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第1章 悪役令嬢は目立ちたくない
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(それにしても・・・。)
さらさらのシルバーブロンドに、深い藍色の瞳、通った鼻筋に、薄めの唇。
(整ってるなぁ~。)
さすがメイン攻略キャラよね。ゲームでは一番と言っていいほど攻略しやすいキャラだけど、それだけヒロインにぴったりだという事だ。
ヒロインと並んだ姿は、お似合いと言うしかない。
ディーンの顔を見ながらそんなことを考えてると、彼ははスッと顔を横に向けた。
(いかん!見つめ過ぎたか!?ただでさえアリアナは嫌われてるのに、これ以上印象悪くしてどうすんのよ!?)
「す、すみません!お顔をじろじろ見るなんて、ご不快ですよね!?もうしません!」
「い、いや・・・そうじゃなくて。不快だから横を向いたのではない。」
ディーンは私以上に慌ててそう言った。心なしか耳の辺りが赤くなっている。
「その、そうだ!今日は見舞いだけで来たわけではなくて・・・。」
「はい?」
(何!?やっぱり何か文句を言いに来たの!?油断させといてそう来るの?)
思わず身構えた私に、ディーンは静かに頭を下げた。
(えっ?)
「・・・先日は、すまなかった・・・。」
(は?)
「前に学園で会った時・・・、君がリリー・ハート嬢と一緒にいた時だ。」
「あ!あああ、あの時の事ですか!?」
(ディーンが私がリリーと居る所を見て、イジメてるって怒った時よね。あの時は焦ったわ。)
「次の日、クラスでもリリー嬢にたしなめられた。君はリリー嬢を助けたのだってね?その・・・先入観で話も聞かず、君をただ責めてしまった。申し訳なかった。」
ディーンはそう言って私に向かってもう一度頭を下げた。
さらっさらのシルバーブランドが揺れる。
私はあまりの展開に、正直驚きを隠せない。
(おおおっ!?ディーンが謝って来たよ!ゲームじゃマジありえない光景だわ!)
「い、いえ!大丈夫です。もう気にしていませんわ。」
過去に先入観を与えるような行動をしていたアリアナも悪いんだしね。レティシアが言ってたように、以前はディーンと親しくしているご令嬢に意地悪していたのも本当だ。
(そうそう、そんな事はもういいからさ。さっさと円満婚約解消しましょうよ。お互いの幸せのために。・・・ん?)
もしかして、これって今がチャンスなんじゃない!?
今ならディーンも冷静に私の話を聞いてくれそうな気が・・・。
(ディーンはもともとアリアナを嫌ってたんだから、婚約したままでいるのは本意じゃないはず。今提案すれば、お互いwin winで事を勧められるんじゃないの?)
よし!そうとなったらと、私はディーンに渾身の微笑みを向けた。
「過ぎた事ですし、誤解がとけたのでしたら、それで大丈夫ですわ。それより・・・、あ、あのディーン様。私もディーン様にお話がありまして・・・。」
「ん?」
「あの、私達」
婚約を解消しませんか?
そう言いかけた時だった。
(え?うそ!、声が・・・)
まるで、誰かに口をふさがれたように、突然声が出なくなった。
それに、なんだか息が・・・。
「・・・ぐ・・・」
(く、苦しい・・・。)
息が吸えない・・・!?
「アリアナ!?どうしたんだ!顔色が真っ青だ。誰かっ!」
「アリアナ様っ!」
「アリアナっ!?」
ディーンの慌てた声に、メイド達や、自室に居た兄のクラークも飛び出してきたらしい。かすむ目に心配そうに私を見下ろす皆の顔が見える。
「・・・お、お兄様・・・。」
「アリアナ!大丈夫かっ?」
兄の顔を見ると、少し落ち着いてきた、息苦しさも薄れてくる。
「だ、大丈夫です・・・。」
なんとか身体を起こし、乱れた呼吸を少しずつ整えていく。
(うん・・・もう大丈夫そう・・・。)
「だ、大丈夫です・・・ちょっと疲れたのかもしれません。」
「アリアナは病み上がりなんだからね。今日は友人達が来て無理をしたんじゃないか?学園医に来て診て貰おう。」
「そこまでしなくても、大丈夫ですわ。」
「だめだ!また熱を出したらどうするんだ!」
クラークは問答無用で私を抱き上げた。
「そういう事だから、ディーン君。君はそろそろ退出してくれたまえ。アリアナを休ませたいのでね。」
どこまでもアリアナに甘いクラークはディーンに向かってきっぱりとそう言うと、さっさとアリアナの部屋へと向かう。
「お、お兄様っ?。ディーン様すみません、失礼いたします。ごきげんよう。」
私は兄に連れて行かれながら、どうにかディーンの機嫌を損ねないようにだけ気をつかった。
「アリアナ。おだい・・・。」
バタンッ!
お大事に。
きっとディーンはそう言ったのだろうけど、閉じられた扉のせいで、最後までは聞こえなかった。
私はその後、お兄様とメイド達に無理やりベッドに寝かされ、急いで呼ばれた学園医に診察してもらった。そして、異常はないとは言われたけど、心配性な兄と使用人に説得され、次の日も学校を休むことになった。
ベッドの中で、こっそり勉強しながら私は思い出していた。ディーンに婚約解消を申し出ようとして声が出なくなった時のことを。
そして気付いてしまった・・・。
(私の声を出せなくさせたのは、『アリアナ』だ。)
私になる前のアリアナは、私の中にしっかり残っていたのだ。
「どこかに消えてしまったのでは無かったのね・・・。」
私はベッドのサイドテーブルに勉強道具をそっと置いて、仰向けになって天井を見上げた。
アリアナは、本気でディーンが好きだった。子供っぽくて我儘なアリアナ。他の令嬢に意地悪ばかりしていた。
それでもディーンへの思いは本物だった。
「私の中に、アリアナはちゃんと残っている。私がディーンを好きかどうかは分からないけど・・・勝手に婚約解消しようとしてごめんね・・・。」
そっと胸に両手を重ね、心の中でアリアナに頭を下げた。
私の中で、アリアナが泣いているような気がした・・・。
さらさらのシルバーブロンドに、深い藍色の瞳、通った鼻筋に、薄めの唇。
(整ってるなぁ~。)
さすがメイン攻略キャラよね。ゲームでは一番と言っていいほど攻略しやすいキャラだけど、それだけヒロインにぴったりだという事だ。
ヒロインと並んだ姿は、お似合いと言うしかない。
ディーンの顔を見ながらそんなことを考えてると、彼ははスッと顔を横に向けた。
(いかん!見つめ過ぎたか!?ただでさえアリアナは嫌われてるのに、これ以上印象悪くしてどうすんのよ!?)
「す、すみません!お顔をじろじろ見るなんて、ご不快ですよね!?もうしません!」
「い、いや・・・そうじゃなくて。不快だから横を向いたのではない。」
ディーンは私以上に慌ててそう言った。心なしか耳の辺りが赤くなっている。
「その、そうだ!今日は見舞いだけで来たわけではなくて・・・。」
「はい?」
(何!?やっぱり何か文句を言いに来たの!?油断させといてそう来るの?)
思わず身構えた私に、ディーンは静かに頭を下げた。
(えっ?)
「・・・先日は、すまなかった・・・。」
(は?)
「前に学園で会った時・・・、君がリリー・ハート嬢と一緒にいた時だ。」
「あ!あああ、あの時の事ですか!?」
(ディーンが私がリリーと居る所を見て、イジメてるって怒った時よね。あの時は焦ったわ。)
「次の日、クラスでもリリー嬢にたしなめられた。君はリリー嬢を助けたのだってね?その・・・先入観で話も聞かず、君をただ責めてしまった。申し訳なかった。」
ディーンはそう言って私に向かってもう一度頭を下げた。
さらっさらのシルバーブランドが揺れる。
私はあまりの展開に、正直驚きを隠せない。
(おおおっ!?ディーンが謝って来たよ!ゲームじゃマジありえない光景だわ!)
