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第1部 仮初めの婚約者
初めての買い物
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そして、二人は私服の護衛に囲まれながら市場の喧騒を横目に様々な露店を見て回った。
「でん、リウスさま……、リウスさん! とても良い匂いがするのですが、あれは何でしょうか!」
思わず敬称を再度言い直したので不審に思われていないかと心配になったが、どうやらアーサーの様子は変わらないようだ。
「ああ、あれは鶏の串焼きだよ」
「くし焼き……ですか?」
「ああ、良かったら食べてみるか?」
「よろしいのですか?」
「ああ、問題ない」
そう言ってアーサーは護衛に視線を移した。
護衛は毒を感知する魔道具を手に持っており、それは有害な物質を自動的に感知してくれる物らしい。
そして、アーサーはわりと手慣れた手つきで店主に声をかけて串焼きを二本注文し、銅貨を手渡した。
「はい、熱いから気をつけて」
「……ありがとうございます!」
(当然のように、私の分の串焼きも買ってくださった……)
これまでこんな風に誰かから親切にされたことなどないから未だに免疫がないが、純粋に嬉しかった。
そして市場の隅のベンチに腰掛けて二人で串焼きを口にした。
熱々なので驚いたが、その味は絶品だった。
「美味しいです、皇太子殿下!」
「そうか、良かった。ただ、ナディア、名前」
「ああ、そうでした!」
食べ終えた後は、改めて二人で市場を見て回る。
見たこともない果物や野菜類が店頭に山積みにされた威勢のよい店主のいる店、煌びやかな装飾品が露店にずらりと並ぶ店。
見ているだけで心が躍るようだった。
二人で見て回った後、アーサーはクレアに護衛を残して十分ほど外すと言い残して人垣を分けて進んで行った。
その間手持ちぶさたを感じながらも、周囲の露店を眺める。すると、ふと近くの店に置いてある装飾品が気になった。
「あの、この装飾品は何でしょうか? とても綺麗ですね」
「ああ、これは剣につける装飾品だよ。剣の柄につけて飾るんだ」
「へえ、そうなのですね」
品々を見ると一つ蒼色の石の装飾品が際立って目に入った。アーサーにとてもよく似合うだろう。
「あの、こちらを包んでいただけますか?」
「あいよ!」
気がついたら店主に声をかけていた。
予め侍女から持たせてもらっていた財布を取り出して銅貨を手渡す。生まれて初めて一人で買い物をした瞬間である。
「毎度あり!」
紙袋を両手に抱え胸の高鳴りを抑えきれずにいたが、アーサーの反応を考えるとクレアは楽しみで仕方がないと思ったのだった。
「でん、リウスさま……、リウスさん! とても良い匂いがするのですが、あれは何でしょうか!」
思わず敬称を再度言い直したので不審に思われていないかと心配になったが、どうやらアーサーの様子は変わらないようだ。
「ああ、あれは鶏の串焼きだよ」
「くし焼き……ですか?」
「ああ、良かったら食べてみるか?」
「よろしいのですか?」
「ああ、問題ない」
そう言ってアーサーは護衛に視線を移した。
護衛は毒を感知する魔道具を手に持っており、それは有害な物質を自動的に感知してくれる物らしい。
そして、アーサーはわりと手慣れた手つきで店主に声をかけて串焼きを二本注文し、銅貨を手渡した。
「はい、熱いから気をつけて」
「……ありがとうございます!」
(当然のように、私の分の串焼きも買ってくださった……)
これまでこんな風に誰かから親切にされたことなどないから未だに免疫がないが、純粋に嬉しかった。
そして市場の隅のベンチに腰掛けて二人で串焼きを口にした。
熱々なので驚いたが、その味は絶品だった。
「美味しいです、皇太子殿下!」
「そうか、良かった。ただ、ナディア、名前」
「ああ、そうでした!」
食べ終えた後は、改めて二人で市場を見て回る。
見たこともない果物や野菜類が店頭に山積みにされた威勢のよい店主のいる店、煌びやかな装飾品が露店にずらりと並ぶ店。
見ているだけで心が躍るようだった。
二人で見て回った後、アーサーはクレアに護衛を残して十分ほど外すと言い残して人垣を分けて進んで行った。
その間手持ちぶさたを感じながらも、周囲の露店を眺める。すると、ふと近くの店に置いてある装飾品が気になった。
「あの、この装飾品は何でしょうか? とても綺麗ですね」
「ああ、これは剣につける装飾品だよ。剣の柄につけて飾るんだ」
「へえ、そうなのですね」
品々を見ると一つ蒼色の石の装飾品が際立って目に入った。アーサーにとてもよく似合うだろう。
「あの、こちらを包んでいただけますか?」
「あいよ!」
気がついたら店主に声をかけていた。
予め侍女から持たせてもらっていた財布を取り出して銅貨を手渡す。生まれて初めて一人で買い物をした瞬間である。
「毎度あり!」
紙袋を両手に抱え胸の高鳴りを抑えきれずにいたが、アーサーの反応を考えるとクレアは楽しみで仕方がないと思ったのだった。
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