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17. 婚約者からのお願い

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フローラからの頼みで殿下に相談すると、当時のことを知るのは元宰相ではないかと教えられた。

「すみません、お時間をとって頂いて」

「いやいや、将来有望な若者と昼食を取りながら昔話ができるなんて、長く生きるもんだね」

元宰相は資料室の管理をしている、穏和な方だった。

「ベンが庭園をそのままにしたいと?」

ベンとは年齢も近いようだ。

「はい。王女殿下が愛されたそのまま、と仰っていました。」

「おそらくニナ殿下のことでしょう。」

隣国へ12歳で嫁いだ陛下の姉にあたる方だ。

「顔合わせの時、王女殿下は8歳でした。庭園に逃げ込んだんです。皆で探し回って、ベンが王女を見つけてきた、そうですね、ベンでした。
王女はそのあとは、気丈に振る舞ってらっしゃいました。」

「その時にベンと何かあったのでしょうか」

「王女は、嫁げば帰ってこられないと理解されていました。ベンは幼い王女の身を心配していました。
彼の決意がどういったものかはわかりませんが、変わらず美しい庭を保つことが王女への忠誠心なのかもしれません」

ラルフはフローラの懸念はこれか、と理解した。

無理矢理に庭園の解放を進めてもベンの心からの協力は得られない。

何かを成そうとして全ての人が賛成してくれるなんて事はないのかもしれない。

それでもできる限り、摩擦の少ない方法を探る。

フローラはそういう人だった。
「だって、人と揉めるのなんて一番無駄じゃないですか」

大人しそうな顔をしてバッサリと決断する。

「君たちの結婚式は話題になっておるよ。私の遠縁の娘もお城で結婚式ができるのなら婚約期間を伸ばそうかと話していた」

「やはり女性にとって城は特別ですか」

「そのようだ。ワシらにとっては職場だが、幼い頃から城の話をねだられた。
ただ、王女のドレスやお茶会のことを聞かれても答えられないから、がっかりされていたな」

庭園が解放されたら、幼い子が城に入ってはしゃぐ姿も見られるかもしれない。

そのうち、フローラと子供と遊びに来て

ここで父さん達は結婚したんだよ、

と話したり。

いいな。

なんだかすごくいい。

赤くなったラルフをみて、元宰相もにこにこしていた。

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