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15. アリア様のファンのつどい

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「ローズ!この度は本当におめでとう」

その日、侯爵邸では恒例のお茶会が開かれていた。

「アリア様!」

集まっているのは学園時代からの親友たち。
メンバーは5人程度。

同窓会のようなものだけど、暗黙の了解がある。

現実的な話はここでは控える

学生時代に戻ったように恋の話で盛り上がること

この二点である。
結婚してそれぞれの役割を果たしながらも、学園時代のように架空の恋物語に胸をときめかせたいというのが集まりの主旨なので、自然とそうなった。
他の集まりで会ったときにはそれなりの礼儀にのっとって、マナーを守る。ただしここでは、皆が自然に話す。
○○夫人、なんて旦那の爵位で呼ばれない。

アリア様の書く物語のファンの集いなのだから。

「アリア様の物語のようなことが現実にあるなんて」

「いいですわねえ。仕事しか眼中になかったエリート文官が婚約者を溺愛するなんて」

「私も息子のことは心配していたのよ。それでもまさか、あんな可愛いお嬢さんを連れてきてくれるなんて」

息子の恋路を笑って話せるなんて、成就した今だからこそ、だ。

「しかもアリアさまに縁のある令嬢だなんて」

「フローラも想像力豊かな子なの。私のように物語を創作することはないのだけれど、小さな頃からどこか発想が違うというか。」

「うちの息子もロマンを理解できないと思ってたんだけど、フローラさんに関することなら別みたいなのよ」


ぐふふふふふ、と貴婦人らしからぬ笑い声で場が盛り上がる。
「今の若い方は二人で色々と相談して出掛けたり楽しそうですわね。」

「私たちの頃は両親がもっと見張っていましたもの。」

「お互いに、護衛代わりに兄を連れ出したりして自然な出会いを画策してましたわね」

懐かしいわ、と昔話に花が咲く。
 
「そういえば、メラニー様はアリア様の読者ではありませんの?」

ローズが、こっそり聞いた。
「あの子には色んなパターンの恋愛を構想の段階から話したので、すっかり厳しい批評家のようになってしまって。」
「そうなのですか、もったいない」

「どこか現実的になってしまって。そこがフローラにも影響してるのかしら。

でもね、メラニーも好きな設定があるのよ」

「まあ!お聞きしてもいいかしら」

「男装令嬢や、男性同士の禁断の恋愛モノが大好きなんですの」

「まあ、アリア様、どんどん作風を攻めてらっしゃるのね、また送ってくださいね」


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