ?。器用で、なんでも出来るのに、本気でやろうとはしないのよねぇ。そういうとこは、あまり好きじゃないわ。私とチェスやった時も、勝っても特に喜ばないし、負けても全然悔しがらないし。」

ジョージアはムスッとした表情でケーキを頬張った。そんなジョーを見てレティシアはクスクス笑った。

「ジョーは負けたら、凄く悔しがってたものねぇ。そうですねぇ・・・、いつもクールで冷めている印象でしたが優しい所もありましたわ。使用人の子供に文字を教えたり、ノエル様が叱られている時に庇ってらしたり・・・。」

「えっ?なんか皆、僕よりクリフに詳しくない?」

親友は僕なのにと、ノエルが不安そうな顔をしたが、3人は我関せずだ。ミリアは眉間にしわを寄せたまま、

「いずれにせよ、簡単に人に頼る方ではございませんわ。悩みがあっても話してくれるかどうか・・・。今はそっとしておいた方が良いかもしれませんよ。」

(そっか、やっぱり面倒くさくて、難しいキャラなんだ。)

ゲームのプレイヤーも苦労したけど、周りの人間も苦労してたってわけだ。だから、少しずつ周りから人が離れていったのかもしれない。だとしたら・・・、

「わたくしは、クリフ様が何でお悩みにせよ、一人にしてはいけないと思いますの。」

皆が私に顔を向ける。

「彼の今の状態を考えると、悩み事を無理に聞いても教えては下さらないでしょう。でも、だからと言って放っておくのは良くないと思いますの。きっとクリフ様はもっと心を閉ざしてしまいますわ。だから、嫌がられるかもしれませんが、皆で話しかけましょう。そしてなるべく一緒に居るようにしませんか?。そうすれば、彼の心もほぐれてくるかもしれません。少なくとも、孤独ではありませんわ。」

名づけて、「みんなでヒロイン作戦」である。

(いや、分かってる。分かってるわよ、ネーミングセンスが無いことは!)

でも、ゲームの時のリリーの役割を皆で代わって出来ないかと考えたのだ。一人一人の力は弱くても、数があればなんとかなるかもしれない。それにつねに集団でいれば、あの最悪バッドエンドの状態にはならない・・・と思う、多分・・・。

「そう・・・、そうですわね、アリアナ様。私達で出来る事はそれぐらいかもしれません!」

「私もなるべく話しかけるようにするわ。」

「明日からは、お昼も誘ってみましょう。」

ミリア達も私に賛成してくれた。

「私は違うクラスなので、なかなかお手伝いできませんけど、放課後は皆さんと頑張りますわ。」

「じゃ、僕は寮にいる時はなるべくあいつと一緒にいるようにするよ。」

リリー、ノエルも協力してくれる。ほんとに良い子達だ。

(今はこれくらいしかできない・・・。これで少しは改善すれば良いんだけど。)
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