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清々しいほどに何もない

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「お義父さん」

「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!

って、これ、アイリスの結婚のときに言いたかったやつ!」

「多分そんな気がしたので、言わせてもらいました。もし、誰かが本当にアイリスと結婚するとしても僕の方が先に言われたんだって
少しでも優位に立てる気がして」

「それでいいの?君。
アイリスの初めてじゃなくて僕の初めてなんだけど??」

「僕の初めては全部アイリスなので、問題ありません」

「えっ?」

「えっ?」

門で立ち話をしていたが、ボルクは肩をつかまれた。

「入ってゆっくり聞かせてもらおうか」

「そういうのじゃなあです!痛いです!お義父さん」

「お義父さんじゃない」

ズルズルと応接室に引きずられた。

「だから、アイリスの前では冷静でいられなかったし知識なんか役に立たなかったし、うまく話せないしみっともないし、そういうことが、全部初めてだったんです」

「なーんだ!帰っていいよ」

「見舞いにきたんです。せめてドア越しにでも話をさせてもらえませんか」

「やだ」

大人なのに!やだ、って!
ボルクはアルダールの言葉を思い出した。
確かに手強いよ兄さん

その頃、良くできたメイドがアイリスにこっそりボルクの来訪を伝えていた。

「まさか、」

「いま応接室で坊っちゃんが追い返そうとしています」

「それはダメよ、せっかく来てくれたのに」

「せめて、大丈夫だと姿をお見せしたらどうですか」

「でも、こんな格好で」

「大丈夫ですよ。念のためにショールは厚めのものにしましょうか」

少しだけ髪をとかして、一階に降りた。

シーカー子爵はボルクと話をしているうちに、不器用さとか真面目さがだんだんと面白くなってきた。
(アイリスの生真面目さとこの子だったら恋人になるまでに百年くらいかかりそう)

アルダールより良いかもしれない

ノックがあり、アイリスが来ることをメイドが告げた。

とたんに緊張するボルク
見舞いの花を握りしめている。
果物も後でアイリスに届けられるだろう。
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