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16章 『秘薬』の開発
第163話 まだ実感が湧かないというか…
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「―も、申し訳ありません、アイド様! ようやく追い付いたと思ったら、まさか全部終わっていたなんて……俺、何の役にも立てませんでした……」
盗賊達を始末した後、俺達が村へと戻ろうとしていた矢先、息を切らせて現れたのはムエイの部下であるミンクだ。まあ、俺やムエイ達と違って鍛えているわけでもなければ、『聖女』という肩書きのあったラヴィのように特別な力があるわけでもないし仕方ない。
俺はそんなミンクに対して、『魔王』として軽く威厳を作りつつも部下を労うように声を掛けてやる。
「いや、俺の方こそすまなかったな。お前の雪辱を晴らす機会を奪ってしまった。本来なら、あいつらの始末はお前に任せるべきだったんだろうが、少し頭に来てな。つい部下の活躍の場を奪ってしまった」
「そ、そんなことは無いです!アイド様がお許しにならなければ、俺のような罪深い者が生きているわけがなかったんですから! ただ、アイド様のご活躍をこの目に入れられなかったことが悔しいですけど……」
「あっけない戦いなんて見ても面白くないだろ? 相手はただの盗賊な上、威勢が良いだけで全く相手にならなかったからな。まあ、あえて褒める点をあげるなら、盗賊の割には少しは統率力があった、というくらいか」
「さ、さすが『魔王様』……。俺なんて簡単に幻術に騙されて『秘薬』を盗まれたのに、それを簡単に倒すなんて……」
そう言いながら尊敬の眼差しを向けてくるミンクに肩を竦めていると、ふと何かに引っ張られような感覚があった。そちらへと視線を向けると、もう一人の『聖女』であるラヴィが遠慮がちな様子で俺の服の裾を掴んでいる姿が見えた。
それを目にした俺は、ラヴィに歩幅を合わせながら言葉を向ける。
「メルトのことか? 安心しろ、約束は守る。もう少ししたら村に着くんだが、あいつはその村の外れにある館で待機しているはずだ。そこまで案内してやるから、悪いがもう少し待ってくれ」
「そ、それは信用しているのですが……そうではないのです」
「ん? なら何だ?」
「そ、その―あ、ありがとうございます!」
そうして感謝を示そうと思い切り頭を下げるラヴィを横目に軽く制すると、俺は会話を続けていく。
「もののついでだ、気にするな。それよりも、俺は『聖女』がなんで『盗賊』なんかの下に居たのかの方が気になるんだが?」
「そ、それは……」
「いや、別に話したくないならそれで良い。あくまで少し気になった、というくらいの話だ。助けたからといって見返りに要求したりはしないから安心してくれ」
「は、はい……」
俺の言葉に安堵するように息を吐くラヴィ。
しかし、しばらくすると今度は形容しがたい表情を浮かべると、俺の顔を横から凝視してくる。。
「……何というか、そこまで見られていると気になるんだが」
「す、すいません!」
「別に謝る必要はないけどな。どうした? 何か言いにくいことでもあるのか?」
そうして俺が言葉を向けると、ラヴィは足をゆっくりと進ませながら遠慮がちな声で返してきた。
「何というか、あなたが『魔王』というのがちょっと……まだ実感が湧かないというか……」
盗賊達を始末した後、俺達が村へと戻ろうとしていた矢先、息を切らせて現れたのはムエイの部下であるミンクだ。まあ、俺やムエイ達と違って鍛えているわけでもなければ、『聖女』という肩書きのあったラヴィのように特別な力があるわけでもないし仕方ない。
俺はそんなミンクに対して、『魔王』として軽く威厳を作りつつも部下を労うように声を掛けてやる。
「いや、俺の方こそすまなかったな。お前の雪辱を晴らす機会を奪ってしまった。本来なら、あいつらの始末はお前に任せるべきだったんだろうが、少し頭に来てな。つい部下の活躍の場を奪ってしまった」
「そ、そんなことは無いです!アイド様がお許しにならなければ、俺のような罪深い者が生きているわけがなかったんですから! ただ、アイド様のご活躍をこの目に入れられなかったことが悔しいですけど……」
「あっけない戦いなんて見ても面白くないだろ? 相手はただの盗賊な上、威勢が良いだけで全く相手にならなかったからな。まあ、あえて褒める点をあげるなら、盗賊の割には少しは統率力があった、というくらいか」
「さ、さすが『魔王様』……。俺なんて簡単に幻術に騙されて『秘薬』を盗まれたのに、それを簡単に倒すなんて……」
そう言いながら尊敬の眼差しを向けてくるミンクに肩を竦めていると、ふと何かに引っ張られような感覚があった。そちらへと視線を向けると、もう一人の『聖女』であるラヴィが遠慮がちな様子で俺の服の裾を掴んでいる姿が見えた。
それを目にした俺は、ラヴィに歩幅を合わせながら言葉を向ける。
「メルトのことか? 安心しろ、約束は守る。もう少ししたら村に着くんだが、あいつはその村の外れにある館で待機しているはずだ。そこまで案内してやるから、悪いがもう少し待ってくれ」
「そ、それは信用しているのですが……そうではないのです」
「ん? なら何だ?」
「そ、その―あ、ありがとうございます!」
そうして感謝を示そうと思い切り頭を下げるラヴィを横目に軽く制すると、俺は会話を続けていく。
「もののついでだ、気にするな。それよりも、俺は『聖女』がなんで『盗賊』なんかの下に居たのかの方が気になるんだが?」
「そ、それは……」
「いや、別に話したくないならそれで良い。あくまで少し気になった、というくらいの話だ。助けたからといって見返りに要求したりはしないから安心してくれ」
「は、はい……」
俺の言葉に安堵するように息を吐くラヴィ。
しかし、しばらくすると今度は形容しがたい表情を浮かべると、俺の顔を横から凝視してくる。。
「……何というか、そこまで見られていると気になるんだが」
「す、すいません!」
「別に謝る必要はないけどな。どうした? 何か言いにくいことでもあるのか?」
そうして俺が言葉を向けると、ラヴィは足をゆっくりと進ませながら遠慮がちな声で返してきた。
「何というか、あなたが『魔王』というのがちょっと……まだ実感が湧かないというか……」
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