6 / 284
第1章 悪役令嬢は目立ちたくない
第5話 もしかしてぼっち?
しおりを挟む
「アリアナ」
寮の門前で声をかけてきたのは、アリアナの兄のクラークだった。
「アリアナ大丈夫かい?授業はついていけてるかい?疲れたりしていないかい?イジメる奴はいないかい?もしそんな事があったらすぐに僕に言うんだよ!」
相変わらず過保護な兄だ。
「私は大丈夫です。授業もついていけてます。いじめも受けてません」
「そうか、良かった」
そう言ってクラークはホッとした顔でにっこり笑った。イケメンで優しい、ほんとに良い兄だ。
1歳年上のクラークはアリアナよりは濃いめの金髪で、やはりエメラルドグルーンの瞳をしている。背が高くて成績優秀な公爵家の跡取りは、学校でも良くモテる事だろう。
そして彼はゲームでの攻略対象の一人だ。
この乙女ゲーム中、1年生の時に現れるディーン、クラーク、パーシヴァルは、適当にやってても好感度はすぐ上がる。イベントの選択肢も簡単なものが多い。
最終的にラブの相手が決まるのは5年後なのだが、この3人は比較的攻略しやすい相手なのだ。
(クラークには幸せになって欲しいな・・・)
アリアナが断罪される時、庇ってくれるのはこの兄だけなのだ。アリアナはそのおかげで学校を追放されなくて済む。
(ディーンとリリーが結ばれるのは何だかちょっと気に食わないけど、クラークなら良いかも・・・?)
よし!と私は心の中で決心する。
「応援しますわ、お兄様!」
「えっ?」
突然そう言った私に兄は理解出来てないようだったが、私がにっこり笑うと彼も笑顔を浮かべた。私達は仲良しなのだ。
そして私はその夜、方針を立て直した。
1、勉強以外で目立たない!
2、なるべくヒロインに近づかない!
3、目指せクラーク×リリー
4、ディーンと円満婚約解消!
「よし、完璧!明日も破滅回避に向けて頑張るぞっ!」
私はベッドの上で拳を握った。
そして学園に来て1週間。
私と兄のクラークはリビングで朝食をとっていた。
私達は寮の3階にある一番広い部屋で暮らしている。同じ部屋と言ってももちろん寝室は別だ。
マンションみたいな感じで真ん中に大きなリビングがある。さすが貴族の子息令嬢の為の寮だ。
さらに私達の部屋は特別ルームらしく、バスルーム付きの寝室が3つ、書斎、サンルーム、さらにメイド用の部屋、シェフの為の部屋もある。
公爵家の財力、恐るべし!
おかげで朝からお抱えシェフの作ったとびきり美味しい朝食を堪能できるのだ。
私は食後の紅茶を一口飲み、端に控えているメイドに言った。
「美味しいです!もしかして茶葉を変えたのですか?」
私付きのメイドのステラは嬉しそうに、にこりと笑った。
「はい、お分かりになりましたか!今回新物のアシュカル産の良い茶葉が入荷しましたので、お出ししました。お気に召したでしょうか?」
「とっても美味しいわ!ステラは目利きなのね」
そう言うとステラは頬を赤らめ、「恐縮です。」と言った。ステラはもう一人のメイドのマリアよりも若いのだが、お茶を入れるのがとても上手だ。
「凄いね、アリアナ。よく分かったね。僕の妹は素晴らしいよ!」
シスコンの兄は今日も妹を褒めまくる。
「朝食もとても美味しかったわ。スティーブンにお礼を言っておいて下さい」
うちのシェフは本当に腕が良い!おかげで私はアリアナになってからも、食事の時間だけは幸福感でいっぱいだ。
「ところで、アリアナ。学園には慣れたかい?その・・・ゆ、友人はできたかい?」
クラークが若干、気を使いながら聞いてくる。この質問は毎日繰り返されているのだが・・・
「学園には慣れました。友人は・・・その・・・まだできていません」
そしてこの答えも毎日繰り返されている。私自身は友人を作るよりも破滅回避の方が大事!。だからそれ程気にしていなかったのだが、兄に心配かけているのは心苦しい。
私が休んでいた一か月間で、クラス内ではすっかりグループが出来上がってしまっていた。
しかも私は公爵令嬢でこのクラスの中では1番身分が高い。意地悪をされている訳では無いのだが、なんとなく遠巻きにされている気がするのだ。
その時ハッと気づいた。
(もしかしたら、前のアリアナとお茶会やパーティーで知り合っている人が居て、避けられているんじゃ・・・)
私になる前のアリアナは、相当な我儘プラス傲慢娘だったみたいだから、その可能性はゼロじゃない。
私はゲームのアリアナの悪役令嬢っぷりを思い出し、ズンと気分が重くなった。
入学して1週間、破滅回避の事ばかり考えていたけど・・・
(お昼ご飯もずっと一人で食べているし、休み時間も一人で本読んだり考え事してる。放課後は直ぐに寮に戻るし、私って完全に「ぼっち」じゃん!)
