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32.休暇と仕事と、それからずっと

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「え、ラルフ様二週間もお休みを取られたのですか」

「そう。それまでに仕事を終わらせて、あとは各自の意見をまとめてもらってる。休暇といっても、視察を兼ねて出掛けようとは思っているけど、急ぎではないし君も一緒だ」

「私もですか?」

「そう。港の方の街を見に行きたいんだが、もしかして海産物で苦手な食べ物などあるだろうか」

「大丈夫です!」

侍女さんたちに入浴を手伝ってもらい、ピカピカツルツルにされて夜着を着せてもらいました。
「あら?これも領地の……?」

「そうです。アンリさんが届けてくれました。」

肌触りが柔らかく、ふわふわとしている。露出度は高くないけれど身体に沿うので恥ずかしい。ガウンを上から着た。
寝室に入るときは緊張したけれど、お茶の用意とお酒があってラルフ様も寛いだ格好だったけれど、はっきりと夜着とは見えない服を着ていた。
しばらく話そうということになり、お茶を飲んでいた。

「前は仕事しか頭になかったのに、結婚後は休むことしか考えてなかった」

そう笑う彼を見て、フローラも笑顔になる。

「そういえば、夜会で聞いてしまいました。
仕事のために、結婚するって」

「えっ?私はそんなことを言ってたのか?」

「聞こえてしまったんです。
夜会で、殿下とバルコニーで

仕事のために、婚約を申し込むつもりだって」

ラルフ様は難しい顔で記憶を辿っていた。

「それは、印象が悪かっただろう。
良く受けてくれたね」

「ラルフ様の人柄はなんとなくわかっていましたから何か事情があるのだろうと思っていました」


「……フローラ、情けないと思われるかもしれないが。

それは、
君のことを考えて仕事が手に付かないから、という時期で。

殿下に申し訳ないと話していたのだと思う」

ラルフ様の顔がじわじわと赤くなっている。

「仕事のことだけを考えられるように早く君を手に入れたかった。焦っていたんだ」
そう見つめられて、フローラも熱が集まるのを感じる。

冷静沈着なラルフさまにそんな風に思われていたなんて、改めて嬉しくて恥ずかしい。

許可を問わないし答えないまま、自然と唇が重なった。


翌朝、ラルフは頭を抱えていた。

(可愛すぎて、理性とんだ。
フローラすまない、反省するから怖がらないでくれ)

寝顔を見ながら祈った。


仕事人間のエリート宰相補佐官ラルフは後に最年少で宰相となる。
政策は評価され、愛妻家としても後世に名を残すことになるのだった。


【完】

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