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ゼノン

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結婚式で、パチパチ、と面倒くさそうに拍手をする男、ゼノン。

シューゼル一門のなかでも天才的な頭脳をもち、諜報機関で働いている。機械のようだと周りからは言われている。

祝福してないわけじゃない。
この男は人のことに基本的に興味がない。頭が良いので人より早く最適解が見えていて、他の者が追い付くまで待っているのだ。

結婚など無駄が多くて、する意味がわからない。

ミランダもクリスティーヌも男ができて変わってしまって。みんな恋に浮かれて変わってしまう。

そんなに面白いのだろうか。

披露宴の会場で、鼻をかみながらボロボロ泣いて、心からの拍手をしているように見える女がいた。

赤い髪はリッキー家の特徴だから、親類だろう。
燃えるような赤い髪と気の強そうな目と口。
ボロボロ泣いているけれど目をそらさない。

新郎に惚れてたのかな。
ミランダに向ける目に憎しみは宿っていない。
「あんた、何でそんなに泣いてるんだ」

「ううっ、アラン兄さんが幸せそうで嬉しいんです。
シューゼル家の方とお見受けします。
あんなに素敵なミランダ様がアラン兄さんのことを愛してくださって嬉しいです。
兄さんは口下手で誤解されやすいので」

めっちゃ喋るやないか。

幼い頃に住んでいた母親の領地の方言で内心つっこんでしまった。

関わらない方がいい。

そう思ったのに魔が差した。

ちょうど給仕が通りがかったので飲み物を2つ受け取り、乾杯をした。
女は驚いたようだが、そのあと花が咲くように笑った。

ジェーンというその娘は王宮で騎士をしていると言っていた。 
そう言われてみれば、しっかりと筋肉のついた体つきをしている。
骨格も歪みがない。

解剖図を思いながらジェーンの足先まで視線を巡らして、
これは初対面で不躾だったかと思った。

ジェーンは更に酒を飲んで、一人で喋っていた。
うるさい女は嫌いだ。
離れようとしたが、何杯も付き合わされた。

リッキー家は酒豪が多いらしい。夜通し宴会が続いた。
ゼノンは飲み過ぎて休んでいた。

なんなんだ、この一族は。何もかも効率が悪すぎるだろ。

ジェーンが赤毛の男と笑いながら手合わせをしている。
ムカムカした。
二日酔いには早い。

水を飲んで、階段に座る。
頭が痛い、目の裏がチカチカする。

「ゼノン、大丈夫?」

水を渡してくれたのはジェーン。
「お前ら、飲み過ぎ」

「そうだよね、うちは特殊なのかも、」

そこから知らない奴の話とか二階で休める部屋があるとか、
またこいつはペラペラと、うるさい

と、思ってキスをしたら
目を見開いて口を押さえて黙ったので

あ、成功した、

と思ったあと意識を手放した。


    
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