20 / 284
第1章 悪役令嬢は目立ちたくない
19
しおりを挟む
私達はその後、お茶とお菓子を頂きながら、テストの話や、ピクニックの時の話をして充分に楽しんだ。
リリーはクラスでは友達がいないって言ってたから、こういう時間って今まで無かったんじゃないかなぁ。
(私も、ミリア達と知り合うまで、友達いなかったもんね。リリーみたいにイジメられてはいなかったけど、なんだか気持ちは分かるのよね。)
4人が帰ったあと、兄のクラークはニコニコしながら、自室からリビングに入ってきた。
「良い友達ができたようで、良かったね。」
「はい。」
なんだかちょっと照れくさくて、でも心はホカホカしていた。
兄が自室に戻ったので、私も夕食までもう少し勉強しようかと思っていた時だった。
また外のドアがノックされる音が聞こえた。
「あら、誰か忘れ物でもしたのかしら?」
メイドが入口の方へ確認に行く。
「アリアナ様、ご友人がいらっしゃいましたが・・・。」
「入ってもらってちょうだい。」
だが、リビングに入ってきた『ご友人』の姿を見て、私は驚愕した。
「アリアナ、失礼する。」
「ディ、ディーン様!・・・」
私は頭が真っ白になった・・・。
(な、なんでディーンがアリアナのところに来るのよ!?)
まさか、まだアリアナがリリーをイジメてるって思ってるの?だってピクニックで湖に落ちたのはリリーじゃなくて、私だよ!?馬が突っ込んできたのだって、他の女生徒の仕業だって事、分かってるはず!それとも他の事で難癖付けに来たのかしら?
(いや、落ち着け私。ディーンに責められるような事は何もしていないはず。むしろリリーとは友達になって仲良くしてるんだからね。)
私は荒くなっていた呼吸を整え、それでも警戒しながらディーンに引きつった笑いを返した。
「ご、ごきげんようディーン様。何かわたくしに御用でしょうか?」
ディーンは、一瞬うっと詰まったようなそぶりを見せ、少し目を泳がせた。
「そ、その・・・先日湖に落ちて、体調を崩したと聞いた。もう、具合は良いのかと思って・・・。」
(えっ?それだけ?)
もしかして、私が学校を休んでいるのを知って、お見舞いに来てくれたのだろうか?あのディーンが!?
私は一瞬ぽかーんとしたが、はっと気づいた。
そう言えば、ディーンに助けて貰ったのに、全くお礼を言ったなかった!
(もしかして、それに文句を言いに来たの?)
「あ、あの・・・あの時は助けて頂き、ありがとうございました。お礼が遅くなり、大変申し訳ございません。おかげさまで、湖に沈むことなく、無事に帰ってこれました。熱は出しましたが、たいそうな事もなく、この通り今は元気でございます!」
急いで私は、早口で礼をまくしたてた。
(はぁ、はぁ、どうだ!文句あるまい?)
息継ぎができなかったので、ちょっと苦しい・・・。
「なので、ディーン様はどうぞお気になさらず、・・・」
どうぞ、お帰り下さい。と言いかけて、慌てて止める。さすがに追い返したい気持ちが見えすぎて、良くないだろう。
私が、心の中であたふたしていると、ディーンは私からは少し目を逸らしたまま、口を開いた。
「礼を言われるには及ばない。ああいう時は助けるのが当たり前だから。それより、元気になって良かった。」
「は、はあ・・・ありがとうございます。」
(うん?文句を言いに来たのではないの・・・)
まさか、・・・ほんとにただのお見舞いなのだろうか?
ディーンも、私も立ったまま、黙ってしまった。
沈黙が気まずい・・・。
(はっ!私、ディーンが入ってきてから、お茶も出してない。)
やばい!今度はこれを責められるのかしら?
「も、申し訳ございません、ディーン様。どうぞお座りになってください。今、お茶の準備をさせますわ。ステラ、お茶の用意を。」
ディーンは私に勧められるまま、テーブルの椅子についた。そして私の優秀なメイドは、言われる前にお茶とお菓子の準備をしていた。さすが、ステラ!
「いつもありがとう、ステラ。どうぞディーン様。ステラの淹れてくれるお茶はとても美味しいですわ。」
「あ、ああ。」
ディーンはなんだか不思議そうに私を見て、お茶を一口飲んだ。
「・・・美味しいな。」
「そうでしょう!茶葉もステラが選んでますのよ。彼女はお茶のプロですわ。」
私が、自慢げにそう言うと、ステラが頬を赤く染めながら、恥ずかしそうに顔を伏せた。
「ア、アリアナ様・・・。ディーン様の前で、私などを褒めすぎです・・・。」
「だって、本当の事なんだもの。恥ずかしがることないですよ。」
その様子を見て、ディーンがクスリと笑った。
(えっ!?)
私はぎょっとなり、自分の目を疑った。
(・・・ディーンが、まさか・・・笑った!?)
アリアナの前で!?
だって、だって、ディーンがアリアナの前で笑うなんて、ゲームではなかった。彼の笑顔は全てリリーに向けられていたのだ。アリアナに向けられるのは、不機嫌な顔か怒った顔だけだったのに。
(いったい、何が起きてるの?)
私はまじまじとディーンを見つめてしまった。
リリーはクラスでは友達がいないって言ってたから、こういう時間って今まで無かったんじゃないかなぁ。
(私も、ミリア達と知り合うまで、友達いなかったもんね。リリーみたいにイジメられてはいなかったけど、なんだか気持ちは分かるのよね。)
4人が帰ったあと、兄のクラークはニコニコしながら、自室からリビングに入ってきた。
「良い友達ができたようで、良かったね。」
「はい。」
なんだかちょっと照れくさくて、でも心はホカホカしていた。
兄が自室に戻ったので、私も夕食までもう少し勉強しようかと思っていた時だった。
また外のドアがノックされる音が聞こえた。
「あら、誰か忘れ物でもしたのかしら?」
メイドが入口の方へ確認に行く。
「アリアナ様、ご友人がいらっしゃいましたが・・・。」
「入ってもらってちょうだい。」
だが、リビングに入ってきた『ご友人』の姿を見て、私は驚愕した。
「アリアナ、失礼する。」
「ディ、ディーン様!・・・」
私は頭が真っ白になった・・・。
(な、なんでディーンがアリアナのところに来るのよ!?)
まさか、まだアリアナがリリーをイジメてるって思ってるの?だってピクニックで湖に落ちたのはリリーじゃなくて、私だよ!?馬が突っ込んできたのだって、他の女生徒の仕業だって事、分かってるはず!それとも他の事で難癖付けに来たのかしら?
(いや、落ち着け私。ディーンに責められるような事は何もしていないはず。むしろリリーとは友達になって仲良くしてるんだからね。)
私は荒くなっていた呼吸を整え、それでも警戒しながらディーンに引きつった笑いを返した。
「ご、ごきげんようディーン様。何かわたくしに御用でしょうか?」
ディーンは、一瞬うっと詰まったようなそぶりを見せ、少し目を泳がせた。
「そ、その・・・先日湖に落ちて、体調を崩したと聞いた。もう、具合は良いのかと思って・・・。」
(えっ?それだけ?)
もしかして、私が学校を休んでいるのを知って、お見舞いに来てくれたのだろうか?あのディーンが!?
私は一瞬ぽかーんとしたが、はっと気づいた。
そう言えば、ディーンに助けて貰ったのに、全くお礼を言ったなかった!
(もしかして、それに文句を言いに来たの?)
「あ、あの・・・あの時は助けて頂き、ありがとうございました。お礼が遅くなり、大変申し訳ございません。おかげさまで、湖に沈むことなく、無事に帰ってこれました。熱は出しましたが、たいそうな事もなく、この通り今は元気でございます!」
急いで私は、早口で礼をまくしたてた。
(はぁ、はぁ、どうだ!文句あるまい?)
息継ぎができなかったので、ちょっと苦しい・・・。
「なので、ディーン様はどうぞお気になさらず、・・・」
どうぞ、お帰り下さい。と言いかけて、慌てて止める。さすがに追い返したい気持ちが見えすぎて、良くないだろう。
私が、心の中であたふたしていると、ディーンは私からは少し目を逸らしたまま、口を開いた。
「礼を言われるには及ばない。ああいう時は助けるのが当たり前だから。それより、元気になって良かった。」
「は、はあ・・・ありがとうございます。」
(うん?文句を言いに来たのではないの・・・)
まさか、・・・ほんとにただのお見舞いなのだろうか?
ディーンも、私も立ったまま、黙ってしまった。
沈黙が気まずい・・・。
(はっ!私、ディーンが入ってきてから、お茶も出してない。)
やばい!今度はこれを責められるのかしら?
「も、申し訳ございません、ディーン様。どうぞお座りになってください。今、お茶の準備をさせますわ。ステラ、お茶の用意を。」
ディーンは私に勧められるまま、テーブルの椅子についた。そして私の優秀なメイドは、言われる前にお茶とお菓子の準備をしていた。さすが、ステラ!
「いつもありがとう、ステラ。どうぞディーン様。ステラの淹れてくれるお茶はとても美味しいですわ。」
「あ、ああ。」
ディーンはなんだか不思議そうに私を見て、お茶を一口飲んだ。
「・・・美味しいな。」
「そうでしょう!茶葉もステラが選んでますのよ。彼女はお茶のプロですわ。」
私が、自慢げにそう言うと、ステラが頬を赤く染めながら、恥ずかしそうに顔を伏せた。
「ア、アリアナ様・・・。ディーン様の前で、私などを褒めすぎです・・・。」
「だって、本当の事なんだもの。恥ずかしがることないですよ。」
その様子を見て、ディーンがクスリと笑った。
(えっ!?)
私はぎょっとなり、自分の目を疑った。
(・・・ディーンが、まさか・・・笑った!?)
アリアナの前で!?
だって、だって、ディーンがアリアナの前で笑うなんて、ゲームではなかった。彼の笑顔は全てリリーに向けられていたのだ。アリアナに向けられるのは、不機嫌な顔か怒った顔だけだったのに。
(いったい、何が起きてるの?)
私はまじまじとディーンを見つめてしまった。
17
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。
櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。
兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。
ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。
私も脳筋ってこと!?
それはイヤ!!
前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。
ゆるく軽いラブコメ目指しています。
最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。
小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる