40 / 57
16章 『秘薬』の開発
第159話 なら、俺がここから一歩も動かなければ良いわけだ
しおりを挟む
「あ……ぁ……」
男にナイフを突き付けられ、恐怖から肩を揺らして涙を浮かべる少女。よく見れば、村で何度か面識があった子供だ。
近くに落ちていた小さなカゴから何やら草のようなものが散乱しているところを見ると、恐らく親の手伝いか何かで薬草でも取りに行っていたのだろう。
まだ年端もいかない子供を盾にして自分が優位に立ったと思ったのか、男はさらに口を饒舌なものへと変えていく。
「へ、へへ……それ以上近付けば、このガキの首をぶちっといっちまうぜ?」
「く……! 卑怯な……」
子供を人質に取られてしまい、迂闊に動くことが出来なくなったイグンが苛立った様子で声をこぼす。すると、男はそれに気を良くしたらしく、ニヤニヤとした表情を浮かべながら言葉を返してきた。
「あっはっははっは! テメェらみたいな甘ちゃんじゃ、お手上げか~? 見ろよ、このナイフ……俺達ゃこいつで何人も殺してきたんだぜぇ~?」
「ひっ……!?」
そう言って、男がナイフの横を少女の頬に何度か叩き付けて勢い付いた声を上げると、身の危険と恐怖から少女は涙をボロボロとこぼしながら小さく悲鳴を上げる。
それを目にしてさらに高揚した男は、自分の部下へ向けて声を上げた。
「おい! 何ぼさっとしてんだ!? お前らもさっさとこっちに来んだよ!」
「へ、へい!」
「わ、分かりやした!」
リーダーの男に急かされ、必死な様子で集まる盗賊連中。
そんな中、リーダーの男は俺へと視線を向けると、冷や汗を浮かべながらも調子づいた様子で言葉を投げ掛けてくる。
「一歩でもそこから動いてみろ? その瞬間、このガキの喉をぶすっといってやるからよ。ガキの悲鳴ってのも悪かねぇ……言っておくが、俺はガキ相手だからって容赦する男じゃねぇぜ?」
「ほう? なるほど……なら、俺がここから一歩も動かなければ良いわけだ」
「は……?」
高揚感から笑い声を上げていたリーダーの男だったが、俺の言葉に驚いた様子で声を返してくる。口を開いたまま固まっているというあまりにも間抜けなその姿に、俺は首を横に振りながらも、肩を竦めるようにして会話を続けていく。
「どうした? そんな間抜けな声を上げて。やれやれ、敵を前にこんなアホ面を晒すような奴を相手にしなければならない身にもなって欲しいもんだ」
「な―て、テメェ! ふざけたこと抜かしやがって……! つっても、吠えるだけで動けないのは変わらねぇ! 悔しいだろぉ? さ~て、このガキは用済みになったら殺すか~?」
「……っ!?」
「ハッ、怖くて声も出ねぇか? 『助けて、お兄ちゃん』なんてなぁ! アハハハハッハハァ!」
リーダーの男の言葉に残りの二人も下品な笑い声を上げ、盗賊連中は子供を人質にしつつゆっくりと俺から距離を取ろうとする。
男の声に絶望し、声にならない悲鳴を上げる少女を盾にしながらゆっくりと距離を取っていく。
これなら逃げられる―男からはそんな確信に満ちた様子が見て取れた。
だが、それは叶わなかった。
「―おいおい、まだ話は終わってないのにどこに行くつもりだ?」
「………………………………………………………………は?」
俺はそう言うと、男の肩に手を置きながら笑みを浮かべる。
そんな俺の言葉に人質にナイフを突き付けていた男は、怯えるような様子で振り返ってきた。
男にナイフを突き付けられ、恐怖から肩を揺らして涙を浮かべる少女。よく見れば、村で何度か面識があった子供だ。
近くに落ちていた小さなカゴから何やら草のようなものが散乱しているところを見ると、恐らく親の手伝いか何かで薬草でも取りに行っていたのだろう。
まだ年端もいかない子供を盾にして自分が優位に立ったと思ったのか、男はさらに口を饒舌なものへと変えていく。
「へ、へへ……それ以上近付けば、このガキの首をぶちっといっちまうぜ?」
「く……! 卑怯な……」
子供を人質に取られてしまい、迂闊に動くことが出来なくなったイグンが苛立った様子で声をこぼす。すると、男はそれに気を良くしたらしく、ニヤニヤとした表情を浮かべながら言葉を返してきた。
「あっはっははっは! テメェらみたいな甘ちゃんじゃ、お手上げか~? 見ろよ、このナイフ……俺達ゃこいつで何人も殺してきたんだぜぇ~?」
「ひっ……!?」
そう言って、男がナイフの横を少女の頬に何度か叩き付けて勢い付いた声を上げると、身の危険と恐怖から少女は涙をボロボロとこぼしながら小さく悲鳴を上げる。
それを目にしてさらに高揚した男は、自分の部下へ向けて声を上げた。
「おい! 何ぼさっとしてんだ!? お前らもさっさとこっちに来んだよ!」
「へ、へい!」
「わ、分かりやした!」
リーダーの男に急かされ、必死な様子で集まる盗賊連中。
そんな中、リーダーの男は俺へと視線を向けると、冷や汗を浮かべながらも調子づいた様子で言葉を投げ掛けてくる。
「一歩でもそこから動いてみろ? その瞬間、このガキの喉をぶすっといってやるからよ。ガキの悲鳴ってのも悪かねぇ……言っておくが、俺はガキ相手だからって容赦する男じゃねぇぜ?」
「ほう? なるほど……なら、俺がここから一歩も動かなければ良いわけだ」
「は……?」
高揚感から笑い声を上げていたリーダーの男だったが、俺の言葉に驚いた様子で声を返してくる。口を開いたまま固まっているというあまりにも間抜けなその姿に、俺は首を横に振りながらも、肩を竦めるようにして会話を続けていく。
「どうした? そんな間抜けな声を上げて。やれやれ、敵を前にこんなアホ面を晒すような奴を相手にしなければならない身にもなって欲しいもんだ」
「な―て、テメェ! ふざけたこと抜かしやがって……! つっても、吠えるだけで動けないのは変わらねぇ! 悔しいだろぉ? さ~て、このガキは用済みになったら殺すか~?」
「……っ!?」
「ハッ、怖くて声も出ねぇか? 『助けて、お兄ちゃん』なんてなぁ! アハハハハッハハァ!」
リーダーの男の言葉に残りの二人も下品な笑い声を上げ、盗賊連中は子供を人質にしつつゆっくりと俺から距離を取ろうとする。
男の声に絶望し、声にならない悲鳴を上げる少女を盾にしながらゆっくりと距離を取っていく。
これなら逃げられる―男からはそんな確信に満ちた様子が見て取れた。
だが、それは叶わなかった。
「―おいおい、まだ話は終わってないのにどこに行くつもりだ?」
「………………………………………………………………は?」
俺はそう言うと、男の肩に手を置きながら笑みを浮かべる。
そんな俺の言葉に人質にナイフを突き付けていた男は、怯えるような様子で振り返ってきた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
224
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる