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28. おやすみの威力

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「さっきの、もう一度聞きたくて」
「さっき、とは?」

「『おかえりなさい』って、半分夢の中で聞いたから」

改めてもう一度となると、恥ずかしくなります。
それでもしっかりと目を見て立ちました。
「おかえりなさい、ラルフ様」
「ただいま、フローラ」

やはり恥ずかしく、二人とも笑ってしまいました。
「こんなに嬉しいと思わなかったんだ。疲れて帰ってきて君が迎えてくれるなんて。これが当たり前になるのかと思うと、本当に自分はなんて幸せな男だろうと思う。」

ラルフ様の言葉はいつも率直で、美麗な褒め言葉ではないけれどフローラは好きだった。
「私も結婚したら当たり前になるんでしょうか。今でもドキドキして、どうにかなりそうです。」

並んで座り、お茶を飲んだ。

離れていたのは数日なのに、次から次へと話が尽きなかった。

隣国からニナ王女が参列してくださること。ベンが張り切っていること。

偽物の婚約者のこと。

ドレスの進み具合。

ラルフはニコニコとして話を聞いていた。

「ラルフ様、もう寝られたほうが良いですわ。」

フローラが顔を覗き込むと、ラルフはまばたきした。

「そうだな、また明日もフローラと過ごせるんだから焦らなくてもいいのに。つい。


「体を大切にしてくださいね」

フローラを送ろうとして、ふらついた。

「すまない、情けないな」

「早く横になってください。」

フローラはベッドにラルフの手を引いて連れていった。

「おやすみ、フローラ」

遠慮がちに、抱き締めて、額に軽いキスをくれる。
おやすみの挨拶は初めてで、フローラはまたドキドキした。
見上げると、ラルフは熱を持った目で見ていて。

唇を重ねられた。

少し身動ぎしたら、抱えられたままベッドに倒れた。

「ラルフさま、その、」

寝息が。

がっしりと抱きしめられたまま、ラルフは眠ってしまった。

限界だったのだろう。

幸いドアを開けていたので、様子を見に来た使用人に見つけられて

ラルフの下から身体をずらすのはできたが、ガッチリと腰を抱かれているのはほどけなかった。

もうこのままで明日までいいじゃないですか、と匙を投げられた。

フローラは眠れないと覚悟した
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