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これは答え合わせでしょうか【本編完結】

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「起こしちゃった?ごめんね」

目を開けると、アルフレッド様が眉を下げて心配そうに髪を撫でてくれました。

「……わたし……?」

アルフレッド様は素肌にガウン、自分は布団をめくってみれば、裸でした。
何をしていたのか思い出して、
「ごめんなさい、私寝てしまったんですね?なんてこと」

「そんなに時間はたってないよ。湯を持ってきてもらって身体を少し拭いた。
このまま寝かせてあげてもよかったんだけど、夜着を着せたほうがいいのかなと思って、でも少し着せるのが難しいからガウンも持ってきてもらった」

「ありがとうございます、では夜着で」

「うん、俺も今日はもうそっちの方がいいと思う。」

布団の中でごそごそと
着ていると、アルフレッド様がクスクス笑う。
「さっき全部見せてもらったけどね」

「それとこれとは別なんです」

「喉渇いてない?水飲む?」

とても、世話をしてくれるのがなんだかこそばゆい。

「甘やかしすぎです」

「甘やかせたいんだよ」

隣に座って抱きよせられる。肩に頭をもたれさせて、髪を撫でられる。時々額や髪にキスをされる。

「無理させてごめんね。がっついちゃった。可愛すぎ」

「寝てしまってごめんなさい」

「それは、急に疲れさせたから。次はゆっくりできるといいなあ。俺も頑張るよ」

頑張る、とか、次は、とか

そうか、夫婦だものね、これからずっとああいうアル様を見れるのね

「また思い出して赤くなってる」

顔を隠すと、手の甲を舐められた。

ベッドにアルフレッド様がもたれて座って、足の間に私がすっぽり入って彼にもたれる。
後ろから抱き締められて、肩辺りに、顔を埋められている。
「エリーゼ、大好き」

「本当に本当に大好き」

「ずっと好きだった」

耳が甘くて溶けそうです。

正面の壁に飾ってある絵が目に留まりました。

「あの絵……」

身を乗り出すと、後ろから捕まえられました。

「あれ、俺が描いたんだ」

「えっ、」

「エリーゼは忘れてるかもしれないけど、昔会ったことがあるんだ。その時にあの絵を一緒に見たんだけど……」

「覚えてます!」

ものすごい勢いで振り返ったら、アルフレッド様の鼻にぶつかった。
「大丈夫、大丈夫だから。それより、覚えてるって」

「はい、古い図書室で」

「話したことも?全部?」

「全部ではないかもしれませんが、少し意地悪で、とても」

「とても?」

「綺麗なお兄さんだったから、カーテンから出て見たときに、ポーッと見とれてしまって、お話したことは覚えてない、かもしれません。兄以外と年上の男性と話したこともなくて。」

アルフレッド様が赤面していくので、こちらも恥ずかしくなる

「まさか、覚えていてくれてたとは思ってなくて」

「私も、もしかしたらアルフレッド様かもしれないと思って、でも記憶を美化してるのかもしれないと思ったり。」

後ろから強く抱き締められる。
「どうしよう、すごく嬉しい」
「私も」

「名前も教えてくれなかったし」

「そうでしたっけ」

「わざと探されないように、ご両親が名前を言わないように教育しているのかと思った」

「探してたんですか?」

「あんまりカッコ悪いことをエリーゼ本人に言いたくないけど、必死だったよ。
初めて会った時に、もう好きだったと思うけどデビュタントも済んでないような子にいきなり婚約を迫れないし」
 
たしかに、15、6歳になって恋愛をする年頃と11歳では感覚が違っていたのだろう。男女の差もあるかもしれない。
騎士の家となると、また婚約者に求めるものも違うのかもしれない。

「もう絵は描かれていないのですか?」


そう聞くと、ビクッと身体を固まらせたあと、
実は、と教えてくれた。

夜会でエリーゼを見てから、実際に声をかけるまでに描いた絵がある。
自分が描いたのはその一枚だけ。
なぜ一枚だけと強調されるのかと思ったら。

令嬢と花というシリーズに選ばれているそうだ。

私をモデルにした、うつむきかけの横顔と鈴蘭。

それが知り合いの手を通じてポストカードになっているらしい。

「エリーゼが鈴蘭令嬢と呼ばれて人気が出てしまって、本当に焦った。それで他の令嬢も花に例えてシリーズにすればファンが分散すると思って出版社に頼んだんだ。幸いすぐに、画家の卵や女性画家が見つかって、数人で描いているそうだよ。」

知らないことばかりで、なんというか、驚きを通り越して笑ってしまいました。

「アルフレッド様の絵が人気なだけで、私にファンなんてあり得ませんわ」

「俺がどれだけ蹴散らしてきたか知らないから。教える気もないけどね」


アルフレッドは最愛の令嬢を手に入れた。

執着を隠して無事に結婚出来たことを昔からの友人に誉められたり安堵されたりしていた。
二人は仲の良さで有名な夫婦となるが、エドガーのシスコンも隠されることなく有名になった。

【完】



番外編を予定しています
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