牢で出会った私の王子

優摘

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第二章

4,復讐

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屋敷に移動した次の日から、ユリウスとサシャフェルトは外出する事が多くなった。リオ―ノーラがそれとなく、庭で剣の練習をしているミカルークに理由を聞いてみると、

「二人はエインズワース侯爵に会いに行ってるっす。」

と、教えてくれた。

「このお屋敷を、貸してくださった方ですよね?。」

「そうっす。ユリウス様の叔父さんにあたるんですが、あんまり会って無かったから、親交を深めているみたいっす。」

毎朝、エインズワース侯爵のところから、迎えの馬車がやってくる。そして、夕方近くまで二人は戻ってこないのだ。

「侯爵は、本当は自分の屋敷に、殿下を滞在させたいみたいなんすが、殿下が嫌がってるんすよ。殿下、リオノーラさんと離れたくないんですね。俺達は今、7人って大所帯ですから、みんなで行くのは難しいですし。」

「すみません・・・。私達がいるせいで・・・。」

申し訳なさそうにするリオノーラに、ミカルークは慌てた。

「リオノーラさん達のせいじゃ無いっすよ。俺達も侯爵のお屋敷なんか、緊張して寝れたもんじゃないですよ。ここに居れて、丁度良かったんす。」

両手をぶんぶん振って、そう答えた。リオノーラはその様子を見て、思わずくすりと笑ってしまう。

「これからユリウス様は、どうなさるおつもりなのでしょうか?。」

そう尋ねると、ミカルークは思案気な顔をして、持っていた剣を片付けた。

「あっ、すみません。お稽古の邪魔をしてしまって・・・。」

「いやいや、どうせ一人じゃ、あまり練習にならなかったっすから。」

そう言って、屋敷の壁沿いにあるベンチを指さし、リオノーラに座る様に言った。

「殿下はマルヴァで、まず地位を得ようと考えてるんすよ。」

「えっ?」

「一国の王子とは言え、他国で爵位を貰うってのは難しいんすけどね。まぁ、エインズワース侯爵の甥ですし、それに、ソフィア様の件や、ご自身が長い間、幽閉されていた事から、同情は得やすいです。しかもあの見た目ですからね。」

そう言って、片目をつぶった。

「でも、ユリウス様はまだ11歳です。もしも・・・誰かに利用されたりとか、良くない事に巻き込まれたりはしないでしょうか・・・?。」

ユリウスの立場を考えると、それは国家間の問題になったりしないだろうか?

「う~ん、殿下はそれでも良いっていうか、むしろそれを狙ってる気がするっす。」

「ええっ!そんな・・・、どうしてですか?。」

意外な答えに、リオノーラは戸惑った。どういう事なのだろうと?

「殿下は、マルヴァだけで無くて、セテリオス国の周囲にある国も、味方につけようと考えてるんす。セテリオス国って、マルヴァ以外に2つの国と接しているでしょ?。」

「は、はい。」

「その2国も巻き込んで、セテリオスを孤立させたいって思ってるみたいっす。そうすると、セテリオス国王は、色々困るじゃないですか?。上手く行くかどうかは殿下次第ですが、その為なら、自分を利用されても構わないとおもってるんじゃないかなぁと・・・。」

そこまで言って、ミカルーク眉をしかめた。リオノーラにどこまで言ってよいのか、考えあぐねてるようだった。

「・・・リオノーラさんは、この前のベスパの塔の崩落が、殿下の仕業だって分かってますよね?」

「・・・はい。」

「凄かったっすよね。常々、殿下の魔力も、使える魔法も強大って事、分かってるんすけど、目の前で見せられると、もっと思い知らされたって言うか・・・。。だから、もしセテリオス国の城を攻撃するだけなら、多分殿下一人でも出来てしまうんですよ。」

言葉にすると荒唐無稽な事に聞こえるが、実際、ユリウスにはそれだけの力があるのだ。リオノーラにもそれは理解できていた。

「こう言っちゃなんですが、王の・・・暗殺も簡単に出来ると思う。でも、殿下はそれはしない・・・というか、その考えを頑張って押さえてるように思うんす。」

リオノーラはドキッとした。ユリウスが彼の父・・・セテリオス王に恨みを抱いているのは当然だと思う。でも、城を攻めたり、王を弑する事まで考えているのだろうか?

「ユリウス様は、セテリウス王に復讐したいと思っている・・・。」

「そこは間違いないです。王が、殿下にした仕打ちを考えれば当然です。・・・ただ、予言の様に、国を滅ぼす事まで考えているのかは、俺もサシャも掴み切れてないんすよ。でもね・・・」

ミカルークは真面目な表情で、リオノーラを見た。

「俺もサシャも、6年前に、殿下を助けられなかったという負い目があるんですよ。その上、自分達は助けて貰ってますからね。その時の、痩せて目だけぎらぎらしてた殿下の顔が忘れられないんです。殿下がどういう選択をしようと、俺達は従うつもりですよ。」

迷いの無い声で、そう言い切った。そして、彼の目は「貴方はどうするのか?」と問うている様に思えた。
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