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神の芋

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スープの雫は空腹を宥めるように食道を滑っていく。細胞が染められていく。

優しさしかない。

そしてジャッカ芋。
食堂のメニューでは所詮肉の添え物、皿の空白を埋めるだけの炭水化物。ボソボソとしたポテトサラダか、フライしか見ない。フライも最近は胃にもたれるお年頃。

そのジャッカ芋が、ベーコンの旨味を吸って変貌を遂げている。
この滑らかさ。
神か。

「これはやはり何か術をかけられているのではないのか」

「ないですないです。普通の家庭料理の、二日目の薄めたシチューと煮崩れた肉ジャッカです。」

匂いにつられて、フランとジャックが目をギラギラさせてユラユラ寄ってきた。
さながらアンデッド。

「そ、それは、俺たちが貰ったんだ……!天使から。いくら団長といえども渡すもんか……」

セルジオは二人のぶんも持ってくる。

「これを侍女が持ってきたのか」

「ええ。防御魔法のお礼にって。そんな事言われたの初めてですし徹夜で疲れてるし、日頃から女性に免疫ないし手料理に感激して、魂持ってかれたようですね」

「情けない。いくら縁がないからといってそんな事で腑抜けになっては有事のときにどうするのだ」

「とりあえず、仕事への情熱ははね上がったようですよ。宿直を奪い合ってます」


違和感の正体がわかった。魔術師たちがいつものように死んだ目をしていないのだ。

「ところで、セルジオはあれを食べても平気なのか」

「ああ、私既婚者なんで。家庭料理は足りてるんですよね。でもあの芋の染みこみかた、昨夜から煮てたんだと思います。手間かかってますよね」

……既婚者の余裕が憎い。
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