牢で出会った私の王子

優摘

文字の大きさ
上 下
1 / 30
プロローグ

事件

しおりを挟む
「リオノーラ!聖女の殺害を企てたことで、お前を捕縛する!」


リオノーラの周りには大勢の憲兵が取り囲んでした。

「そ、そんな!私はそんな事・・・」

「良い訳は無用!取り押さえろ!」


何の釈明もさせて貰えないまま、彼女は憲兵達に取り押さえられ、両腕を背中の後ろで縛られた。


「アルフレッド様!」

リオノーラは婚約者に助けを求める様に、彼の名を叫んだ。
だが、アルフレッドは冷たい目で彼女を見つめ、立っているだけだった。そして彼はリオノーラの妹のマリアンヌの手を取っている。

(どうして・・・!?)


「マリアンヌ!」

リオノーラが妹の名を呼ぶと、マリアンヌは姉に背を向けるように、アルフレッドの胸に顔をうずめた。そして口元に笑みを浮かべているのが垣間見えて、リオノーラは愕然とする。

聖女の称号を持つルシアだけが、王太子のレオンハルトに、必死でリオノーラの無実を訴えていた。だが、レオンハルトは厳しい顔で黙ったままだ。

「ルシア様!信じてください。私ではありません!。・・・アルフレッド様!」

リオノーラの叫びは無視され、突き飛ばされるように、憲兵達に連行された行った。
リオノーラの罪状は、聖女ルシアを毒殺しようと、茶に致死量の毒薬を混ぜたというものだ。

この日、セテリオス王国の宮廷のサロンにて、リオノーラは婚約者のアルフレッドと、妹のマリアンヌと共に、王太子の茶会に呼ばれていた。王太子の隣にはこの度、彼の婚約者となった聖女ルシアが座っていた。

ルシアがお茶を口にしようとした時、アルフレッドが突然それを止めた。ルシアのお茶だけ、色が少し違うと言うのが理由だった。はたして、ルシアのお茶には毒が混入されていた。

そして、メイドの、「お茶を入れる前に、リオノーラがルシアの専用のティーカップを触っていた。」という証言のせいで、リオノーラは捕らえられることになったのだ。

突然の騒動、突然の捕縛、そして連行!。リオノーラは聴取もされず、弁明もさせて貰えず、誰にも会わせて貰えず、そのまま牢に入れられることになった・・・。


婚約者だったアルフレッドの他人を見るような冷たい顔、妹のマリアンヌの笑った口元、王太子レオンハルトの疑うような目、聖女ルシアの彼女を庇う声が、リオノーラの頭の中でぐるぐると回っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...