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番外編③ エドガーの上司の苦悩
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私は平凡な中年。胃薬が手放せない中間管理職。
文官としてコツコツ勤務して真面目だけが取り柄だと自覚している。
そこに、ものすごい期待の新人が配属されてきた。
王国始まって以来の神童、天才の名を欲しいままにしているエドガー君だ。
天才に仕事を教えるなんて、無理だって言ったのに。
学生時代の成績と実務は違うから社会のルールを教えてやってくれ、気楽にね、と肩ポンポンされて断りきれなかったけれど。
エドガー君ものすごく実務もできる人でした。
与えた仕事は速いし、余った時間で雑用もしてくれるし、ごみ捨てしやすいようにゴミ箱の設計もしてくれたり
文書の清書もしてくれたり
「ここ、間違ってます」
誤字もそっと教えてくれた!
恥ずかしい。
何も教えられないどころか助かっている。
エドガー君、いやエドガーさん。
謙虚に淡々と仕事をこなしていく。社会人の鑑!
人生何周目ですか。
「室長、明日の会議についてですが、資料をまとめておきました。あと来客予定があるのですが会議が遅れた場合はお待ちいただきますか?それともこちらの過去の例をご覧いただいて、できる範囲で説明しておきましょうか」
エドガー様!秘書より有能!
さすが神童!ていうか神!
そんなエドガー君が騎士の新人と話しているのを見た。
お友達?
よし、ここは上司らしい包容力を見せてあげよう
「やあ、エドガー君、お友達と話してたのかい?少し早いけど休憩してきてもいいよ?」
「違います。お気遣いなく!」
地を這うような声で返された。
あれ?
エドガー君も目付き悪いけど、新人騎士くんもものすごい形相になってしまった。
キラキラしたオレンジ色の頭の目立つ、綺麗な子だった。
「あれ?もしかして女性騎士だった?それは失礼なことを。邪魔してごめんね」
「は?」
オレンジ君は男の子だった。
「お前、人の上司にその態度とは常識知らずだな。そんなやつを家に入れるわけにいかない」
エドガー君、そんなに感情丸出しのところ見たことないよ?
胃が痛い。
そのあとも二人のやり取りを何度かみた。
「遠征から帰ってきたぞ!土産は今日帰りに家に持っていくからな!」
「今持ってくればいいだろう!」
「家にいかないと意味ないだろ」
「会わせるわけないだろ」
えーっと、仕事は?
エドガー君は、あのオレンジ頭のアルフレッド君が来たらものすごく仕事を早く片付けてそわそわしている。
はっ、これはもしかして
「違いますからね?」
ハインツ君がお茶を入れてくれる。
彼もほんとに気の利く良い子で。
「室長、あの二人が実は仲良しで、世を忍ぶ仮の姿としてケンカしてるんじゃないかと思われたんでしょう」
「え?心読めるの?」
「わかりやすいだけです。
まあ、あの二人良いコンビですよね。
本人たちに言ったら嫌がると思いますけど」
その後、帰宅して。
「エドガー、これ、遠征先の温泉の成分入りのハンドクリーム。手肌に良いらしいよ」
「そうか、ありがとう。使わせていただく(棒読み)
帰れ」
「お前にハンドクリーム贈るわけないだろ」
「書類仕事で手が乾燥して困ってたところだ!感謝する!さあ帰れ」
「あと、菓子もある」
「(使用人)みんなにやったら喜ぶな。帰れ」
門の前でこんなやり取りをしている。
「そろそろ、帰ってくるんだろ」
「だとしてもお前には関係ないな」
「くっ、頼む。話しかけないから一目でいいから、遠くからこっそり見るか同じ空気を吸わせてくれ」
「騎士が軽々しく土下座するな!しかも気持ち悪い!」
「次は王都の限定スイーツを持ってくるからな!覚えとけ」
執事たちはこの二人のやり取りに慣れてきていた。
アルフレッドの馬車が見えなくなってから、エリーゼを乗せた馬車が邸に戻ってきた。
「あら?お兄様どうされました」
「いや、ただの客人の見送りだ。お帰り。いつ帰ってくるかとヒヤヒヤしたよ。」
「ごめんなさい。遅くなったわね。道が悪いらしくて、少し遠回りになったの。」
「さ、着替えて夕飯にしよう。」
文官としてコツコツ勤務して真面目だけが取り柄だと自覚している。
そこに、ものすごい期待の新人が配属されてきた。
王国始まって以来の神童、天才の名を欲しいままにしているエドガー君だ。
天才に仕事を教えるなんて、無理だって言ったのに。
学生時代の成績と実務は違うから社会のルールを教えてやってくれ、気楽にね、と肩ポンポンされて断りきれなかったけれど。
エドガー君ものすごく実務もできる人でした。
与えた仕事は速いし、余った時間で雑用もしてくれるし、ごみ捨てしやすいようにゴミ箱の設計もしてくれたり
文書の清書もしてくれたり
「ここ、間違ってます」
誤字もそっと教えてくれた!
