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6. うちの息子が申し訳ない
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婚約の挨拶にラルフ様が来てくださることになっていたのですが、日にちがなかなかまとまらず。
両家の顔合わせも兼ねて侯爵家での晩餐会となりました。
私たちは午後のお茶会から親睦を深め、そこにお仕事を終えたラルフ様が帰宅されるということになりました。
きっとこれも異例なのですが侯爵家からの提案を断わるわけにもいきません。
それに、どんな形でも緊張するのなら一度に済むほうがいいと思いました。
父と母は侯爵家の夜会や茶会に参加したことがあるそうです。
いつ見ても素敵なお庭ねえ、と母は喜んでいました。
玄関ホールで侯爵夫人が待ってくださっていました。
「まあ、侯爵夫人!お待たせして申し訳ありません」
母と私が頭を下げると、
侯爵夫人が母の手を取りました。
「よく来てくださったわ。私、アリア様からお話をよく聞いていたのでメラニー様もフローラ嬢も初めてお会いした気がしませんの。どうぞ気楽になさってね」
メラニーというのは母で、アリアというのは母の従姉にあたります。侯爵夫人とは学園からの親友で今でも親しくされているそうです。
ラルフ様が真面目な方なのでお義母様になられる方も誠実な方だろうなと思っていたのですが、厳格な方という場合もあるなと思っていました。
でもとても柔らかな雰囲気の方でした。
侯爵と父も会話をしていて、和やかに庭園でお茶会が始まりました。
和やかに始まろうとしたのですが、
侯爵と夫人が真剣な顔で頷いたあと
「この度はうちの息子がすみませんでした!!!」
と頭を下げられました。
「頭をお上げになってください」
あわててこちらの三人が言ってもそのままで、周りを見渡しても使用人の方まで深々と、頭を下げていらっしゃいます。
「フローラ、こんなに謝られるような、もしや、まさかとは思うが彼と、まさかもう?」
父が涙目で震えています。
「まあ、若い二人が合意の上で更にきちんと縁を結んでくださったのですから、ねえ」
母も乾いた声で震えています。
「え?」
侯爵夫妻も一旦驚いて顔を上げて、
「ええっ?」
夫人は侯爵に寄りかかりました。
「まさか、そんな、こんな急に事を進めて仕事ばかりしていると思ったらやることやってるなんて、なんてお詫びしたら」
「あのっ!誤解です!
ラルフ様とは、夜会以外で個人的にお会いしたことはありませんから」
ベテラン侍女がお茶のワゴンを運んできた。
「僭越ながら、皆様一度落ち着かれてはいかがでしょうか。お茶をどうぞ。その後にそれぞれの情報のすり合わせをなさるのがよろしいのでは」
「その方が良さそうね。取り乱して申し訳なかったですわ。とりあえず、うちの息子がこの場にいないことが誤解の原因なのだけれど。」
夫人がため息をつきながら席に座った。
「仕事ばかりでしようのない息子ですが、皆様とは末長いお付き合いになるわけですから、誤解をゆっくり解くのも良いでしょう。さ、うちのシェフ自信作の焼き菓子です。温かいうちにどうぞ」
侯爵もすすめてくれた。
両家の顔合わせも兼ねて侯爵家での晩餐会となりました。
私たちは午後のお茶会から親睦を深め、そこにお仕事を終えたラルフ様が帰宅されるということになりました。
きっとこれも異例なのですが侯爵家からの提案を断わるわけにもいきません。
それに、どんな形でも緊張するのなら一度に済むほうがいいと思いました。
父と母は侯爵家の夜会や茶会に参加したことがあるそうです。
いつ見ても素敵なお庭ねえ、と母は喜んでいました。
玄関ホールで侯爵夫人が待ってくださっていました。
「まあ、侯爵夫人!お待たせして申し訳ありません」
母と私が頭を下げると、
侯爵夫人が母の手を取りました。
「よく来てくださったわ。私、アリア様からお話をよく聞いていたのでメラニー様もフローラ嬢も初めてお会いした気がしませんの。どうぞ気楽になさってね」
メラニーというのは母で、アリアというのは母の従姉にあたります。侯爵夫人とは学園からの親友で今でも親しくされているそうです。
ラルフ様が真面目な方なのでお義母様になられる方も誠実な方だろうなと思っていたのですが、厳格な方という場合もあるなと思っていました。
でもとても柔らかな雰囲気の方でした。
侯爵と父も会話をしていて、和やかに庭園でお茶会が始まりました。
和やかに始まろうとしたのですが、
侯爵と夫人が真剣な顔で頷いたあと
「この度はうちの息子がすみませんでした!!!」
と頭を下げられました。
「頭をお上げになってください」
あわててこちらの三人が言ってもそのままで、周りを見渡しても使用人の方まで深々と、頭を下げていらっしゃいます。
「フローラ、こんなに謝られるような、もしや、まさかとは思うが彼と、まさかもう?」
父が涙目で震えています。
「まあ、若い二人が合意の上で更にきちんと縁を結んでくださったのですから、ねえ」
母も乾いた声で震えています。
「え?」
侯爵夫妻も一旦驚いて顔を上げて、
「ええっ?」
夫人は侯爵に寄りかかりました。
「まさか、そんな、こんな急に事を進めて仕事ばかりしていると思ったらやることやってるなんて、なんてお詫びしたら」
「あのっ!誤解です!
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「僭越ながら、皆様一度落ち着かれてはいかがでしょうか。お茶をどうぞ。その後にそれぞれの情報のすり合わせをなさるのがよろしいのでは」
「その方が良さそうね。取り乱して申し訳なかったですわ。とりあえず、うちの息子がこの場にいないことが誤解の原因なのだけれど。」
夫人がため息をつきながら席に座った。
「仕事ばかりでしようのない息子ですが、皆様とは末長いお付き合いになるわけですから、誤解をゆっくり解くのも良いでしょう。さ、うちのシェフ自信作の焼き菓子です。温かいうちにどうぞ」
侯爵もすすめてくれた。
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