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20. カフェにて

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キラキラした目であたりをキョロキョロするミーナは可愛らしく、フローラとケイティも緊張が解れた。
私たちもここが初めてなのに、ミーナのおかげで不慣れに思われずに済みそうだ。

今日の馭者は、普段は屋敷の管理を担当している男性が申し出てくれた。
ミーナの兄のマイクだ。
「もし妹が何か迷惑を掛けたらラルフ様に申し訳がありませんので、屋敷で待っていても胃が痛むのでお願いします」
マイクのようにある程度の年齢になると王都の屋敷に勤めることもあるそうで、作法や言葉使いも洗練されている。
領地も王都の屋敷の管理も連携をとる方が上手くいくとの考えからだそうだ。
 使用人が自分の立場に誇りを持つのは悪いことではないけれど、領地と王都で対立の図式になっていると聞くこともある。
フローラは父にも話してみようと思った。未来ある若者が王都に出てくることを応援するなんて楽しみだ。

フローラ達は案内された席でお茶を楽しんでいた。

「……お聞きになりました?ラルフ様の婚約者の話」

別のテーブルの令嬢が話している。
ケイティとフローラは視線を合わせた。
ミーナがキョロキョロしないように、ケーキをもう一つ注文する。

「とても仲睦まじいご様子で、婚約者の令嬢は小柄で可愛らしい方だそうですわ」

「あら?私は凛とした美人タイプと聞いたのだけれど。」

「どちらにせよ、あの方の耳に入ったらまた騒ぐんでしょうね」

「あの方がラルフ様のお話を自慢されるのはいつものことですが、皆さん嘘だと気づいてますのに」

「憧れだけでしたら、ラルフ様に憧れる女性はたくさんいますわ。小さな子もお年寄りもラルフ様のことを王子様だと思ってましたもの。うちの妹もラルフ様と結婚したいなんて言ってましたが、五歳ですもの。笑って許されるのは子供のうちだけですわ。」

「憧れだけで結婚できるなら私もラルフ様がいいわ。」

「まあ、あなたの婚約者が聞いた怒るわよ」

「現実的にあり得ないことだから、そんなことでは怒りませんわ」

「でも、あの方みたいにラルフ様ラルフ様って子供の我儘のように騒いでいては、婚約者も決まりませんわね」

ケイティが視線で尋ねてきた。
『大丈夫ですか?』

笑って頷く。
ラルフ様が人気なのはわかった。王都でも人気だけれど、領地では王子様扱いなのね。
幼い頃から優秀だったのですもの。

あの方、というのが誰かわかりませんが、熱狂的な令嬢がいらっしゃるということですね。
ラルフ様はご存知なのかしら。

カフェを出ると、向かいに手芸屋が見えた。
「あのお店も見たいので、マイクに伝えて来てもらえる?」
ケイティに言うと、カフェをチラッと振り返った。馬車は少し先に待っている。
「どうしたの?」

「あのカフェでテイクアウトの飲み物を売っているのでマイクさんに買っていこうかと。構いませんか?」

「まあ、それはいいわね。お願いするわ」

ミーナが、慌てる

「そんな、兄まで」

「ふふ。ケイティは気がよくつく自慢の侍女なのよ。」

「ケイティさんもフローラ様も優しくて素敵です……帰ったら父さんや母さんにも、使用人のみんなにも自慢します」

目を潤ませているミーナは可愛かった。

ケイティから飲み物を受け取ったマイクは、両手を振って『そんな、受け取れません!』という仕草をしていたがケイティが『フローラ様からだ』と押しきって渡したらしい。何度もお辞儀をしていた。

「ふふ、面白いわねあの二人」

あら?お似合いかもしれない。誠実そうで繊細そうなマイクと強気でしっかり者のケイティ。

そのあと手芸屋をみてから屋敷に戻った。


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