21 / 30
第一章
21,4人掛けのテーブル
しおりを挟む
「とは言え、早く捕らえた方が良いに決まってますからな。秘密裏にですが、捜索は順調に進めています。たかが子供と娘一人。直ぐに見つけてみせますよ。ねぇ、ヘルマン導師。」
そう言ってにやりと笑った。ヘルマン導師と呼ばれた魔術師は、それでも固い顔を崩さなかった。
「私はそれ程、楽観視できませんな。ユリウス殿下とゲオルグ殿の娘・・・リオノーラという名でしたかね?。あの二人が一緒にいるのはまずい・・・。あの娘を、同じベスパの塔に入れたのは失敗でした。あの者こそ、早く殺しておくべきだった。」
「ふん!。ヘルマン殿は、くだらない予言などを信じてらっしゃるようだ。あんなもの眉唾ですよ。」
高官の男がそう言った時、部屋の扉がノックされた。
「何だ!?」
「ベイシュ宰相様。アシュレイ伯爵が来られました。」
王が小さく頷いたのを見て、ベイシュ宰相と呼ばれた高官の男は、アシュレイ伯爵をこちらに案内する様に指示した。
ユリウスは三人が話しているテーブルの、一つ空いていた椅子に腰かけて全ての話を聞いていた。もし、ユリウスの姿が見える者がいたとしたら、四人が会話しているように見えただろう。
(王と宰相と魔術師の秘密の会議か・・・。だったら、もうちょっと面白い話をして欲しいな。これじゃリオが捕まった理由が分かんないじゃん。)
リオがディーハの姫だと気づいたのだろうか?。それにしても、処刑する意味が分からない。ディーハの姫は、あくまでユリウスを救う鍵にすぎない。
テーブルに頬杖をついて、ユリウスは、ヘルマン導師と呼ばれた魔術師に目線を走らせた。
(導師って事は、宮廷魔術師のトップだよね。なのに、僕に気付かないって相当鈍いよ。)
しばらくして、部屋の扉が再びノックされ、開く音が聞こえた。
「これはこれは、皆様お揃いで。ゲオルグ・アシュレイ、王の為に馳せ参じました。」
耳障りな声を上げながら、男がこちらに向かってきた。顔には 下卑た笑みを浮かべて、揉み手をしながらテーブルの三人に挨拶した。
「皆様、浮かない顔ですな。何か心配事でも?」
「ゲオルグ。お前の娘とユリウス殿下が逃げた。」
歯痛でも堪える様な、苦い顔でベイシュ宰相が吐き捨てるように言った。
「は?」
「お前の娘が投獄された日にな!。判明したのは昨夜の事だ。」
「な、なんですと?。リオノーラが何を?」
ゲオルグは言われた事が、まだ良く理解できていないようで、ぽかんとした顔で他の三人の顔を代わる代わる見ている。
(ふうん。看守を眠らせた術が強かったかな?。僕達が居なくなったこと、昨日まで知らなかったんだ。)
馬鹿な奴ら、とユリウスは口端を持ち上げた。
「とりあえず、空いている席に座りなさい。そなたの娘について、もう少し詳しく話を聞くべきであった。聖女があの娘を侍女にしたいなどと言うから、事を急いでしまったのだ。これ以上、レオンハルト殿下に力を付けて欲しくなかったからな。だが・・・、余計まずい事になってしまった。」
ヘルマン導師は溜息をついて、ゲオルグをこちらへと手招きをした。
ゲオルグは腑に落ちない顔をしたまま、いそいそとこちらへとやってきた。ユリウスが座っている椅子の方へと。
(気持ち悪い・・・、近寄るな。)
ユリウスは顔を乗せていた手の指を、わずかに動かした。その瞬間、ゲオルグは突然、崩れる様に横に倒れた。
「ぐっ、ぎゃあ!。足が・・・!足がぁ!」
ゲオルグは倒れたまま大声で悲鳴を上げ続ける。
「ゲ、ゲオルグ殿!?」
ベイシュ宰相が驚いて駆け寄ると、ゲオルグの左足があらぬ方向に曲がっている。完全に骨が折れてしまっていたのだ。
(くくっ。)
皆が慌てふためき、騒然とする場を見ながら、ユリウスは無邪気な笑みを浮かべている。そして、青い顔で、がたがたと震えているガリオス・セテリオスに目を向けた。
(またね、父上。これから、もっと楽しもう。)
