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第1部 仮初めの婚約者
不意打ちの人質
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現在は苦境に立たされている身ではあるが、クレアは間違いなくブラウ帝国の左隣に位置する小国、ユーリ王国の第三王女である。
クレアは、父である国王オドアケル三世と母である王妃マルゲリータとの嫡出子であり、五歳までは渓谷に囲まれた自然溢れるユーリ王国で育った。
二人の姉や兄と同じように、彼女も乳母や侍女たちに囲まれて大切に育てられたのだ。
兄妹喧嘩をしたことはあっても、誰かから虐げられることなどは全くなく、平穏な日々を送っていた。
だが、そんな彼女の日常は五歳の時に突如として崩れてしまったのだった。
それは、「隣国のブラウ帝国が一方的に宣戦布告を突きつけ王都まで攻めてくる」という内容の一報から始まる。
元々ブラウ帝国とユーリ王国は過去に何度も一戦を交えていたが、ここ一世紀の間は休戦協定を結んでいた。
だが、突如ユーリ王国が不戦条約を破ったとして、使節がその報復を行うと開戦宣言書を突きつけてきたのだ。
国王夫妻はその事態に対処をするべく、王都民の各領地への避難と自分の子供たちを同盟国へと疎開させることを決定し、クレアは乳母のメリッサと共に隣国のコチョウ王国へと向かうことになり馬車に乗り込んだ。
だが、何故かその馬車はコチョウ王国ではなくブラウ帝国へと向かい、クレアと乳母は関所で待ち構えていた憲兵たちに捕らえられ、そのまま皇宮とへと連れて行かれてしまったのだ。
そうして皇帝はそのままクレアを人質として捕縛することを決定し、その引き換えにユーリ王国への宣戦布告を撤回したのだった。
いわばクレアの命と引き換えに祖国ユーリ王国は窮地に一生を得たのだが、……幼いクレアにはそんなことは理解ができなかった。
ブラウ帝国に連れて来られた当初は、現在の皇女宮ではなく、皇宮の広大な敷地内の一角に建つ平家の離れに、帝国へ共に連れて来られた乳母のメリッサと共に暮らしていた。
本来、王族の人質とは大事な政治の駒となり得るので、丁重に扱われるものである。
ましてや、現在のクレアのように食事を蔑ろにされたり、衣服も満足に与えられないような境遇は、帝国のこれまでの歴史や他国の例を鑑みても中々見受けられない。
だが、クレアは慣例からは外れて、離れでは殆ど乳母のメリッサと二人で暮らしていた。
見張りの為に専属の護衛騎士は常に駐在していたが、専属の侍女は付かず自分たちの身の回りは殆ど自分たちで行っていた。
食事に関しても自分達で薪を起こし、配給される食材で料理をして賄っていたのだった。
ユーリ王国では、小国ながらも食事は王城の料理人が作った温かい食事を毎日家族と食堂で和気あいあいと食べていた。
だが離れでは、メリッサがいるとはいえ彼女ばかりに任せるわけにはいかないと、クレアは連れて来られた日の翌日からメリッサと一緒に炊事をした。
不慣れであったので最初はすぐに手が傷だらけになったし、洗濯や掃除、薪割りなども行ったので手は豆だらけになったが皮が厚くもなった。
クレアは、父である国王オドアケル三世と母である王妃マルゲリータとの嫡出子であり、五歳までは渓谷に囲まれた自然溢れるユーリ王国で育った。
二人の姉や兄と同じように、彼女も乳母や侍女たちに囲まれて大切に育てられたのだ。
兄妹喧嘩をしたことはあっても、誰かから虐げられることなどは全くなく、平穏な日々を送っていた。
だが、そんな彼女の日常は五歳の時に突如として崩れてしまったのだった。
それは、「隣国のブラウ帝国が一方的に宣戦布告を突きつけ王都まで攻めてくる」という内容の一報から始まる。
元々ブラウ帝国とユーリ王国は過去に何度も一戦を交えていたが、ここ一世紀の間は休戦協定を結んでいた。
だが、突如ユーリ王国が不戦条約を破ったとして、使節がその報復を行うと開戦宣言書を突きつけてきたのだ。
国王夫妻はその事態に対処をするべく、王都民の各領地への避難と自分の子供たちを同盟国へと疎開させることを決定し、クレアは乳母のメリッサと共に隣国のコチョウ王国へと向かうことになり馬車に乗り込んだ。
だが、何故かその馬車はコチョウ王国ではなくブラウ帝国へと向かい、クレアと乳母は関所で待ち構えていた憲兵たちに捕らえられ、そのまま皇宮とへと連れて行かれてしまったのだ。
そうして皇帝はそのままクレアを人質として捕縛することを決定し、その引き換えにユーリ王国への宣戦布告を撤回したのだった。
いわばクレアの命と引き換えに祖国ユーリ王国は窮地に一生を得たのだが、……幼いクレアにはそんなことは理解ができなかった。
ブラウ帝国に連れて来られた当初は、現在の皇女宮ではなく、皇宮の広大な敷地内の一角に建つ平家の離れに、帝国へ共に連れて来られた乳母のメリッサと共に暮らしていた。
本来、王族の人質とは大事な政治の駒となり得るので、丁重に扱われるものである。
ましてや、現在のクレアのように食事を蔑ろにされたり、衣服も満足に与えられないような境遇は、帝国のこれまでの歴史や他国の例を鑑みても中々見受けられない。
だが、クレアは慣例からは外れて、離れでは殆ど乳母のメリッサと二人で暮らしていた。
見張りの為に専属の護衛騎士は常に駐在していたが、専属の侍女は付かず自分たちの身の回りは殆ど自分たちで行っていた。
食事に関しても自分達で薪を起こし、配給される食材で料理をして賄っていたのだった。
ユーリ王国では、小国ながらも食事は王城の料理人が作った温かい食事を毎日家族と食堂で和気あいあいと食べていた。
だが離れでは、メリッサがいるとはいえ彼女ばかりに任せるわけにはいかないと、クレアは連れて来られた日の翌日からメリッサと一緒に炊事をした。
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