モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
上 下
18 / 284
第1章 悪役令嬢は目立ちたくない

第17話 湖でパニック

しおりを挟む
 (な、何、こいつ?!腹立つ~~~!!そりゃね、アリアナは背も低くて、幼児体形で、出るとこ出てなくて幼く見えるわよ!)

 ・・・なんだか自分で言ってて悲しくなってきた。でもここまであからさまに人からイジられたのは初めてで、

 「あ、貴女ねぇ!いくらなんでも言い過ぎではないですか?」

 「あら、本当の事を言い過ぎたかしら?ごめんあそばせ」

 「・・・・!!!」

 私が歯噛みしていると女生徒はさらに続けた。

 「おお、怖い。この方私達を睨んでますわよ?」

 「ほんと、さすがお育ちの悪い方のお友達ですわね」

 「この方も庶民なのかしら?」

 「そうかもしれませんわね。おほほほほ・・・」

 (こいつら~~~~!)

 なんて嫌みな奴らだと思い、言い返そうとした時だった。

 「アリアナ様に失礼な事を言わないでくださいっ!」

 嘲笑する女生徒達を遮って、リリーが叫ぶように言った。

 「私の事を悪く言うのはかまいません。でもアリアナ様を傷つけるのは許せません!」

 リリーの言葉に女生徒達が気色ばむ。

 「な、なにを生意気に・・・」

 「そうよ、平民のくせに!」

 けれどリリーはひるまなかった。

 「貴族なら人を傷つけるような事を言っても良いのですか?人に対し、失礼な態度をとっても許されるのが貴族なのですか?だとしたら、私はそんなものになりたくありません。貴族とは他の人より重い責任を担っていて、人を守る立場であるはずです。だからこそ平民より良い暮らしが出来るのではないのですか?私にはあなた達がそうだとはとても思えません!」

 真っすぐに女生徒達に向かって言い放った。

 (ふぉ~!か、か、かっこいい~~~!リリー素敵!最高!)

 私は横でリリーの雄姿に見とれていた。

 (これぞヒロイン!さすが聖女候補!)

 だけど言われた方はそうではなかった様で、女生徒達は怒りのあまりに顔を真っ赤にさせると、

 「よ、よ、よくも平民の分際で・・・この・・・この無礼者っ!」

 「えっ?」

 女生徒の一人はボートのオールを持ち上げると、あろう事かこちらに向かって投げつけてきたのだ。
 
 「うそっ!」

 それをなんとか避けようとした私は、ボートの上で思い切りバランスを崩してしまった。

 (ヤバいっ!)

 「アリアナ様っ!」

 スローモーションのように手を伸ばすリリーを見ながら、

  バシャンッ!

 私・・・湖に落ちてしまった。

 「う・・・ごぼっ!」

 思いっきり水を飲んでしまう。

 そういえば私って泳げないんだっけ・・・。

 (あ・・・これは詰んだ)

 半分パニック、半分諦めの気持ちで手足をバタバタさせていると、どう言うわけか突然、私は一気に水面に引き上げられた。

 「う、ゲホッ、ゴホッ、ゴホッ・・・・」

 ボートの上に引っ張り上げられ、思いっきり咳込んでしまう。目から涙があふれてくるし、・・・やだ鼻水が・・・

 「大丈夫かっ!?」

 「あ、ありが・・・ゴホッ、ゴホッ・・・」

 「無理して喋らなくていい。落ち着いてゆっくり息を吸うんだ」

 そう言って背中をさすってくれる。そのゆっくりしたリズムに少しずつ落ち着き、呼吸も楽になってきた。

 ハンカチを渡されたのでそれで顔を拭き、ついでに鼻もかんだ。うん・・・、洗って返さなきゃね。

 「アリアナ様!大丈夫ですかっ?アリアナ様っ!」

 少し離れた場所でリリーの声がする。顔を上げると私達が乗っていたボートに一人しゃがみ込んでいる、青い顔をしたリリーがいた。そしてその右の方には、焦った顔をした女生徒達のボートもある。

 (・・・あれ?じゃ、私が乗っているのは誰のボート・・・?)

 不思議な気持ちで振り返ってみると、私の背をさすっているずぶ濡れのディーンと目が合った。

 「ディ・・・!ひっ、ゲホッ、ゴホゴホッ」

 折角落ち着いてきたのに、別の理由で咳込んでしまった。

 横目で様子を伺うと、ディーンの横には第二皇子のパーシヴァルまで居るではないか!

 (こ、これって一体、どういう状況?!?)

 逃げねばと思いつつも身体は動かず、それに加えて目の前がぐるぐると回りだして・・・

 「う、う~ん・・・」

 湖に落ちたショックのせいか、はたまた状況による緊張のせいか、私はアリアナになってから二度目の気絶をしてしまった。



 ガタガタというリズミカルな音。そして温かい毛布の感触。

 気が付いたら馬車の中だった。

 「アリアナ様!気が付かれましたか?」

 向かい側の席からミリア、ジョージア、レティシアが心配そうにこちらを見ている。

 クリフとノエルは居なくて、代わりに担任のエライシャ先生が私の隣に座っていた。私は毛布で体をくるまれて、エライシャ先生に膝枕をしてもらっていたのだ。

 「・・・エライシャ先生・・・」

 私の口から出た声が思いのほか弱々しかったので、自分でも驚いてしまった。

 身体が凄く重いし、なんだか頭も痛い気がする・・・。

 「喋らなくて良いですよ。湖に落ちて濡れたせいか、熱がありますからね。寮に着くまでこのままゆっくり寝ていなさい。」

 「・・・はい・・・」

 普段は厳しめのエライシャ先生の声がとても優しかった。私はその声になんだか安心し、そのまま眠ってしまった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

処理中です...