ユリウスはサシャフェルトの元へ『飛んだ』。
そう言ってにやりと笑った。ヘルマン導師と呼ばれた魔術師は、それでも固い顔を崩さなかった。
「私はそれ程、楽観視できませんな。ユリウス殿下とゲオルグ殿の娘・・・リオノーラという名でしたかね?。あの二人が一緒にいるのはまずい・・・。あの娘を、同じベスパの塔に入れたのは失敗でした。あの者こそ、早く殺しておくべきだった。」
「ふん!。ヘルマン殿は、くだらない予言などを信じてらっしゃるようだ。あんなもの眉唾ですよ。」
高官の男がそう言った時、部屋の扉がノックされた。
「何だ!?」
「ベイシュ宰相様。アシュレイ伯爵が来られました。」
王が小さく頷いたのを見て、ベイシュ宰相と呼ばれた高官の男は、アシュレイ伯爵をこちらに案内する様に指示した。
ユリウスは三人が話しているテーブルの、一つ空いていた椅子に腰かけて全ての話を聞いていた。もし、ユリウスの姿が見える者がいたとしたら、四人が会話しているように見えただろう。
(王と宰相と魔術師の秘密の会議か・・・。だったら、もうちょっと面白い話をして欲しいな。これじゃリオが捕まった理由が分かんないじゃん。)
リオがディーハの姫だと気づいたのだろうか?。それにしても、処刑する意味が分からない。ディーハの姫は、あくまでユリウスを救う鍵にすぎない。
テーブルに頬杖をついて、ユリウスは、ヘルマン導師と呼ばれた魔術師に目線を走らせた。
(導師って事は、宮廷魔術師のトップだよね。なのに、僕に気付かないって相当鈍いよ。)
しばらくして、部屋の扉が再びノックされ、開く音が聞こえた。
「これはこれは、皆様お揃いで。ゲオルグ・アシュレイ、王の為に馳せ参じました。」
耳障りな声を上げながら、男がこちらに向かってきた。顔には 下卑た笑みを浮かべて、揉み手をしながらテーブルの三人に挨拶した。
「皆様、浮かない顔ですな。何か心配事でも?」
「ゲオルグ。お前の娘とユリウス殿下が逃げた。」
歯痛でも堪える様な、苦い顔でベイシュ宰相が吐き捨てるように言った。
「は?」
「お前の娘が投獄された日にな!。判明したのは昨夜の事だ。」
「な、なんですと?。リオノーラが何を?」
ゲオルグは言われた事が、まだ良く理解できていないようで、ぽかんとした顔で他の三人の顔を代わる代わる見ている。
(ふうん。看守を眠らせた術が強かったかな?。僕達が居なくなったこと、昨日まで知らなかったんだ。)
馬鹿な奴ら、とユリウスは口端を持ち上げた。
「とりあえず、空いている席に座りなさい。そなたの娘について、もう少し詳しく話を聞くべきであった。聖女があの娘を侍女にしたいなどと言うから、事を急いでしまったのだ。これ以上、レオンハルト殿下に力を付けて欲しくなかったからな。だが・・・、余計まずい事になってしまった。」
ヘルマン導師は溜息をついて、ゲオルグをこちらへと手招きをした。
ゲオルグは腑に落ちない顔をしたまま、いそいそとこちらへとやってきた。ユリウスが座っている椅子の方へと。
(気持ち悪い・・・、近寄るな。)
ユリウスは顔を乗せていた手の指を、わずかに動かした。その瞬間、ゲオルグは突然、崩れる様に横に倒れた。
「ぐっ、ぎゃあ!。足が・・・!足がぁ!」
ゲオルグは倒れたまま大声で悲鳴を上げ続ける。
「ゲ、ゲオルグ殿!?」
ベイシュ宰相が驚いて駆け寄ると、ゲオルグの左足があらぬ方向に曲がっている。完全に骨が折れてしまっていたのだ。
(くくっ。)
皆が慌てふためき、騒然とする場を見ながら、ユリウスは無邪気な笑みを浮かべている。そして、青い顔で、がたがたと震えているガリオス・セテリオスに目を向けた。
(またね、父上。これから、もっと楽しもう。)
ユリウスはサシャフェルトの元へ『飛んだ』。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる