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誤解の果てに

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グレンのことをどう思っているか、と聞かれたら答えないといけないけれど、アランの表情に見とれてしまって考えがまとまらない。
大きな手を膝で握りしめているのも、寄せられた眉も、引き結んだ口も、真剣にミランダに問いかけている。それなのに答えを聞きたくないようにも見える。
怖がってるみたいに。
怖がる?
アラン様が?

いつも穏やかで落ち着いているのに。
緊張感が増してくる。早く答えないとこれではグレンと何かあると思われてしまうかもしれない。

「私は、アラン様のことを好きだと言いました」

「それは、ミランダ嬢がそのように思ってくださるのはありがたいです。結婚に向けて私と打ち解けようと努力しているのもわかっています。本当に嬉しいけど、でも、あなたが無理をしてるのではないかと思って。」

努力、と言われて少し思い当たることがあった。シューゼル家でも、ミランダには目立った経歴はなかった。でも努力してきた。
それが当たり前だったから。
アラン様に気に入られたいと努力するのは当たり前のことだった。

「どうして、急にそう思ったのですか。」

「急に、ではなくて本当は不安でした。今日はグレン殿と話をしている時の笑顔と、何か、顔を赤らめているのを見て情けないのですがどうしようもないくらい」

「それは、グレンがっ……」

「ほら、また赤くなっている。
こんなに心の狭い男で申し訳ないけど、ミランダ嬢を誰にも渡したくない」

「本当に、違うんです。グレンが」

「先に謝ります。ごめんなさい」

向かい合わせに座っていたアランがミランダの横に移ってきて肩を
抱き寄せた。
アランの胸に顔を埋めている。
「他の男の名前を聞くのに耐えられません。赤い顔をみるのも。俺が冷静になるまでしばらくこのままでいてください。」

頷くのが精一杯だった。アランの腕も胸も硬くて温かくて、くらくらした。今まで密着しないように加減をしてくれていたんだと解った。
でも、これだけは言わなくては
「顔が赤いのはアラン様のせいです……さっきも、アラン様のことを言われてそれで」

ぐっと肩を持って顔を覗き込まれた。

「何を言われたんですか、反対されました?」

「そうじゃなくて、言われて想像してしまって、その、アラン様の腕が逞しくてダンスの時も支えるのに困らないだろうって言われて」

ミランダはますます自分の体温が上がっていくのを感じた。
「本当に従兄弟とは何も特別な関係ではなくて、あの人は誰に対しても悪戯好きでうちの妹のほうが相性が良いです。私と兄はいつも諌めていました。」

「すみません、みっともない嫉妬をしてしまいました。」

「……嫉妬」

「重いですよね、お見合いをしたばかりでこんなに独占欲を持つなんて。」

「いいえ」

むしろ、
「私もアラン様を独占したいです」

回された腕に頬を預けると、アランが喉を鳴らした。

顔が近づいて、ためらいがちに唇が重なった。
角度を変えて二度、三度と確かめるように軽いキスが落とされた。

ミランダが嫌がっていないのがわかると、頬を両方から包んでキスをした。
「アラン様、すき」

息継ぎの間にそう漏らすと、アランはミランダを膝にのせた。横座りのミランダの背を腕に預け、後頭部をもう一方の手のひらで押さえてまたキスをする。

今までになく少し強引で、体が熱くて。腕にガッチリと囲まれたまま降りてくる唇を受け止めていた。

「早く結婚したい」

そう囁いて耳にキスをして、唇を甘噛みした。

ミランダは、恥ずかしくて首もとに頬擦りをして頷いた。



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