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守られていたなんて知りません

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 「まあ、エリーゼがアルフレッド様から逃げられるとは思ってなかったですわ」

仲のいいマリア・ボニーサ伯爵令嬢が紅茶を手に言った。お茶会に招待されたので。といっても二人きりのごく私的なもの。

「そんなに広まっていたのですか」

「アルフレッド様の交遊関係は広いように見えて、実際にお付き合いされている女性はいないって騎士団では知られていたそうですね。
それが、エリーゼ様のことはお付き合いされる前から熱心にお話されていたとか」

マリア様の婚約者もアルフレッド様と同じ騎士団にいらっしゃる。

「皆さま、もっと早くお祝いを申し上げたかったのですがエドガー様が反対されているので、様子を窺っていましたの。抜け駆けはなしで、と私達の間では言ってましたのよ」

「そんなこととは知りませんでした」

「まあ、アルフレッド様につきまとう令嬢もいらっしゃって、そちらはそちらで牽制しあってたようですわね。きっとアルフレッド様はエリーゼ様に直接敵意が向かないようにされていたのかもしれませんわね」

その光景は何度か見たことがある。

アルフレッド様が令嬢に話しかけられて私の側を離れたり、そのあとに別の令嬢に呼ばれたり。

その時は、悲しかったけれど。

離れていても目が合ったり、タイミングよく私のグラスが空いた時に給仕に飲み物を運ばせたり。ずっと気にかけてくれているのはわかっていた。

「最近は裕福な平民層の間で、お泊まり会というものが流行っているそうですわ。」
「お泊まり……ですか?」

「それぞれお気に入りのナイトウェアで寛いでお菓子やハーブティーで夜遅くまでお喋りをして、一緒に眠るんですって。また私たちもしてみません?」

「まあ、楽しそう。夜の庭園を散策したり、バルコニーで星を眺めたり。ロマンチックですわね」

「それに」

マリア様が顔を寄せた。

「侍女のいないところで、恋の話などもできますのよ。婚約者がいても、初恋の話や小説の中の恋は別物ですもの」

確かに、昼間のお茶会ではなかなかそういう話題にはなりません。

「結婚してからはお互いの家を行き来するのも旦那様に遠慮がありますでしょう?式が近づくと忙しいですし。お誘いしたいのはエリーゼ様の他にはセシリア様と、ユミリ様です」

「楽しみですわ」

マリア様との約束で、邸に帰るまで心が弾んでいた。

『結婚したら旦那様に遠慮が』

思い出して、ドキドキした。
実感がないけれど、やはり娘時代の感覚のままではいけないのね。

マリア様はすごいなと思った。
セシリア様は二歳上、来春には式を挙げられる予定。
ユミリ様は一歳上の隣国の公爵令嬢。留学されていた。
婚約者は隣国にいらっしゃる。
お二人にも婚約者との向きあい方を教えていただきたい。



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