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29. 朝の光のもとで

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ラルフは目覚めて、もう一度目を閉じた。

(なんていい夢だ、フローラが一緒に眠っているなんて。もう少し続きを見よう)

そう思って抱き寄せたら

(柔らか……い?……!!)

目を開けたら、フローラの寝顔がすぐそこに。

(なっ、えっ、これは、俺がベッドに連れこんだん、だよな)

昨夜は話をして、記憶が途切れている。
二人の体の間にクッションや、タオルが詰め込まれて、密着はしていない。
誰かの執念を感じるようだ。
フローラはラルフの肩に頭を預けるような動きをした。

(これは、幸せすぎてマズイ)

昨夜は疲労で寝てしまったが今は体力的に余裕があり、こんな間近で愛しい人を見ているなんて理性が焼ききれそうだ。
結婚したら毎日そうなるとはいえ、まだ未婚。
それに、初夜に怖がらせたくないし
いや、これは建前だ。
がっつかずに余裕ぶりたいし、フローラに『そういうこと』を嫌いになってほしくない。
婚約者なら許されるのかもしれないが、ラルフは今まで慎重に触れ合いを進めてきたのに。
(昨日の俺め、なんということをしてくれたんだ)

このままフローラが目覚めるまで見ていてもいいだろうか。

そろそろ誰かが起こしに来てくれてもいいのに。
いや、もし二人がそういう事態になっていたら気を利かせて起こしにこないか。

ゆっくりとフローラを起こさないように身を起こした。

飲み物を取りに行く。

廊下に出ると、ケイティに出会った。
角を曲がったところに控えていたらしい。
目の下にクマができている。

「フローラ様は、」

「まだ眠っている。」

「あの、フローラ様は大丈夫でしょうか」

ケイティの聞きたいことがわかって、片手で顔を覆った。

「すまない、昨日はフローラにもなんて無礼なことを……、ああ、安心してくれ。誓って何もない。ただ、フローラや彼女を大切に思うご両親や君の信頼を裏切ってしまって反省している」

「いえ、無体なことはなさらないとわかっていますが、その、万が一、と。
フローラ様が驚いてらっしゃったので眠れたかどうかも心配で。」

「クッションを挟んでくれたのは君か?」

「はい、せめてと思いまして」
「助かった。あれがなければ夢だと思って理性が保てなかったかもしれない」

ははは、と気まずい笑いを交わした。

「どうぞお戻りください。お嬢様が目覚めたときにお一人だと不安になられるかもしれません。お茶をお持ちすればいいでしょうか。」

「ああ。頼む」




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