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第一章
21,4人掛けのテーブル
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「とは言え、早く捕らえた方が良いに決まってますからな。秘密裏にですが、捜索は順調に進めています。たかが子供と娘一人。直ぐに見つけてみせますよ。ねぇ、ヘルマン導師。」
そう言ってにやりと笑った。ヘルマン導師と呼ばれた魔術師は、それでも固い顔を崩さなかった。
「私はそれ程、楽観視できませんな。ユリウス殿下とゲオルグ殿の娘・・・リオノーラという名でしたかね?。あの二人が一緒にいるのはまずい・・・。あの娘を、同じベスパの塔に入れたのは失敗でした。あの者こそ、早く殺しておくべきだった。」
「ふん!。ヘルマン殿は、くだらない予言などを信じてらっしゃるようだ。あんなもの眉唾ですよ。」
高官の男がそう言った時、部屋の扉がノックされた。
「何だ!?」
「ベイシュ宰相様。アシュレイ伯爵が来られました。」
王が小さく頷いたのを見て、ベイシュ宰相と呼ばれた高官の男は、アシュレイ伯爵をこちらに案内する様に指示した。
ユリウスは三人が話しているテーブルの、一つ空いていた椅子に腰かけて全ての話を聞いていた。もし、ユリウスの姿が見える者がいたとしたら、四人が会話しているように見えただろう。
(王と宰相と魔術師の秘密の会議か・・・。だったら、もうちょっと面白い話をして欲しいな。これじゃリオが捕まった理由が分かんないじゃん。)
リオがディーハの姫だと気づいたのだろうか?。それにしても、処刑する意味が分からない。ディーハの姫は、あくまでユリウスを救う鍵にすぎない。
テーブルに頬杖をついて、ユリウスは、ヘルマン導師と呼ばれた魔術師に目線を走らせた。
(導師って事は、宮廷魔術師のトップだよね。なのに、僕に気付かないって相当鈍いよ。)
しばらくして、部屋の扉が再びノックされ、開く音が聞こえた。
「これはこれは、皆様お揃いで。ゲオルグ・アシュレイ、王の為に馳せ参じました。」
耳障りな声を上げながら、男がこちらに向かってきた。顔には 下卑た笑みを浮かべて、揉み手をしながらテーブルの三人に挨拶した。
「皆様、浮かない顔ですな。何か心配事でも?」
「ゲオルグ。お前の娘とユリウス殿下が逃げた。」
歯痛でも堪える様な、苦い顔でベイシュ宰相が吐き捨てるように言った。
「は?」
「お前の娘が投獄された日にな!。判明したのは昨夜の事だ。」
「な、なんですと?。リオノーラが何を?」
ゲオルグは言われた事が、まだ良く理解できていないようで、ぽかんとした顔で他の三人の顔を代わる代わる見ている。
(ふうん。看守を眠らせた術が強かったかな?。僕達が居なくなったこと、昨日まで知らなかったんだ。)
馬鹿な奴ら、とユリウスは口端を持ち上げた。
「とりあえず、空いている席に座りなさい。そなたの娘について、もう少し詳しく話を聞くべきであった。聖女があの娘を侍女にしたいなどと言うから、事を急いでしまったのだ。これ以上、レオンハルト殿下に力を付けて欲しくなかったからな。だが・・・、余計まずい事になってしまった。」
ヘルマン導師は溜息をついて、ゲオルグをこちらへと手招きをした。
ゲオルグは腑に落ちない顔をしたまま、いそいそとこちらへとやってきた。ユリウスが座っている椅子の方へと。
(気持ち悪い・・・、近寄るな。)
ユリウスは顔を乗せていた手の指を、わずかに動かした。その瞬間、ゲオルグは突然、崩れる様に横に倒れた。
「ぐっ、ぎゃあ!。足が・・・!足がぁ!」
ゲオルグは倒れたまま大声で悲鳴を上げ続ける。
「ゲ、ゲオルグ殿!?」
ベイシュ宰相が驚いて駆け寄ると、ゲオルグの左足があらぬ方向に曲がっている。完全に骨が折れてしまっていたのだ。
(くくっ。)
皆が慌てふためき、騒然とする場を見ながら、ユリウスは無邪気な笑みを浮かべている。そして、青い顔で、がたがたと震えているガリオス・セテリオスに目を向けた。
