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10.企みだらけの夜

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「リュートさんっ、」

涙を浮かべているメイを見て、少し罪悪感が浮かんだ。

護衛はとっくに倒れている。

こうなるとわかってて、リュートは。

「大丈夫だ、アイツは接近戦は強いし、夜の森も得意だ」

先輩の騎士がそう言って、カイに様子を見てくるように言う。
そろそろ、音がやんだから。

まあ、カイも夜目の利くほうなので連れてこられたわけだが。というのは建前で。先輩騎士がメイを口説かないように見張りとしてリュートに頼まれた。

その本人は。

「あ、カイ~!こっち!」

メイと同じ髪色のカツラを着けて、ワンピースを着ている。
囮となっていた。

そこまでする?というくらい化粧もして、ノリノリじゃねえか。
とその場にいた騎士全員が思った。
「いち、に、さん、三人か」

カイは縄で縛っていく。

「むこうの、護衛に入れ替わってた奴もね」

「こえーな。貴族。やっぱり関わりたくねえな」

「ねえ、メイさんちゃんとわかってた?怖がってた?」

「まあ、そりゃな。心配してたぞ」

「本当に俺のこと弱いって思ってたからね!ちゃんと守れるし男らしいってとこ見せないと。」

その格好で言われてもな。

その後、屋敷まで送り届けた。
襲撃してきた男たちは元婚約者が、雇ったものだった。そして護衛も情報を流していた。
シェリーメイナにずっと懸想していて、噂通りに傷物になれば自分にもチャンスがあると思ったらしい。脅かすだけだと言われて、男たちに協力したらしい。

差し向けられた分かりやすい悪意よりも信頼していた者の裏切りが、メイを傷つけた。

「お父様、お母様。私の評判はもう、落ちるところまで落ちてますわね」

「シェリー、今はそんなこと気にしなくても」

「今後のことはしっかり考えますね。最後のわがままとして、助けてくれた騎士様にお礼をしたいと思います。以前から私の作る薬を誉めてくださってたので、差し上げたいのです」

「もしかして、その騎士様のことを?」

「いいえ、そんな」

「背の高い金髪の方かしら。それとも、あの若い黒髪の彼もエスニックで将来すてきになりそうね」

「お母様、違います。
あの、ワンピースを着ていた彼です」

「え!」

「囮になってくれたんですの。」

「普段からそういう格好の方ではないのね?とても可愛らしかったから女性騎士様かと」

「そう!可愛いですよね!」

コホン、と伯爵が咳払いをした。

「シェリー?お前本当に反省してるんだな?」

「してますとも!」

「何か企んでないか?」

「反省してますわ。男性なんて信用できないくらい落ち込んでます!」

「落ち込んで握りこぶしを突き上げる娘があるかー!?」

「いいから父上はガッポリ慰謝料を請求して、母上は社交界にアイツの噂をとっとと流してきてください」

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