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番外編①学園では騎士クラスと文官クラスは仲が悪かったよね
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十代男子のプライドなんて、たかが知れている。
大人になってみればなぜあんなに固執していたのだろう、と思う。
アルフレッドは血気盛んな奴が多い騎士クラスにおいて、珍しく無気力な人間だった。
体を動かすのは好きだから騎士になりたいけれど、争いは避けたいしゆるーく適当に生きていたいと思っていた。
あと、モテたい。
ガツガツしないほうがモテると思っていたし、実際モテた。
文官クラスの奴は頭の良さがヒエラルキーに直結する。
トップは神童と呼ばれるエドガーだ。常に冷静沈着、同い年とは思えない。教師も敬語になるほどの頭脳と、知識を既に完成させていた。
アルフレッドは特に勉強しなくてもある程度出来てしまうという要領のいいタイプだった。
騎士クラスと文官クラスの揉め事が起こるとアルフレッドが仲裁に呼ばれることが多い。
それが面倒で、行事の時は目立たないように隠れるようになった。
アルフレッドが16歳の学園祭で、エリーゼと運命の出会いをした。
「エドガーの妹、手がかりはそれだけか」
友人たちに聞いてみると、エドガーという名前の学生は数人いた。
学年が違うかもしれない。
「アルフレッド、来てくれ。またトラブルだ。よりによって向こうは天才をつれてきた」
天才と呼ばれる奴は一人しかいない。
彼も、つまらない仲裁役を喜んでいるようには見えなかったが。
上の空でエリーゼのことを考えていたアルフレッドは、なんとなくエドガーの顔をじっと見つめた。髪の色やどことなく顔が似ている気がする。
「なんだ?」
「いや、これまでじっくり顔を見たりする機会が無かったなと思って」
クラスの連中に囲まれたのでそれきりエドガーとは話せなくなった。
「アルフレッド、文官クラスの奴がまた俺らのことを脳なし筋肉ダルマって馬鹿にするんだ」
暑苦しい。
熱い友情なんてものは苦手だ。
「くだらない争いはやめよう。騎士も文官も王の手足となって国を守るんじゃないか。役割が違うだけだ。
それぞれプライドを持って精進すればいい。お互いを刺激せず、消耗せず向上心を持ち続けよう」
アルフレッドがそう言うと、友人たちがポカンと口を開けた。
「アルフレッド?何か悪いものを食べたのか?」
「いや。でもお前たち、考えてみろよ。こんなところでいがみ合って遺恨が残るとする。
数年後。
いいなと思った女の子や縁談の相手が、そいつらの身内にいるかもしれないじゃないか。
」
は?何いってんのコイツ
という点で、どちらのクラスの人間も心が一つになった瞬間だった。
「想像してみろよ。可愛い妹がいるかもしれない可能性を。仲良くできる気がしないか?」
雷に打たれたようにそれぞれが脳内で再生した。
「そういえば、お兄様みたいな筋肉男より、知的な文官に憧れます!ってうちの妹が」
「うちの姉は、ひ弱な文官の家系より筋肉を眺めるのが趣味で」
見えた、俺たちにも見えたぜアルフレッド。
可能性ってやつが……!
モテに繋がる可能性があるなら歩み寄ろう。
友好的になろうとそれぞれが態度を改めた。
プライドなんて捨てたらいいじゃないか。
モテたいんだもの。
今までにもモテているアルフレッドが清々しいくらい、実利を選ぶことを示したのだ。
「アルフレッド、今まで君のことを誤解していたかもしれない。軽薄でチャラチャラしていると思っていたが皆の心をつかむために良い策略をもっていたとは。こんな方法は僕も思い付かなかった。
今までの非礼を許してほしい。」
エドガーが珍しく表情を崩してアルフレッドに、握手を求めた。
「いや、策略なんて。俺は本心を言っただけで。誰とでも縁続きになる可能性はあるだろ」
「そうだな」
「ところで、今日来ていた家族の中でエトガーという兄を持つ女の子を探しているんだけど、もしかしてエドガーに妹いたりする?」
「妹はいるが、まだ子供だ」
「そうそう、これくらいの背の。髪は黒髪で瞳はエメラルドみたいな。妹いるんだ?こんど家に遊びに行っても」
「断る!!この変態野郎」
エドガーは握手未遂の手をはたき落とし、表情は氷のようだった。
……そこから数年邪魔され続けて、やっと、結婚にこぎつけた。
大人になってみればなぜあんなに固執していたのだろう、と思う。
アルフレッドは血気盛んな奴が多い騎士クラスにおいて、珍しく無気力な人間だった。
体を動かすのは好きだから騎士になりたいけれど、争いは避けたいしゆるーく適当に生きていたいと思っていた。
あと、モテたい。
ガツガツしないほうがモテると思っていたし、実際モテた。
文官クラスの奴は頭の良さがヒエラルキーに直結する。
トップは神童と呼ばれるエドガーだ。常に冷静沈着、同い年とは思えない。教師も敬語になるほどの頭脳と、知識を既に完成させていた。
アルフレッドは特に勉強しなくてもある程度出来てしまうという要領のいいタイプだった。
騎士クラスと文官クラスの揉め事が起こるとアルフレッドが仲裁に呼ばれることが多い。
それが面倒で、行事の時は目立たないように隠れるようになった。
アルフレッドが16歳の学園祭で、エリーゼと運命の出会いをした。
「エドガーの妹、手がかりはそれだけか」
友人たちに聞いてみると、エドガーという名前の学生は数人いた。
学年が違うかもしれない。
「アルフレッド、来てくれ。またトラブルだ。よりによって向こうは天才をつれてきた」
天才と呼ばれる奴は一人しかいない。
彼も、つまらない仲裁役を喜んでいるようには見えなかったが。
上の空でエリーゼのことを考えていたアルフレッドは、なんとなくエドガーの顔をじっと見つめた。髪の色やどことなく顔が似ている気がする。
「なんだ?」
「いや、これまでじっくり顔を見たりする機会が無かったなと思って」
クラスの連中に囲まれたのでそれきりエドガーとは話せなくなった。
「アルフレッド、文官クラスの奴がまた俺らのことを脳なし筋肉ダルマって馬鹿にするんだ」
暑苦しい。
熱い友情なんてものは苦手だ。
「くだらない争いはやめよう。騎士も文官も王の手足となって国を守るんじゃないか。役割が違うだけだ。
それぞれプライドを持って精進すればいい。お互いを刺激せず、消耗せず向上心を持ち続けよう」
アルフレッドがそう言うと、友人たちがポカンと口を開けた。
「アルフレッド?何か悪いものを食べたのか?」
「いや。でもお前たち、考えてみろよ。こんなところでいがみ合って遺恨が残るとする。
数年後。
いいなと思った女の子や縁談の相手が、そいつらの身内にいるかもしれないじゃないか。
」
は?何いってんのコイツ
という点で、どちらのクラスの人間も心が一つになった瞬間だった。
「想像してみろよ。可愛い妹がいるかもしれない可能性を。仲良くできる気がしないか?」
雷に打たれたようにそれぞれが脳内で再生した。
「そういえば、お兄様みたいな筋肉男より、知的な文官に憧れます!ってうちの妹が」
「うちの姉は、ひ弱な文官の家系より筋肉を眺めるのが趣味で」
見えた、俺たちにも見えたぜアルフレッド。
可能性ってやつが……!
モテに繋がる可能性があるなら歩み寄ろう。
友好的になろうとそれぞれが態度を改めた。
プライドなんて捨てたらいいじゃないか。
モテたいんだもの。
今までにもモテているアルフレッドが清々しいくらい、実利を選ぶことを示したのだ。
「アルフレッド、今まで君のことを誤解していたかもしれない。軽薄でチャラチャラしていると思っていたが皆の心をつかむために良い策略をもっていたとは。こんな方法は僕も思い付かなかった。
今までの非礼を許してほしい。」
エドガーが珍しく表情を崩してアルフレッドに、握手を求めた。
「いや、策略なんて。俺は本心を言っただけで。誰とでも縁続きになる可能性はあるだろ」
「そうだな」
「ところで、今日来ていた家族の中でエトガーという兄を持つ女の子を探しているんだけど、もしかしてエドガーに妹いたりする?」
「妹はいるが、まだ子供だ」
「そうそう、これくらいの背の。髪は黒髪で瞳はエメラルドみたいな。妹いるんだ?こんど家に遊びに行っても」
「断る!!この変態野郎」
エドガーは握手未遂の手をはたき落とし、表情は氷のようだった。
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