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第17話 サシェ作り

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 そして当日。
 メアリーと共に孤児院へと訪問し、しばらく子供たちと話をした後、私はある提案をした。

「今からサシェを皆で作ろうと思うの。材料はこちらで全て用意をしてあるわ」

 テーブルの上には、サシェ作りに必要なラベンダーなどのハーブや袋、リボンなどが広げてある。
 下準備は使用人に任せることが大半なのだけれど、今回は女中たちと一緒にお義母様も下準備を行ってくださったのだ。

「わあ、サシェ作り楽しそう!」
「へえ、こうやるんだ」

 皆思い思いに黙々と作業を始めた。
 私は、メアリーの隣で作業をしている女の子の手が止まっているのに気がつくと、小声でメアリーに対して耳打ちをした。

「隣の女の子を手伝ってあげて欲しいの」
「何故、私がやらなけばならばいのかしら」
「メアリーは調香が得意なのでしょう? あなたなら上手に教えられると思って」
「それはそうだけれど……」

 メアリーは小さく息を吐くと、軽く頬を指で撫でてから隣の席の女の子に声をかけた。

「ねえ、やり方が分からないの?」
「うん。……お、お嬢様……⁉︎ ご、ごめんなさい!」

 まだ十歳にもならないくらいの栗色の髪の女の子は、メアリーに対して身体を震わせている。明らかに怖がっているようね。
 けれど、気楽に受け答えた相手が貴族であったから驚くのは無理もないし心配だわ。

「謝らないで。それより」

 メアリーは不織布袋を広げて、ハーブやドライフラワーが載ったお皿を運んできた。

「ねえ、どんな香りが好きなの?」
「わ、私ですか?」
「他に誰がいるというのかしら」
「え、えっと」

 怯えている女の子を手助けしようと立ち上がると、丁度、ほぼ同時にその女の子が声を上げる。

「私は……えっと……、あ! あのお花の香りが好きです」
「ああ、マリーゴールドね。それなら……」

 メアリーは慣れた手つきで、空の小皿にマリーゴールドのドライハーブと香油の入った小瓶をいくつか取り出した。

「ドライハーブだけでは弱いから、香油も使うと良いわね。何種類か見繕ってみたから好きな物を選ぶといいわ」
「わあ……!」

 女の子は目を輝かせた。
 メアリーは相変わらず無愛想で言い方も決して優しくはないけれど、それでも屋敷にいた時よりも幾分か顔色が良くなったように見える。

 そしてサシェは完成し、女の子は笑顔でメアリーと私に対して深くお辞儀をした。

「本当にありがとうございました。とっても良い香りで身につけるのが楽しみです。私の宝物にします!」
「そんな大層なことはしていないわ」
「いいえ、その……とても親切にしてれて、本当にありがとうございました!」

 そう言って女の子は再び深くお辞儀をすると、軽い足取りで退室して行った。
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