牢で出会った私の王子

優摘

文字の大きさ
上 下
10 / 30
第一章

9,助けたい人

しおりを挟む
(違う・・・さっきまでとは全然。この方はいったい・・。)

つい先程まで、あどけなく笑っていたユリウスと、今のユリウスは全く違う人間の様に思えた。

(私よりも、ずっと大人の様な・・・。)

「リオ、明日はミカとここで留守番していて。危ないから森からは出ないでね。」

そう言ったユリウスは、再び可愛い子供に戻っていた。リオノーラは、ホッとして肩の力を抜いた。気づかぬ内に、緊張で身体に力が入っていたようだった。そして、彼女はある事を思い出して、ハッとした。

「ユリウス様!。明日、セテリオス国に行くのでしたら、私も連れて行って頂けませんか?」

そう言った途端、ユリウスの顔が再び厳しくなった。

「何故?。リオは国では罪人だよ。しかもベスパの塔から逃げ出している。危険だって思わない?。」

「まぁ、それは殿下も同じっすけどね。」

軽口を叩きながらも、ミカも難しい顔をしている。

「見つかるとヤバいのは二人とも一緒でしょ?。でもまぁ、殿下は自分で逃げれるけど、リオノーラさんは危ないですよ。」

二人にそう言われて、リオノーラは俯いた。確かに今、国に戻るのは危ない。でも、リオノーラにはどうしても気になる事があったのだ。

リオノーラの様子を見て、サシャが溜息をついた。

「何か訳が?。」

「えっ・・・?」

「気にかかる事が、あるのですよね。」

「はい、あの・・・実は、私の友人を探したいのです。」

「友人?」

「はい、屋敷でメイドとして働いてくれてました・・・。」

リオノーラは彼女の母が亡くなってからは、使用人と共に働いてきた。その中で、彼女を変わらずお嬢様と呼び、優しくしてくれたのは3人。
炊事場で料理人として働いていたハンナ、庭の手入れをしていたヨハン爺。そして、メイドのアンリであった。アンリは昔、母に付いていたメイドで、リオノーラが使用人の中で働いている時も、何かと気を配り、助けてくれていた。

「私が15歳になった時、父は私を再び伯爵家の娘として、扱う様になりました。それは政略結婚の駒として使うためです。その時、アンリは私付きのメイドになってくれました。」

ゲオルグ・アシュレイ伯爵は、リオノーラの妹のマリアンヌを皇太子の妃にしようと目論んでいた。マリアンヌの器量ならば、それも夢では無いと思っていたのだ。だが、ゲオルグには息子が居ない為、伯爵家を存続させるには後継ぎがいる。その為、リオノーラに婿を取らせ、後継ぎにしようと思ったのだ。

「アルフレッド様は、侯爵家の三男でしたから、お互いに利があったのです。うちのアシュレイ家は父の功績で、いずれ侯爵位を賜ると、もっぱらの噂でしたから。でも、半年前に王太子のレオンハルト様が聖女ルシア様とご婚約なされたので、父の計画は狂ってしまいました。」

だが、時を同じくしてリオノーラの元に、思わぬ依頼が舞い込んだ。それは聖女ルシアがリオノーラを侍女にしたいと言う事だった。

「ですので、アルフレッド様と結婚するまでの間という条件で、私は城で働く予定となっていました。あの事件が起こったのは、その顔合わせも兼ねたお茶会での事だったのです。私が捕まった後、アンリがどうなったのか心配なのです。何故なら、2度目の・・・私の処刑の時、アンリが群衆の中に居るのが見えたのです。彼女はボロボロの服を着ていて・・・、そして、私が断頭台に首を置かれた時、彼女はナイフで自分の胸を・・・。」

その後、すぐ自分も首を刎ねられ、そしてまた時間が戻った。混乱する状況の変化の中、直ぐにアンリの事に思い至らなかった事に、リオノーラは申し訳ない気持ちで一杯になった。

「ふ~ん、なるほどね。リオはそのアンリって人が、今どうしているか知りたいんだ?」

「はい・・・。」

ユリウスは肩肘をついて、リオノーラを見ている。その目からは何の感情も読み取れない。だが、ユリウスは、

「OK、いいよ。その人を探してみよう。なんだったら、ここに連れて来ても良い。」

「えっ?」

「殿下!?」

サシャが渋い顔をしたが、ユリウスは構わず続け、

「姫には身の回りの世話をする者が必要だろ?。ミカとサシャじゃ、そうはいかないじゃん。」

悪戯っぽくそう笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...