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第3部 幸せのために

アーサーと再び街へ

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 それから三日後。
 アーサーの入手した情報によると、トスカの状態は芳しくはないとのことであった。

 幸い意識はあるのだが、高熱が続いているために回復魔法を使用できる宮廷魔法使いが動員されて、魔法をかけ続けているらしい。
 だが、回復魔法はあくまで体力を回復させる効果があるのみで、病の原因を直接取り除けるわけではないために病状の改善には至っていないのだ。

 また、例の魔法の香水の効果は直接病には効かないらしい。
 というのも、皇宮の敷地内に建てられた「魔法研究所」に所属する研究員に香水の解析を依頼したところ、香水の効果は宮廷魔法使いが使用する回復魔法とほぼ同等、もしくは香水の方が若干上との解析結果がでたからだ。

 なので、体力は回復するのだが病状の改善には至っていないのだった。
 ちなみに、先の分析結果を把握した上で実際にググモ熱の患者に使用してみたところ、やはり体力は回復したのだが、病状の改善にまでは至らなかったとのことだ。

 加えて皇都の外れにあるスラムでは、依然としてトスカが感染しているググモ熱が流行しているのだが、最低限の食糧を配給するのみの処置しかなされていないままらしい。
 
 クレアはアーサーが街へ赴く手筈を整えるまで、自分ができることをして過ごそうと皇太子妃教育にいっそう励み、第二宮で働いている者へ庭園で育てた薔薇を使用したクッキーやポプリを作り配るなどをして過ごしていた。
 彼らに手渡す際に、皆に喜んでもらうことができたことをクレアは嬉しく思う一方で、トスカやスラムに住む人々のことが気に掛かっていた。

 そして、クレアはアーサーと共にアンナの実家の魔法道具店へと訪れた。
 二人は共に魔法の杖で変身し、それぞれナディアとリウスという偽名を用いている。アーサーは第二宮の下男だと説明をした。

「あら、ナディアさんこんにちは! あなたが持ってきてくれた水のおかげで、ご覧の通り店は繁盛しているさね! 本当にありがとう‼︎」

 マリの言葉どおり店外にはズラリと人々が列をなし、店内にも客が溢れていた。

「わあ、すごい……! 順調のようですね!」
人伝ひとづてで評判が評判を呼んでね! 店としてはほとんど宣伝はしていないんだけれど、近所のお婆さんやお孫さんたちに配ったら好評で、あっという間にお客さんたちが押し寄せてきたってわけさ」

 そう言って再びマリが接客を始めると、同行しているアンナも手伝い始め、クレアとアーサーも顔を見合わせて各々できることをして手伝った。

 そして、一時間ほどが経ち客がはけるとマリはクレアとアーサーに茶を出して改めて歓迎した。
 マリはアーサーを見ると口元を緩ませてクレアに耳打ちをする。
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