「い、いえ!大丈夫です。もう気にしていませんわ。」
過去に先入観を与えるような行動をしていたアリアナも悪いんだしね。レティシアが言ってたように、以前はディーンと親しくしているご令嬢に意地悪していたのも本当だ。
(そうそう、そんな事はもういいからさ。さっさと円満婚約解消しましょうよ。お互いの幸せのために。・・・ん?)
もしかして、これって今がチャンスなんじゃない!?
今ならディーンも冷静に私の話を聞いてくれそうな気が・・・。
(ディーンはもともとアリアナを嫌ってたんだから、婚約したままでいるのは本意じゃないはず。今提案すれば、お互いwin winで事を勧められるんじゃないの?)
よし!そうとなったらと、私はディーンに渾身の微笑みを向けた。
「過ぎた事ですし、誤解がとけたのでしたら、それで大丈夫ですわ。それより・・・、あ、あのディーン様。私もディーン様にお話がありまして・・・。」
「ん?」
「あの、私達」
婚約を解消しませんか?
そう言いかけた時だった。
(え?うそ!、声が・・・)
まるで、誰かに口をふさがれたように、突然声が出なくなった。
それに、なんだか息が・・・。
「・・・ぐ・・・」
(く、苦しい・・・。)
息が吸えない・・・!?
「アリアナ!?どうしたんだ!顔色が真っ青だ。誰かっ!」
「アリアナ様っ!」
「アリアナっ!?」
ディーンの慌てた声に、メイド達や、自室に居た兄のクラークも飛び出してきたらしい。かすむ目に心配そうに私を見下ろす皆の顔が見える。
「・・・お、お兄様・・・。」
「アリアナ!大丈夫かっ?」
兄の顔を見ると、少し落ち着いてきた、息苦しさも薄れてくる。
「だ、大丈夫です・・・。」
なんとか身体を起こし、乱れた呼吸を少しずつ整えていく。
(うん・・・もう大丈夫そう・・・。)
「だ、大丈夫です・・・ちょっと疲れたのかもしれません。」
「アリアナは病み上がりなんだからね。今日は友人達が来て無理をしたんじゃないか?学園医に来て診て貰おう。」
「そこまでしなくても、大丈夫ですわ。」
「だめだ!また熱を出したらどうするんだ!」
クラークは問答無用で私を抱き上げた。
「そういう事だから、ディーン君。君はそろそろ退出してくれたまえ。アリアナを休ませたいのでね。」
どこまでもアリアナに甘いクラークはディーンに向かってきっぱりとそう言うと、さっさとアリアナの部屋へと向かう。
「お、お兄様っ?。ディーン様すみません、失礼いたします。ごきげんよう。」
私は兄に連れて行かれながら、どうにかディーンの機嫌を損ねないようにだけ気をつかった。
「アリアナ。おだい・・・。」
バタンッ!
お大事に。
きっとディーンはそう言ったのだろうけど、閉じられた扉のせいで、最後までは聞こえなかった。
私はその後、お兄様とメイド達に無理やりベッドに寝かされ、急いで呼ばれた学園医に診察してもらった。そして、異常はないとは言われたけど、心配性な兄と使用人に説得され、次の日も学校を休むことになった。
ベッドの中で、こっそり勉強しながら私は思い出していた。ディーンに婚約解消を申し出ようとして声が出なくなった時のことを。
そして気付いてしまった・・・。
(私の声を出せなくさせたのは、『アリアナ』だ。)
私になる前のアリアナは、私の中にしっかり残っていたのだ。
「どこかに消えてしまったのでは無かったのね・・・。」
私はベッドのサイドテーブルに勉強道具をそっと置いて、仰向けになって天井を見上げた。
アリアナは、本気でディーンが好きだった。子供っぽくて我儘なアリアナ。他の令嬢に意地悪ばかりしていた。
それでもディーンへの思いは本物だった。
「私の中に、アリアナはちゃんと残っている。私がディーンを好きかどうかは分からないけど・・・勝手に婚約解消しようとしてごめんね・・・。」
そっと胸に両手を重ね、心の中でアリアナに頭を下げた。
私の中で、アリアナが泣いているような気がした・・・。
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