(またね、父上。これから、もっと楽しもう。)
ユリウスはサシャフェルトの元へ『飛んだ』。
そう言ってにやりと笑った。ヘルマン導師と呼ばれた魔術師は、それでも固い顔を崩さなかった。
「私はそれ程、楽観視できませんな。ユリウス殿下とゲオルグ殿の娘・・・リオノーラという名でしたかね?。あの二人が一緒にいるのはまずい・・・。あの娘を、同じベスパの塔に入れたのは失敗でした。あの者こそ、早く殺しておくべきだった。」
「ふん!。ヘルマン殿は、くだらない予言などを信じてらっしゃるようだ。あんなもの眉唾ですよ。」
高官の男がそう言った時、部屋の扉がノックされた。
「何だ!?」
「ベイシュ宰相様。アシュレイ伯爵が来られました。」
王が小さく頷いたのを見て、ベイシュ宰相と呼ばれた高官の男は、アシュレイ伯爵をこちらに案内する様に指示した。
ユリウスは三人が話しているテーブルの、一つ空いていた椅子に腰かけて全ての話を聞いていた。もし、ユリウスの姿が見える者がいたとしたら、四人が会話しているように見えただろう。
(王と宰相と魔術師の秘密の会議か・・・。だったら、もうちょっと面白い話をして欲しいな。これじゃリオが捕まった理由が分かんないじゃん。)
リオがディーハの姫だと気づいたのだろうか?。それにしても、処刑する意味が分からない。ディーハの姫は、あくまでユリウスを救う鍵にすぎない。
テーブルに頬杖をついて、ユリウスは、ヘルマン導師と呼ばれた魔術師に目線を走らせた。
(導師って事は、宮廷魔術師のトップだよね。なのに、僕に気付かないって相当鈍いよ。)
しばらくして、部屋の扉が再びノックされ、開く音が聞こえた。
「これはこれは、皆様お揃いで。ゲオルグ・アシュレイ、王の為に馳せ参じました。」
耳障りな声を上げながら、男がこちらに向かってきた。顔には 下卑た笑みを浮かべて、揉み手をしながらテーブルの三人に挨拶した。
「皆様、浮かない顔ですな。何か心配事でも?」
「ゲオルグ。お前の娘とユリウス殿下が逃げた。」
歯痛でも堪える様な、苦い顔でベイシュ宰相が吐き捨てるように言った。
「は?」
「お前の娘が投獄された日にな!。判明したのは昨夜の事だ。」
「な、なんですと?。リオノーラが何を?」
ゲオルグは言われた事が、まだ良く理解できていないようで、ぽかんとした顔で他の三人の顔を代わる代わる見ている。
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馬鹿な奴ら、とユリウスは口端を持ち上げた。
「とりあえず、空いている席に座りなさい。そなたの娘について、もう少し詳しく話を聞くべきであった。聖女があの娘を侍女にしたいなどと言うから、事を急いでしまったのだ。これ以上、レオンハルト殿下に力を付けて欲しくなかったからな。だが・・・、余計まずい事になってしまった。」
ヘルマン導師は溜息をついて、ゲオルグをこちらへと手招きをした。
ゲオルグは腑に落ちない顔をしたまま、いそいそとこちらへとやってきた。ユリウスが座っている椅子の方へと。
(気持ち悪い・・・、近寄るな。)
ユリウスは顔を乗せていた手の指を、わずかに動かした。その瞬間、ゲオルグは突然、崩れる様に横に倒れた。
「ぐっ、ぎゃあ!。足が・・・!足がぁ!」
ゲオルグは倒れたまま大声で悲鳴を上げ続ける。
「ゲ、ゲオルグ殿!?」
ベイシュ宰相が驚いて駆け寄ると、ゲオルグの左足があらぬ方向に曲がっている。完全に骨が折れてしまっていたのだ。
(くくっ。)
皆が慌てふためき、騒然とする場を見ながら、ユリウスは無邪気な笑みを浮かべている。そして、青い顔で、がたがたと震えているガリオス・セテリオスに目を向けた。
(またね、父上。これから、もっと楽しもう。)
ユリウスはサシャフェルトの元へ『飛んだ』。
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