気付いてしまうと途端に寂しくなってくる。
(ちょ、ちょっとずつでもクラスに馴染んでいくようにしてみよう・・・)
決意を新たに学校に登校したのだが・・・、結局今日も一人でお昼を食べ、休み時間を過ごした。
(そう簡単にはいかないか・・・)
帰り支度をしながら自然とため息が出てくる。
唯一ありがたかったのは、今日もヒロインともディーンとも出会わなかった事だ。
寮の門前で声をかけてきたのは、アリアナの兄のクラークだった。
「アリアナ大丈夫かい?授業はついていけてるかい?疲れたりしていないかい?イジメる奴はいないかい?もしそんな事があったらすぐに僕に言うんだよ!」
相変わらず過保護な兄だ。
「私は大丈夫です。授業もついていけてます。いじめも受けてません」
「そうか、良かった」
そう言ってクラークはホッとした顔でにっこり笑った。イケメンで優しい、ほんとに良い兄だ。
1歳年上のクラークはアリアナよりは濃いめの金髪で、やはりエメラルドグルーンの瞳をしている。背が高くて成績優秀な公爵家の跡取りは、学校でも良くモテる事だろう。
そして彼はゲームでの攻略対象の一人だ。
この乙女ゲーム中、1年生の時に現れるディーン、クラーク、パーシヴァルは、適当にやってても好感度はすぐ上がる。イベントの選択肢も簡単なものが多い。
最終的にラブの相手が決まるのは5年後なのだが、この3人は比較的攻略しやすい相手なのだ。
(クラークには幸せになって欲しいな・・・)
アリアナが断罪される時、庇ってくれるのはこの兄だけなのだ。アリアナはそのおかげで学校を追放されなくて済む。
(ディーンとリリーが結ばれるのは何だかちょっと気に食わないけど、クラークなら良いかも・・・?)
よし!と私は心の中で決心する。
「応援しますわ、お兄様!」
「えっ?」
突然そう言った私に兄は理解出来てないようだったが、私がにっこり笑うと彼も笑顔を浮かべた。私達は仲良しなのだ。
そして私はその夜、方針を立て直した。
1、勉強以外で目立たない!
2、なるべくヒロインに近づかない!
3、目指せクラーク×リリー
4、ディーンと円満婚約解消!
「よし、完璧!明日も破滅回避に向けて頑張るぞっ!」
私はベッドの上で拳を握った。
そして学園に来て1週間。
私と兄のクラークはリビングで朝食をとっていた。
私達は寮の3階にある一番広い部屋で暮らしている。同じ部屋と言ってももちろん寝室は別だ。
マンションみたいな感じで真ん中に大きなリビングがある。さすが貴族の子息令嬢の為の寮だ。
さらに私達の部屋は特別ルームらしく、バスルーム付きの寝室が3つ、書斎、サンルーム、さらにメイド用の部屋、シェフの為の部屋もある。
公爵家の財力、恐るべし!
おかげで朝からお抱えシェフの作ったとびきり美味しい朝食を堪能できるのだ。
私は食後の紅茶を一口飲み、端に控えているメイドに言った。
「美味しいです!もしかして茶葉を変えたのですか?」
私付きのメイドのステラは嬉しそうに、にこりと笑った。
「はい、お分かりになりましたか!今回新物のアシュカル産の良い茶葉が入荷しましたので、お出ししました。お気に召したでしょうか?」
「とっても美味しいわ!ステラは目利きなのね」
そう言うとステラは頬を赤らめ、「恐縮です。」と言った。ステラはもう一人のメイドのマリアよりも若いのだが、お茶を入れるのがとても上手だ。
「凄いね、アリアナ。よく分かったね。僕の妹は素晴らしいよ!」
シスコンの兄は今日も妹を褒めまくる。
「朝食もとても美味しかったわ。スティーブンにお礼を言っておいて下さい」
うちのシェフは本当に腕が良い!おかげで私はアリアナになってからも、食事の時間だけは幸福感でいっぱいだ。
「ところで、アリアナ。学園には慣れたかい?その・・・ゆ、友人はできたかい?」
クラークが若干、気を使いながら聞いてくる。この質問は毎日繰り返されているのだが・・・
「学園には慣れました。友人は・・・その・・・まだできていません」
そしてこの答えも毎日繰り返されている。私自身は友人を作るよりも破滅回避の方が大事!。だからそれ程気にしていなかったのだが、兄に心配かけているのは心苦しい。
私が休んでいた一か月間で、クラス内ではすっかりグループが出来上がってしまっていた。
しかも私は公爵令嬢でこのクラスの中では1番身分が高い。意地悪をされている訳では無いのだが、なんとなく遠巻きにされている気がするのだ。
その時ハッと気づいた。
(もしかしたら、前のアリアナとお茶会やパーティーで知り合っている人が居て、避けられているんじゃ・・・)
私になる前のアリアナは、相当な我儘プラス傲慢娘だったみたいだから、その可能性はゼロじゃない。
私はゲームのアリアナの悪役令嬢っぷりを思い出し、ズンと気分が重くなった。
入学して1週間、破滅回避の事ばかり考えていたけど・・・
(お昼ご飯もずっと一人で食べているし、休み時間も一人で本読んだり考え事してる。放課後は直ぐに寮に戻るし、私って完全に「ぼっち」じゃん!)
気付いてしまうと途端に寂しくなってくる。
(ちょ、ちょっとずつでもクラスに馴染んでいくようにしてみよう・・・)
決意を新たに学校に登校したのだが・・・、結局今日も一人でお昼を食べ、休み時間を過ごした。
(そう簡単にはいかないか・・・)
帰り支度をしながら自然とため息が出てくる。
唯一ありがたかったのは、今日もヒロインともディーンとも出会わなかった事だ。
39
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。
櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。
兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。
ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。
私も脳筋ってこと!?
それはイヤ!!
前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。
ゆるく軽いラブコメ目指しています。
最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。
小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる