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第一章
9,助けたい人
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(違う・・・さっきまでとは全然。この方はいったい・・。)
つい先程まで、あどけなく笑っていたユリウスと、今のユリウスは全く違う人間の様に思えた。
(私よりも、ずっと大人の様な・・・。)
「リオ、明日はミカとここで留守番していて。危ないから森からは出ないでね。」
そう言ったユリウスは、再び可愛い子供に戻っていた。リオノーラは、ホッとして肩の力を抜いた。気づかぬ内に、緊張で身体に力が入っていたようだった。そして、彼女はある事を思い出して、ハッとした。
「ユリウス様!。明日、セテリオス国に行くのでしたら、私も連れて行って頂けませんか?」
そう言った途端、ユリウスの顔が再び厳しくなった。
「何故?。リオは国では罪人だよ。しかもベスパの塔から逃げ出している。危険だって思わない?。」
「まぁ、それは殿下も同じっすけどね。」
軽口を叩きながらも、ミカも難しい顔をしている。
「見つかるとヤバいのは二人とも一緒でしょ?。でもまぁ、殿下は自分で逃げれるけど、リオノーラさんは危ないですよ。」
二人にそう言われて、リオノーラは俯いた。確かに今、国に戻るのは危ない。でも、リオノーラにはどうしても気になる事があったのだ。
リオノーラの様子を見て、サシャが溜息をついた。
「何か訳が?。」
「えっ・・・?」
「気にかかる事が、あるのですよね。」
「はい、あの・・・実は、私の友人を探したいのです。」
「友人?」
「はい、屋敷でメイドとして働いてくれてました・・・。」
リオノーラは彼女の母が亡くなってからは、使用人と共に働いてきた。その中で、彼女を変わらずお嬢様と呼び、優しくしてくれたのは3人。
炊事場で料理人として働いていたハンナ、庭の手入れをしていたヨハン爺。そして、メイドのアンリであった。アンリは昔、母に付いていたメイドで、リオノーラが使用人の中で働いている時も、何かと気を配り、助けてくれていた。
「私が15歳になった時、父は私を再び伯爵家の娘として、扱う様になりました。それは政略結婚の駒として使うためです。その時、アンリは私付きのメイドになってくれました。」
ゲオルグ・アシュレイ伯爵は、リオノーラの妹のマリアンヌを皇太子の妃にしようと目論んでいた。マリアンヌの器量ならば、それも夢では無いと思っていたのだ。だが、ゲオルグには息子が居ない為、伯爵家を存続させるには後継ぎがいる。その為、リオノーラに婿を取らせ、後継ぎにしようと思ったのだ。
「アルフレッド様は、侯爵家の三男でしたから、お互いに利があったのです。うちのアシュレイ家は父の功績で、いずれ侯爵位を賜ると、もっぱらの噂でしたから。でも、半年前に王太子のレオンハルト様が聖女ルシア様とご婚約なされたので、父の計画は狂ってしまいました。」
だが、時を同じくしてリオノーラの元に、思わぬ依頼が舞い込んだ。それは聖女ルシアがリオノーラを侍女にしたいと言う事だった。
「ですので、アルフレッド様と結婚するまでの間という条件で、私は城で働く予定となっていました。あの事件が起こったのは、その顔合わせも兼ねたお茶会での事だったのです。私が捕まった後、アンリがどうなったのか心配なのです。何故なら、2度目の・・・私の処刑の時、アンリが群衆の中に居るのが見えたのです。彼女はボロボロの服を着ていて・・・、そして、私が断頭台に首を置かれた時、彼女はナイフで自分の胸を・・・。」
その後、すぐ自分も首を刎ねられ、そしてまた時間が戻った。混乱する状況の変化の中、直ぐにアンリの事に思い至らなかった事に、リオノーラは申し訳ない気持ちで一杯になった。
「ふ~ん、なるほどね。リオはそのアンリって人が、今どうしているか知りたいんだ?」
「はい・・・。」
ユリウスは肩肘をついて、リオノーラを見ている。その目からは何の感情も読み取れない。だが、ユリウスは、
「OK、いいよ。その人を探してみよう。なんだったら、ここに連れて来ても良い。」
「えっ?」
「殿下!?」
サシャが渋い顔をしたが、ユリウスは構わず続け、
「姫には身の回りの世話をする者が必要だろ?。ミカとサシャじゃ、そうはいかないじゃん。」
悪戯っぽくそう笑った。
つい先程まで、あどけなく笑っていたユリウスと、今のユリウスは全く違う人間の様に思えた。
(私よりも、ずっと大人の様な・・・。)
「リオ、明日はミカとここで留守番していて。危ないから森からは出ないでね。」
そう言ったユリウスは、再び可愛い子供に戻っていた。リオノーラは、ホッとして肩の力を抜いた。気づかぬ内に、緊張で身体に力が入っていたようだった。そして、彼女はある事を思い出して、ハッとした。
「ユリウス様!。明日、セテリオス国に行くのでしたら、私も連れて行って頂けませんか?」
そう言った途端、ユリウスの顔が再び厳しくなった。
「何故?。リオは国では罪人だよ。しかもベスパの塔から逃げ出している。危険だって思わない?。」
「まぁ、それは殿下も同じっすけどね。」
軽口を叩きながらも、ミカも難しい顔をしている。
「見つかるとヤバいのは二人とも一緒でしょ?。でもまぁ、殿下は自分で逃げれるけど、リオノーラさんは危ないですよ。」
二人にそう言われて、リオノーラは俯いた。確かに今、国に戻るのは危ない。でも、リオノーラにはどうしても気になる事があったのだ。
リオノーラの様子を見て、サシャが溜息をついた。
「何か訳が?。」
「えっ・・・?」
「気にかかる事が、あるのですよね。」
「はい、あの・・・実は、私の友人を探したいのです。」
「友人?」
「はい、屋敷でメイドとして働いてくれてました・・・。」
リオノーラは彼女の母が亡くなってからは、使用人と共に働いてきた。その中で、彼女を変わらずお嬢様と呼び、優しくしてくれたのは3人。
炊事場で料理人として働いていたハンナ、庭の手入れをしていたヨハン爺。そして、メイドのアンリであった。アンリは昔、母に付いていたメイドで、リオノーラが使用人の中で働いている時も、何かと気を配り、助けてくれていた。
「私が15歳になった時、父は私を再び伯爵家の娘として、扱う様になりました。それは政略結婚の駒として使うためです。その時、アンリは私付きのメイドになってくれました。」
ゲオルグ・アシュレイ伯爵は、リオノーラの妹のマリアンヌを皇太子の妃にしようと目論んでいた。マリアンヌの器量ならば、それも夢では無いと思っていたのだ。だが、ゲオルグには息子が居ない為、伯爵家を存続させるには後継ぎがいる。その為、リオノーラに婿を取らせ、後継ぎにしようと思ったのだ。
「アルフレッド様は、侯爵家の三男でしたから、お互いに利があったのです。うちのアシュレイ家は父の功績で、いずれ侯爵位を賜ると、もっぱらの噂でしたから。でも、半年前に王太子のレオンハルト様が聖女ルシア様とご婚約なされたので、父の計画は狂ってしまいました。」
だが、時を同じくしてリオノーラの元に、思わぬ依頼が舞い込んだ。それは聖女ルシアがリオノーラを侍女にしたいと言う事だった。
「ですので、アルフレッド様と結婚するまでの間という条件で、私は城で働く予定となっていました。あの事件が起こったのは、その顔合わせも兼ねたお茶会での事だったのです。私が捕まった後、アンリがどうなったのか心配なのです。何故なら、2度目の・・・私の処刑の時、アンリが群衆の中に居るのが見えたのです。彼女はボロボロの服を着ていて・・・、そして、私が断頭台に首を置かれた時、彼女はナイフで自分の胸を・・・。」
その後、すぐ自分も首を刎ねられ、そしてまた時間が戻った。混乱する状況の変化の中、直ぐにアンリの事に思い至らなかった事に、リオノーラは申し訳ない気持ちで一杯になった。
「ふ~ん、なるほどね。リオはそのアンリって人が、今どうしているか知りたいんだ?」
「はい・・・。」
ユリウスは肩肘をついて、リオノーラを見ている。その目からは何の感情も読み取れない。だが、ユリウスは、
「OK、いいよ。その人を探してみよう。なんだったら、ここに連れて来ても良い。」
「えっ?」
「殿下!?」
サシャが渋い顔をしたが、ユリウスは構わず続け、
「姫には身の回りの世話をする者が必要だろ?。ミカとサシャじゃ、そうはいかないじゃん。」
悪戯っぽくそう笑った。
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