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8. 主役が揃いました

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ラルフ様が戻られる晩餐会までには母たちはすっかり打ち解けていました。
私は図書室に案内されて好きなだけ本を読んでいいと言われました。
素敵です。文官を多く排出している侯爵家の図書室は歴史を感じるものでした。多様な本が集められているので図書館といっても良さそうです。

一画には子供の読むような本も丁寧に補修されて残されていました。もしかしたらラルフ様の子供の頃のお気に入りも置いてあるのかもしれません。

「フローラ嬢」

扉を開けて入ってきたのは輝くような笑顔のラルフ様でした。
眩しいです。
慣れません。

「もっと遅くなると思っていました。」

「その予定だったんだが、私が落ち着きがないので殿下に今日は、帰れと言われてしまって。」
照れたように、言うのが可愛らしいです。
ラルフ様は白とピンクのミニバラの小さな花束を差出してくれました。

「なんて可愛いんですの……」

「そう?気に入ってもらえて良かった。」

いえ、花も可愛いのですが、これをラルフ様が持って歩いたのかと思うと、こう、なんというか込み上げてくるものがあります。
婚約者に花を選ぶラルフ様、花を持って歩くラルフ様、他にも恋愛をしているような姿をぜひ拝見したい!
と思いました。

あれ、恋をしているようなラルフ様が私に花を渡して喜んでいる。

今のこの状況は、もしかしてものすごいことなのでは。
ファンとしてはちょっとどころか、鼻血が出そうです。
「フローラ?どうしました?」

「なんだか、信じられなくて」

「急な婚約を受け入れてくれてありがとう。これで私も落ち着くと思うから、色々相談して新生活を始めよう」
ラルフ様はいつも落ち着いてらっしゃると思いますが

あ、縁談が来なくなるので今までより落ち着けるということでしょうか

「……はい」

そのあと、晩餐会が始まりました。
和やかに会話が交わされ、少しお酒を、飲まれた男性方はより打ち解けられたようでした。


フローラの聞こえないところで、ラルフは母から注意されていた。

「あなたがフローラさんに、相手にされなかったらどうしようかと思ったわ」

「失礼な。これでも何度も彼女に接触して親しんできたので断られないと思っていましたよ」

「それでも騙したようなものじゃないのですか?」

「正式に申し込んだのだから人聞きの悪いことは言わないでください」
「あんな素直なお嬢さんなら、腹黒いあなたの策略には気づかないだろうし、チョロいって思ってたんじゃないでしょうね。」

「母上は息子をなんだと思っているのですか。誠意の結果やっと婚約までこぎ着けた息子になんてことを」

「だって、あなたのことを執着心が薄いって思ってるみたいよ、フローラさん」

「母上、彼女は本当に手強いんですよ」

フローラが婚約を受け入れてくれたのはお人好しだからだと思っている。彼女からは恋愛感情の熱は感じない。それでも良いと思っていた。
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