恥ずかしい。
何も教えられないどころか助かっている。
エドガー君、いやエドガーさん。
謙虚に淡々と仕事をこなしていく。社会人の鑑!
人生何周目ですか。
「室長、明日の会議についてですが、資料をまとめておきました。あと来客予定があるのですが会議が遅れた場合はお待ちいただきますか?それともこちらの過去の例をご覧いただいて、できる範囲で説明しておきましょうか」
エドガー様!秘書より有能!
さすが神童!ていうか神!
そんなエドガー君が騎士の新人と話しているのを見た。
お友達?
よし、ここは上司らしい包容力を見せてあげよう
「やあ、エドガー君、お友達と話してたのかい?少し早いけど休憩してきてもいいよ?」
「違います。お気遣いなく!」
地を這うような声で返された。
あれ?
エドガー君も目付き悪いけど、新人騎士くんもものすごい形相になってしまった。
キラキラしたオレンジ色の頭の目立つ、綺麗な子だった。
「あれ?もしかして女性騎士だった?それは失礼なことを。邪魔してごめんね」
「は?」
オレンジ君は男の子だった。
「お前、人の上司にその態度とは常識知らずだな。そんなやつを家に入れるわけにいかない」
エドガー君、そんなに感情丸出しのところ見たことないよ?
胃が痛い。
そのあとも二人のやり取りを何度かみた。
「遠征から帰ってきたぞ!土産は今日帰りに家に持っていくからな!」
「今持ってくればいいだろう!」
「家にいかないと意味ないだろ」
「会わせるわけないだろ」
えーっと、仕事は?
エドガー君は、あのオレンジ頭のアルフレッド君が来たらものすごく仕事を早く片付けてそわそわしている。
はっ、これはもしかして
「違いますからね?」
ハインツ君がお茶を入れてくれる。
彼もほんとに気の利く良い子で。
「室長、あの二人が実は仲良しで、世を忍ぶ仮の姿としてケンカしてるんじゃないかと思われたんでしょう」
「え?心読めるの?」
「わかりやすいだけです。
まあ、あの二人良いコンビですよね。
本人たちに言ったら嫌がると思いますけど」
その後、帰宅して。
「エドガー、これ、遠征先の温泉の成分入りのハンドクリーム。手肌に良いらしいよ」
「そうか、ありがとう。使わせていただく(棒読み)
帰れ」
「お前にハンドクリーム贈るわけないだろ」
「書類仕事で手が乾燥して困ってたところだ!感謝する!さあ帰れ」
「あと、菓子もある」
「(使用人)みんなにやったら喜ぶな。帰れ」
門の前でこんなやり取りをしている。
「そろそろ、帰ってくるんだろ」
「だとしてもお前には関係ないな」
「くっ、頼む。話しかけないから一目でいいから、遠くからこっそり見るか同じ空気を吸わせてくれ」
「騎士が軽々しく土下座するな!しかも気持ち悪い!」
「次は王都の限定スイーツを持ってくるからな!覚えとけ」
執事たちはこの二人のやり取りに慣れてきていた。
アルフレッドの馬車が見えなくなってから、エリーゼを乗せた馬車が邸に戻ってきた。
「あら?お兄様どうされました」
「いや、ただの客人の見送りだ。お帰り。いつ帰ってくるかとヒヤヒヤしたよ。」
「ごめんなさい。遅くなったわね。道が悪いらしくて、少し遠回りになったの。」
「さ、着替えて夕飯にしよう。」
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