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第2部 自由
リリーの手腕
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そして十五時頃。
クレアは今日の妃教育過程を終えて講義室を退室し私室へと戻ると、リリーたちはすでに準備をして待ち構えていた。
「それではクレア様。これから始めさせていただきます」
「はい。よろしくお願いします」
クレアは、サラとリリーと共に服が収められている衣装部屋へと移動してドレス選びを始める。
(あまり、飾り立てるのは苦手だわ)
様々な種類のドレスがあるが、クレアはいつも装飾が少なく色味も比較的落ち着きのあるものを選んでいた。
なので、今も装飾がほとんど無いダークブルーのシンプルなデザインのドレスを選んだのだった。
「クレア様。この色味のドレスは如何でしょうか」
そう言ってサラが選んだのは、ピンク色の胸元に大きなリボンがあるタイプのドレスだった。
「い、いえ。ドレスはとても綺麗なのですが、その分私が着たらそぐわないような気がするのです」
「いいえ、そんなことはありませんわ!」
リリーの声に侍女一同は「うんうん」と強く頷く。
彼女たちの熱気ないし情熱に気圧され、クレアは自分ではきっと選ばないだろうピンク色のドレスを選んだのだった。
「とても腕が鳴りますわ!」
意気揚々とドレスの着付けをするサラとリリーらの手によって、クレアは瞬く間に華やかな色合いのドレスに身を包んでいた。
「お飾り物は如何なさいますか?」
そう言ってリリーは宝石箱をさしだした。
それにはクレアの両親が贈ってくれた宝石が多数収められている。
クレアはその箱を見る度に胸が締め付けられるように感じ、ほとんど覚えていない両親や兄妹の姿を思い浮かべるのだった。
ちなみに、クレアの衣装室に収められているドレスの三分の一ほどは祖国の両親から贈ってもらったものなのだが、祖国のことに想いを馳せてしまうと思い身につける勇気は今のところ持ち合わせていなかった。
「それでは、飾り物はこちらを選びます」
クレアが選んだのは、ピンクダイヤが嵌められたネックレスとそれと遂になっているイヤリングだった。
一目で、今身につけているドレスに似合うと思ったのだ。
「まあ、とても素敵な組み合わせかと思いますわ」
サラの弾んだ声を始めとし、一同再び意気揚々とクレアのヘアアレンジや飾り物の装着をし、瞬く間にクレアの着付けは終了し整えられたのだった。
姿見にいつもよりも華やかな色合いの自分が写っていて、自分でも見違えたとクレアは大きく目を見開いた。
「とても素敵でいらっしゃいます!」
満面の笑みでそう言ったリリーの後にサラが続く。
「ええ、きっと皇太子殿下もお気に召すと思いますわ」
「左様でしょうか」
「はい、自身を持ってそう言えますわ」
サラの言葉に多少胸の奥にくすぐったさを感じたが、クレアはこれからアーサーと会うことがいつも以上に楽しみに感じたのだった。
クレアは今日の妃教育過程を終えて講義室を退室し私室へと戻ると、リリーたちはすでに準備をして待ち構えていた。
「それではクレア様。これから始めさせていただきます」
「はい。よろしくお願いします」
クレアは、サラとリリーと共に服が収められている衣装部屋へと移動してドレス選びを始める。
(あまり、飾り立てるのは苦手だわ)
様々な種類のドレスがあるが、クレアはいつも装飾が少なく色味も比較的落ち着きのあるものを選んでいた。
なので、今も装飾がほとんど無いダークブルーのシンプルなデザインのドレスを選んだのだった。
「クレア様。この色味のドレスは如何でしょうか」
そう言ってサラが選んだのは、ピンク色の胸元に大きなリボンがあるタイプのドレスだった。
「い、いえ。ドレスはとても綺麗なのですが、その分私が着たらそぐわないような気がするのです」
「いいえ、そんなことはありませんわ!」
リリーの声に侍女一同は「うんうん」と強く頷く。
彼女たちの熱気ないし情熱に気圧され、クレアは自分ではきっと選ばないだろうピンク色のドレスを選んだのだった。
「とても腕が鳴りますわ!」
意気揚々とドレスの着付けをするサラとリリーらの手によって、クレアは瞬く間に華やかな色合いのドレスに身を包んでいた。
「お飾り物は如何なさいますか?」
そう言ってリリーは宝石箱をさしだした。
それにはクレアの両親が贈ってくれた宝石が多数収められている。
クレアはその箱を見る度に胸が締め付けられるように感じ、ほとんど覚えていない両親や兄妹の姿を思い浮かべるのだった。
ちなみに、クレアの衣装室に収められているドレスの三分の一ほどは祖国の両親から贈ってもらったものなのだが、祖国のことに想いを馳せてしまうと思い身につける勇気は今のところ持ち合わせていなかった。
「それでは、飾り物はこちらを選びます」
クレアが選んだのは、ピンクダイヤが嵌められたネックレスとそれと遂になっているイヤリングだった。
一目で、今身につけているドレスに似合うと思ったのだ。
「まあ、とても素敵な組み合わせかと思いますわ」
サラの弾んだ声を始めとし、一同再び意気揚々とクレアのヘアアレンジや飾り物の装着をし、瞬く間にクレアの着付けは終了し整えられたのだった。
姿見にいつもよりも華やかな色合いの自分が写っていて、自分でも見違えたとクレアは大きく目を見開いた。
「とても素敵でいらっしゃいます!」
満面の笑みでそう言ったリリーの後にサラが続く。
「ええ、きっと皇太子殿下もお気に召すと思いますわ」
「左様でしょうか」
「はい、自身を持ってそう言えますわ」
サラの言葉に多少胸の奥にくすぐったさを感じたが、クレアはこれからアーサーと会うことがいつも以上に楽しみに感じたのだった。
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