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ミランダは体を鍛えたい

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シューゼル家の図書室は少し有名である。
地方の図書館と比べても蔵書数だけでも多いだろう。
とくに、代々の学者の残した写本や原稿、初版本など、第一級の資料が揃っている。

ミランダからすると叔父にあたるシューゼル家の当主はいつでも一族を快く迎えてくれた。
分家筋であるミランダのことも可愛がってくれている。

探したい本があってやってきた。

家の図書室の本は読み尽くした。
妹を頼って王宮図書館に行くことも考えたけれど、やめた。

初夜の準備や男性の体に関することの知識を増やしたかった。
妹に知られたくはない。
わからないから不安なのであって、知ることでアランと良い夫婦になれると思った。

図書室で何冊も、読みふけり記憶していく。仮説をたててあとは実践と、修正、

「ミラ、熱心だな」

声をかけられて飛び上がりそうになった。

「グレン」

従兄弟のグレンだ。

年はミランダより2つ上。昔はよく遊んでいた。
といってもイタズラをするのはグレンとクリスティーヌで、ミランダと兄のフランツは止めていた。

グレンとクリスティーヌに縁談が持ち上がったことがある。

ミランダのほうが年が近いが、クリスティーヌのお守りができるのはグレンだと思ったのだろう。

王子殿下がサロンに行ったのはグレンの紹介だ。
「なかなか刺激的な本を読んでるな」

「勝手に見ないでよ……」

「『夫に愛される閨の作法』『子作りのための部屋作り』『精力のつく食事』……お前の婚約者って不能なの?」

「違うわ!
……多分、違うけど男性は気分が乗らないときだってあるんでしょう?」

「俺はないけど。好きな女といたらずっと触れたくなるし、それ以上だって」

「わー!そういうのはいいから!」

「お前の婚約者って騎士のアラン・リッキーだろ?真面目そうだもんな。あんまりそっちが上手そうではないな、確かに」

「失礼ね!勝手に決めつけないで」

「ふーん」

ニヤニヤしている。

「真面目でなにが悪いのよ」

「悪くないけど、不安だからそんな本を調べてるんだろ?」

「……知ってて損はないもの。体力だって付けないと、騎士の相手は大変だからと聞いたわ。
あなたやクリスみたいに、悪戯をしても面白ければ良いって、私は思えないの。いつも真面目で悪かったわね。つまらないって言われてたけど、アラン様といると安心するの」

「それはもう惚れてるんだろ」

そう言われて、顔に熱が集まった。

「なんだよ、可愛い顔するようになっちまって」
「変なこと言わないで、私たちは政略結婚だし、別に」

「ふーん」

ミランダが普段の状態だったら気付いていただろう。グレンがニヤニヤしている時は悪巧みをしていると。

次の夜会の時に珍しく参加したグレンが話しかけてきた。

ミランダの飲み物を取るためにアランが離れた一瞬を狙って。
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