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39.無血の王位

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後に、その三日間のことは伝説となった。

王が第二王子のサティ殿下に王位を譲ると宣言した。第一王子のアーノルド殿下は外遊に出て見聞を広めるらしい。

クーデターだと皆がわかっていたが、それにしては穏やかで血も流れていない。

王の健康状態から、もとからサティ王子に禅譲すると決まっていて、アーノルド王子と王の体裁のためにクーデターということにしたのではないか

そんな噂まで流れるほどだった。

サティの隣に立つ令嬢は、貴族派の侯爵家の者だった。アーノルドの元婚約者だ。

彼女を見るときのサティの表情は甘く優しく、新しい王と皇后を皆が祝福した。

貴族は国に貢献して庶民を守るべきだ。
そんなふうにサティは政治を整えていった。

それで上手く治めていけるはずだった。


「アメリア、疲れた」

エデンで働くアメリアのところにフレディがフラフラとやって来て抱きついた。

「フレディ、待って仕事中」

お客もニヤニヤしてる。
「いーよ、アメリアさん。英雄の充電タイムに出くわすなんてラッキーだ」

あの日以来、フレディはアメリアに触れることが多くなった。距離感がバグっている。
魔力を使いすぎるとアメリアに会わないと死ぬと言って王にも認められているらしい。

恋人休憩

いや、婚約者休憩だ。

フレディが国防の面で英雄と呼ばれているので、かなりの無理が通るらしい。 


二人で王宮を散歩することがある。塔を再現してくれた。
見上げて二人で笑う

「ずっと、一人でいたから変な感じがするよ。」

フレディは塔を出て家を借りた。

庭があって、二階から屋根裏を改造してフレディの仕事部屋兼倉庫にしている。

一階はあまり使っていない。

ゲストルームがある。
そこには魔法陣があって、アメリアが泊まりにきた時にエレンが遊びに来たりしている。
「アガット様の王都の屋敷にも魔法陣つけましたよね?」

「あそこにはアガットがいるじゃない」

「そりゃそうでしょう」

「いちいちうるさいんだもの、あの中年」

「確かそんなに年齢変わりませんよね、エレンさん」

「結婚式の打ち合わせに来たのよ」

エレンは楽しそうだ。

「楽しいけど、少し寂しいわ。一つずつ用意をして娘の幸せを祈るのね」

エレンは駆け落ちだった。

ヨークの屋敷にある花嫁支度をアメリアと見て、たくさん泣いたらしい。
そのあと、アガット様とワインを飲み尽くしていたらしい。

「結婚式に出るのも初めてよ」

そう言ってきれいに笑った。

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