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第2部 自由
茶会の招待状
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「ところで」
「はい」
アーサーは、小さく息を漏らしてから続ける。
「イリス公女から、君宛てに茶会の招待状が届いている」
瞬間、クレアの鼓動が高鳴る。
確かに、イリスは婚約式の日にクレアを茶会に招待したいと言ってはいたが、あれはあくまで社交辞令なのだと思っていた。
まさか本当に招待してくれるとは、とクレアは思った。
「……左様ですか」
「君が少しでも気乗りしなければ断ってくれて構わない。断る旨の手紙は侍女に書かせればよいだろう」
断る。その選択肢は考えていなかった。
そもそも、アーサーと想いを通じているはずのイリスと仮初めの婚約者であるクレアが交流をするのは、アーサーとしてもあまり好ましい事態ではないのかもしれない。
(ここは、やはり断った方がよいのかしら。そもそも貴族主催のお茶会は行ったことがないのに、初めてのお相手が公爵令嬢のイリス様だなんて……)
考えるだけでも気が滅入りそうだった。
だが、婚約式の際のイリスの真っ直ぐな眼差しを思い出すと、自然と負の感情が消えていくように感じた。
「茶会には彼女の婚約者、つまり兄上も同席するそうだ。よって同時に俺も招待を受けている」
「‼︎」
さらりと言っているが、それはとても物騒なことではないだろうか。
そもそも、先ほどアーサーは断ってもよいと言ってはいたが、そのような重要な、謂わば顔合わせの機会を欠席することは好ましくはないだろう。
(今後のことを考えたら、出席した方がよいはずね)
そう考えを巡らせると、再度アーサーに視線を向ける。
(お二人の仲を取り持とうと思っていたけれど、現状でそれは可能なのかしら……)
このブラウ帝国では、婚約式を行った後およそ二年以内には結婚式を挙げるのが一般的であった。
クレアはそのことを婚約式の前に聞いてはいたが、アーサーの「愛することはない」という言葉が気になったし彼とイリスとの関係も判断がつかなかったので、実際に自分が結婚式を挙げるイメージが湧かなかった。
(けれど、アーサー様とイリス様のお気持ちが重要だわ。それに現婚約者の第一皇子様のご様子も知りたいし)
そう考えを巡らせると、クレアは現状の状況把握をすることが必要だと結論に至った。
「承知いたしました。それでは是非出席をさせていただきたいと思います」
アーサーはピクリと眉を動かした。
「……よいのか」
「はい」
「……そうか」
アーサーはどこか歯切れが悪いようだが、それはきっと第一皇子と会うためなのか、それともイリスと婚約者同伴で会わなければならないからなのか。
そのどちらなのだろうと、ふとクレアは思ったのだった。
「はい」
アーサーは、小さく息を漏らしてから続ける。
「イリス公女から、君宛てに茶会の招待状が届いている」
瞬間、クレアの鼓動が高鳴る。
確かに、イリスは婚約式の日にクレアを茶会に招待したいと言ってはいたが、あれはあくまで社交辞令なのだと思っていた。
まさか本当に招待してくれるとは、とクレアは思った。
「……左様ですか」
「君が少しでも気乗りしなければ断ってくれて構わない。断る旨の手紙は侍女に書かせればよいだろう」
断る。その選択肢は考えていなかった。
そもそも、アーサーと想いを通じているはずのイリスと仮初めの婚約者であるクレアが交流をするのは、アーサーとしてもあまり好ましい事態ではないのかもしれない。
(ここは、やはり断った方がよいのかしら。そもそも貴族主催のお茶会は行ったことがないのに、初めてのお相手が公爵令嬢のイリス様だなんて……)
考えるだけでも気が滅入りそうだった。
だが、婚約式の際のイリスの真っ直ぐな眼差しを思い出すと、自然と負の感情が消えていくように感じた。
「茶会には彼女の婚約者、つまり兄上も同席するそうだ。よって同時に俺も招待を受けている」
「‼︎」
さらりと言っているが、それはとても物騒なことではないだろうか。
そもそも、先ほどアーサーは断ってもよいと言ってはいたが、そのような重要な、謂わば顔合わせの機会を欠席することは好ましくはないだろう。
(今後のことを考えたら、出席した方がよいはずね)
そう考えを巡らせると、再度アーサーに視線を向ける。
(お二人の仲を取り持とうと思っていたけれど、現状でそれは可能なのかしら……)
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クレアはそのことを婚約式の前に聞いてはいたが、アーサーの「愛することはない」という言葉が気になったし彼とイリスとの関係も判断がつかなかったので、実際に自分が結婚式を挙げるイメージが湧かなかった。
(けれど、アーサー様とイリス様のお気持ちが重要だわ。それに現婚約者の第一皇子様のご様子も知りたいし)
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「……よいのか」
「はい」
「……そうか」
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そのどちらなのだろうと、ふとクレアは思ったのだった。
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